桑原家住宅
Kuwahara



 
登録有形文化財 (平成17年8月2日登録)
佐賀県武雄市朝日町甘久1956-2
建築年代/明治15年(1882)
用途区分/商家(呉服商・薬局)
登録範囲/主屋
公開状況/非公開

辰野金吾の設計で有名な武雄温泉から西方約3kmのところに高橋という町がある。江戸期には有明海の干満差による新堀川の水運を利用した湊町だったところで、往時は「市は高橋、荷は牛津」と謳われた程に繁栄を極めた。しかし明治28年の鉄道開通に際し駅が設けられなかったことから次第に廃れ、今ではここに町場があったことすら想像は難しい状況である。当住宅はその高橋の町に稀に残る商家建築である。当初は呉服屋を営み、のちに薬屋を営んだという。旧長崎街道に東面する主屋は大壁造の品の良い建物で、往時の風情を唯一止めている。

江戸期の街道というものは時に自然災害でルートが変更されることも多かったようである。当住宅が所在する高橋集落は長崎街道の宿駅として発展した商業地であったが、その開宿は享保2年(1717)にそれまでのルートが見直されたことによるものであった。その後は殷賑を極めたということであるが、明治28年に旧国鉄の佐世保線が開通した際には駅舎設置を忌避したため、武雄に繁栄を取られていく。徐々に寂れていく様子に危機感を抱き、駅の誘致を図ったが、高橋駅の設置は大正12年の頃で、そのころには時すでに遅しということであった。時代を読み間違えた典型例ということである。

 

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