◆ 夢 ◆
ずっと夢を見ていた。
昔のことで、いつごろかはもう思い出せないけど、幸せな家庭に生まれて大好きな兄がいて。
私は、何不自由なく育ったと思う。
夢の中の兄はあいかわらず優しくて、大きな手で私の頭を撫でながら『レッティ』と愛しげに何度も呼んでくれた。
兄に髪を触られるのは好きだった。
自分が大切な宝物の様に思えるから。
だからもっと触って欲しいと、兄の膝に乗っかって、寝るまで髪を撫でてもらっていた事もあった。
私は、ひどく甘えん坊なのだ。
兄の手は、いつもよりも冷たかった。
髪を撫でていた指がゆっくりと頬に触れる。
「レッティ。」
優しい呼びかけと、頬へのキス。
…キス?
―――待て。
兄はそんな事まではしない。
唇の感触でレティシアは一気に目が覚めた。
クスクスと笑うランスロットの顔と、私の顔は再び触れ合いそうなくらい近くにあった。
うそだ、とレティシアの真っ白になった脳が叫ぶが、ランスロットだ。
「おはよう。会議が始まる時間だ。」
「………………っっ!???な、な…っ!?」
舌を噛むほどにもつれた私の唇に、ランスロットは再び口付けようと顔を近づけて来た。
「おはようのキス。」
ガン、と頭を殴られたようなショックの最中、ランスロットから無意識に身体を離す。
私の顔は、火を吹くような勢いで真っ赤に染まっているだろう。
何がなんだかわからないまま、私はベッドのふちに追い詰められた。
「何故逃げるんだ?」
「なッ、だッ、ラッ…!!?」
何故って、だってランスロット、何処か変だ!と、私は叫びたかった。
シーツを力一杯握って、それでもランスロットから目が反らせない。
冷たい指先が、私の顎にかかる。
ランスロットの唇と、自分のそれとの距離はすでに数センチ。
心臓が破裂しそうだった。
「ぷ。」
触れる直前で、ランスロットが明らかに笑いを堪えてうつむく。
「え、ラ…」
「キャハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!レッティ、可愛いぃぃ!!」
突然女声で爆笑を始める。
レティシアはまだ動けずにいたが、ランスロットの姿がブレる様にぼやけてグラマラスな肢体に変化した。
「…………………デネブッ!!」
「いやぁん、可愛くってたまんない〜」
笑いの発作に、デネブがうずくまる。
私は、反対に怒りに身体が火照った。
笑い事にするにはあまりにも悪質だった。
「あ、怒るのは筋違いだからネッ!」
「何が…!!」
「だって、アタシが来る前にランス坊やがしてた事だモン。」
「まだ……まだそういう悪質な事を抜かすかァァァァ!!」
私は鎧も着ない軽装で、デネブを追って廊下に飛び出した。
「うっ、嘘じゃないものーッ!やーん、レッティ怖ぁい!!」
「黙れ、この性悪魔女ッ!」
と言いつつ心の何処かでもし本当だったら、と想像する自分がいる。
私の怒りは、デネブを追う途中ランスロットにぶつかるまで続いた。
…でも本当は?
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ランス×♀オピと見せかけて、実はデネブ→♀オピ(笑)
うちの♀オピは、ランスロットから迫られると乙女です。
慣れてないからね(爆笑)。
そして、事の真相はtypeBへどうぞ