久門家住宅
Kumon



 
愛媛県指定史跡 (昭和23年10月28日指定)
愛媛県西条市中野甲1743


石鎚山に端を発する加茂川は、瀬戸内海に注ぎ込む直前の平野部に至って大きく蛇行する。そこに形成された舌状の低湿地は肥沃な田園地帯を形成することとなり、江戸期においては藩経済を大いに潤したことであろう。この田園全体を見晴るかすような台地に当住宅は所在する。そもそもは中世城郭の遺構であり、新居宇摩二郡を支配した河野通直が築造したと伝えられる。当然のことながら中世城郭時の建造物は残されてはいないが、石垣や犬走りといった土木構築物が残されており、往時の姿を垣間見ることができる。地元では一般に「土居構」と呼んでいるそうだ。
当家がこの城郭跡に居を構えたのは中野村の庄屋職として移住してきた江戸時代初期のことだそうで、全く庄屋屋敷として相応しい場所に居を構えたといえる。主屋は寛文初期(1660年前後)に建築されたものらしく、かなり古い遺構である。現在は赤トタン屋根で覆われているとはいえ、重厚な風格を感じさせてくれるよい建物である。多少の荒廃が進んでいるように見受けられるが、是非ともこのままの姿をいつまでも留めて欲しいものである。


 

一覧のページに戻る