井上家住宅
Inoue




国指定重要文化財 (平成14年5月23日指定)
岡山県倉敷市本町1-40

倉敷の町で現在観光の中心となっている運河に面する一帯は、本来荷物の積み出しのための作業現場であった。表の顔は北側の街道筋にあった。
当家は、この街道筋に南面して屋敷を構える商家で、倉敷の町並が形成される初期に町を支配した「古禄」と呼ばれる階層に属する富豪でもあった。倉敷の町並を歩くと、壁が崩れて一際古めかしい様相を呈していた当家であるが、近年、文化財に指定され修復工事により、写真のような姿ではもうないらしい。当家の属した「古禄」という支配層は、江戸中期以降、大原家や大橋家に代表される「新禄」という新進の商人たちに、次第に地位を脅かされ衰微する。当家は現在に至るまで残った稀有な例であるとともに、崩れかけた家の風情が象徴的に何かを物語ってくれていたと感じていたのだが、残念である。



 

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