下村湖人生家
Simomura Kojin


千代田町指定文化財 (平成3年3月30日指定)
佐賀県神崎郡千代田町大字崎村字一本松895-1

下村湖人は云わずと知れた名著「次郎物語」の作者である。多感な時期に遭遇する様々な出来事を通して少年が成長していく過程を綴った優れた物語であるが、個人的な思い出として、親からのクリスマスプレゼントにこの本を送られた私は、流行りの玩具を期待していたあてが外れたことに不満を漏らしながら物語を読み始め、主人公が私と同じく少々できの悪かった次男坊であったがゆえに大いに同情するとともに、終盤に至っては少々身につまされる思いをしながら読み終えた記憶がある。
物語の設定として、次郎の家は村内きっての旧家で屋根の大棟には旧藩主から下賜された鬼瓦が載っているという内容があったと記憶しているが、実際においても相当な豪家であったことは一目瞭然であるし、蓮池藩の藩邸であった「天賜園」の名を記した瓦も発見されている。
建物は町家型の形式を採る明治時代初期のものとされているが、田園地帯に所在する小集落中に突然変異のように現れる建前で、少々違和感を覚える。
当家を訪れる際は、是非とも事前に物語を読んでおくと良い。何かしら感じるところがあるかも知れない。

明治17年生の下村湖人は東京帝国大学を卒業後、教職の道をひたすら歩み、地元の鹿島中学や唐津中学で校長を務めた後、青年団活動に奔走した人物である。「次郎物語」は湖人の自伝的な物語として書かれた。

 

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