清水家住宅
Shimizu



 
国指定民俗文化財 (昭和34年5月6日指定)
広島県山県郡北広島町西八幡原字聖山867

広島市の北西部に位置する芸北町は、地元ではスキー場のある町として有名である。温暖なイメージがある山陽地方においても中国山地の奥深くにまで足を伸ばせば、結構雪深いところもあるのである。それゆえ同じ広島県内といえども気候が違えば、民家の建前も変わってくるわけで、芸北町の民家は瀬戸内の民家というよりも北国の民家にどこか形態が似ている。すなわち母屋に対して土間を直角に突き出す中門造りと呼ばれる形態である。
突き出した土間の部分は主に干草置き場や木小屋、厠といった用途に用いられ、冬場には雪深く、外部との接触が絶たれる生活に根ざした建前の変化と考えられる。また外壁を雪の湿気から守るために茅壁で囲むなどの習慣も見られ、まさに北陸や東北地方といった雪国に見られる民家の特徴と一致する。生活の知恵というものが遠く離れた地域にあっても同じような形で現れるということに感心させられる事例である。
ところで当住宅は眼前に広がる樽床ダムの建設により現在地に移築されたという経緯がある。この樽床地区には至るところに同様の中門造りの民家が数多く見られたということだ。しかしダム建設から50年近く経た現在では、そのような記憶は遠い過去のものとなり、山深いこの地域においてもこうした建前の民家は殆ど残されてはいない。




 

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