石井家住宅
Ishii



 
東広島市指定文化財 (平成5年3月19日指定)
広島県東広島市西条町下見1086-1 (移築)

広島市の北東部に所在する西条は兵庫県の灘とともに酒造の町として著名であり、現在も酒造業者の酒蔵が建ち並ぶ。近年では広島大学の移転や工業団地の造成などにより発展著しい地域でもある。当住宅は町の郊外を東西に横断する国道2号バイパスから少し逸れた、県道沿いに造成された不整形な土地の一画にポツンと残されている。しかし、そもそもは旧西国街道沿いの西条四日市の宿に所在していた町家で、平成8年に現在地に移転されたものである。江戸時代には酒造業を営み、以後、旅籠、薬店として利用されたとのことである。建物は妻入り二階建で、屋根瓦が2段に亘って葺き下ろされる錣葺きという独特の手法を採っている。その形状から「兜屋根」とも称されるらしいが、この地方独特のものである。往時の四日市の宿には同様の町家が建ち並んでいたとのことであるが、開発が進んだ現在には全くその面影は無い。建築年代は瓦の箆書より1795年に建てられたことが判っており、時代性を考えれば、かなりの富裕な商家であっただろうことが想像できる。内部の間取りについても、土間が表と裏を結ぶ導線上に展開しているだけでなく、、背面側いっぱいに鍵状に拡がっている点など面白い特徴も見られる。なかなか見所も多い建築なので、近くに所在する国指定の木原家住宅と併せて訪問すると良いでしょう。




 

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