華泉酒造場

Kasen Brewery



 
登録有形文化財 (平成22年9月10日登録)
島根県鹿足郡津和野町後田字本町ロ221
建築年代/明治中期
用途区分/商家(酒造業)
登録範囲/店舗兼主屋・東の蔵・旧衣装蔵・道具蔵・中の蔵
公開状況/店舗として営業中

津和野町を縦断する本町通に西面して建つ商家建築である。この界隈は大店の商家が建ち並ぶ一画で、当家についても「華泉」の銘柄で酒造を営む間口11間の大店である。創業は享保15年(1730)というからかなりの老舗でもある。通りに接して建つ主屋は明治中期の建築で、その左右に江戸後期築の道具蔵と衣裳蔵を対称的に配置する。また主屋自身の外観も大戸口を中央部に開き、左右対称を意識した意匠となっている。屋敷裏手に酒造関連の土蔵群も残り、屋敷全体が往時の姿を保っている。



ちょうどの家の前で写真を撮っていると外国人の男性と目があった。「英語は理解できるか」と聞いてきたので、「少しだけ」と返事をすると、主屋の両脇にある蔵を指差して「あれは何だ」と問う。外国人に「クラ」と答えても良く解らないだろうから、「倉庫だ」と答えた。詳しく話を聞くと、どうやら窓が少ないので奇異に映ったらしい。「スウェーデンから来た」と云っていたが、「なるほど確かに奇妙な建築だ」と妙に納得させられた。
そこで改めて当住宅を見直すと、主屋の両袖に蔵を設けている例は意外と少ないように思われる。意匠的には対称形になるので、ありがちに思うところであるが、他の津和野の大店を見ても、大概は片袖蔵である。現代の西洋的な建築感覚に侵されている我々は、対称形の建物を当たり前に受け入れ、美しいと思うが、昔の人は意外とそうではなかったのかもしれない。
事実、主屋の入口は必ず左右のどちらかに寄って設けられている。江戸期の建物で対称形の建物は意外と思い浮かばない。



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