杉光家住宅
Sugimitsu



登録有形文化財 (平成10年9月25日登録)
佐賀県藤津郡塩田町馬場下甲728
建築年代/江戸時代末期
用途区分/商家(米穀商/現在は陶器店)
登録範囲/主屋・一の蔵・二の蔵・三の蔵
公開状況/店舗として営業中

重要伝統的建造物群保存地区に選定される藤津郡塩田町内に、国指定文化財の西岡家住宅の並びに所在する。
私が初めて塩田の町を訪れたのは1990年前後のことで、当時は町並も重伝建地区に選定される以前で、ましてや登録文化財制度もなかったため、当地を訪れた専らの理由は国重文の西岡家住宅の存在であった。しかしその当時から当住宅の存在は町並の中でも異彩を放っており、素直にこのような素晴らしい住宅が文化財にも指定されていないのか訝しく思ったものである。
屋敷としては当家のほうが規模は大きいうえに角地に建っているので目立つ場所と云える。主屋は建ちの高い豪壮な外観で、建築年代も江戸末期(文化庁発表・昭和47年度民家緊急調査段階では明治初頭とされている)の建物と推定されており、文化財的な価値も高い。西岡家が国の重文に指定される際に当家が外れたことに関しては所有者の意向も大いに絡み、文化財指定の難しさを感じさせてくれる。
当住宅は、そもそも米穀・肥料等を扱い塩田一の商家と云われた宮崎家により建てられたもので、後に現在の所有者により陶磁器卸商が営まれた。屋敷内には主屋だけでなく多数の蔵も残されており、主屋に隣接する煉瓦造の蔵は明治末から大正初期まで塩田銀行の本店として使用されていたらしい。慶応2年の宿場町の様子を描いた地図中にも当家の所在する場所には、「別当彌右衛門」との記述があり、古くからの分限者が住まいする場所であったことが判る。別当職は恐らく町年寄のような存在であったと思われる。屋敷裏手へ廻ると、以前は運河に面していたらしく、埋め立てられた現在においても往時の風情を充分に感じさせてくれる。


 

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