河原家住宅
Kawahara


 
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岡山市指定文化財
岡山県岡山市北区御津紙工2248
建築年代/天保10年(1839)
用途区分/農家(庄屋)
指定範囲/主屋
公開状況/公開

当家の所在する集落は「紙工」と書いて「シトリ」と読む。岡山市から北へ約20kmばかり入った山間部で、宇甘川により河岸段丘状に少しばかり拓けたところの小集落である。地名の由来は定かでない。漢字面からは紙梳職人の居住地かとも想像されるが、地域と仕事が結びつくことの無くなった今の時代には、その片鱗すら残されていない。この集落の最奥の高台に、石垣を築き白壁の練塀を廻らせた豪壮な邸宅が鎮座している。それが当住宅である。まるで集落全体を見晴らすかのように構えられたその様は、津高郡の大庄屋を務めた由緒に相応しい。集落の中心を貫く長い坂道の先には小振りな長屋門が構えられ、その簡素な門の敷居を跨ぎ、一歩邸内に入ると入母屋屋根の式台玄関を構えた重厚な茅葺の主屋が目に飛び込んでくる。均整の取れた美しい建物である。高台に屋敷を構えたことにより敷地を広く取ることができなかったのであろう、前庭はさほど広くはない。主屋の背後には蔵が4棟ほど建ち並んではいるが、小振りな建物で軒を接するように配置され少し窮屈な印象である。しかし一方、主屋の座敷から臨む庭園の様子は、周囲の山々を借景として、とても雄大なである。主屋は天保10年(1839)に建てられたことが棟札より判明しており、簡素ながらも格式を感じさせる造作は江戸後期の豪農住宅の典型的なものである。また主屋の西隣には明治期に建てられた2階建ての座敷棟があり、上階からの眺めは目を洗われるようである。当地に土着して300年の間に醸成された旧家・豪農としての威厳と清雅な雰囲気を我々に深く感じさせてくれる素晴らしい屋敷である。




 

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