大村家住宅
Oomura



国指定重要文化財 (平成2年9月11日指定)
愛媛県喜多郡内子町内子甲1551
建築年代/寛政年間(1789-1801)
用途区分/商家(雑貨商・染物商)
指定範囲/主屋・裏座敷・土地
公開状況/非公開

重伝建地区に選定される内子町八日市護国の中心部に所在する商家建築である。派手な鏝絵で装飾された本芳我家住宅の南隣に位置するため白漆喰で軒裏まで塗り込め2階部には虫籠窓をも開く造作ながら地味な印象を受けがちであるが、地区内で最も古い建築年を考慮すれば十二分な造作である。また当家の価値は主屋背後に建ち並ぶ木小屋、裏座敷、藍蔵、窯場といった附属建物群の建築年が全て判明していることにもあり、内子の町が木蝋生産で栄える以前の姿を伝える住宅として貴重である。

内子の町並を歩いていると、木蝋の製造販売で栄え、豪壮な佇まいを今に伝えることで国の文化財に指定されている本芳我家住宅と上芳我家住宅ばかりに興味・関心が注がれがちであるが、民家好きを標榜される方々であれば、もう一軒の国の文化財、大村家住宅のことを忘れてはならない。本住宅は本芳我家住宅の西隣に位置し、間口は僅かに6間で地味な建前の中規模な商家建築ゆえに人目を惹きにくい嫌いがあるが、観光的な価値はともかく、江戸中期の建物として文化財的な価値は十分にある代物である。
先の両家は明治期に建てられた住宅で、それゆえ封建的な制約を受けることなく、資力さえあれば自由な建前が可能であった。鏝絵を多用した艶やかな造作は、この時代ならではのものである。一方、当住宅の建築は江戸中期。藩による建築上の制約が在り、内子の町に木蝋製造の栄華が訪れる前の時代である。江戸期の内子がどのような町であったかを教えてくれる貴重な遺構なのである。


 

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