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予言者おじさん


「接客業は、歯が命」

私は、保険の効かぬ歯を、差し歯に変える事になった。

あと一つズレていたら、奥歯だったのに

前歯扱いされたために、¥46.000で白い歯を

買わなくてはならなかった。


私は歯の痛みと、差し歯の違和感を覚え、

駐車場に着くと目を疑った。

「違反駐車の為、罰金¥10.000頂きます」と

フロントガラスに付いたその用紙には

連絡先がしっかり書いてあるのだ。

何故?此処は歯医者の駐車場でしょう?

電話をかけ出すと、向こうから50歳の男性が来た。


「あんたか?人の土地に勝手に駐車しやがって!」

怒り爆発の男性に、私は歯の痛みを忘れてしまった。

「勝手に歯医者の駐車場と勘違いされて、いつも

困っているんだ。あんただけじゃないんだが。」


「申し訳ございません」・・私は謝るしかなかった。

そして男性は言う。

「しかし、大衆車に乗っている人が、どこまで常識があるか

私は試したかった。私は
車をみるとだいたいどんな人か

分かるのだ。」


説教される事、一時間。私は罰金のお金が白い歯に変わった為、

ずうずうしく半額でもいいか尋ね、5000円渡した。


すると、男性は言う。

「あんた、結婚するより仕事向き。

上司には生意気にみえるであろう。

仕事中心の結婚なら、うまくいくぞ。

私は
人間観察が好きなのだ。」と言う。

親しみを感じてしまった私は、歯の痛みを忘れた事もあり、

涙目になりながらも、この男性ともっと話がしたくなった。


「外見をみれば、だいたいは分かるのだ。

あんたの結婚適齢期は、30代前半。遅くて30半ばだな。


それを過ぎて結婚したら、ただただ

マイナスな人生になるであろう。

占い師のようにハッキリ言い、5000円返してくれた。



「金は、初めから取る気はない。ただ、


謝ってほしかっただけ
だ」と言う。

私は「・・・授業料として払わせて下さい。」と涙目で訴えた。

授業料ではなく、占いの支払い代ではないか?

しかし、5000円は返金され、今度、一言断ってくれたら

駐車してもいい。と言葉をくださった。そして一言

「言っとくが、ここの歯医者はヤブだ。

持ってもあと2ヶ月だな・・」と言った。



私はお釈迦様にでも会った気分になり、久々にいい人に

会えた事が嬉しかった。後日、お詫びのお菓子でも届けよう。



・・・あれから二ヶ月立ち、私の元に一枚の葉書が届いた。

あの歯医者がつぶれたお知らせだった。

・・・あの男性の予言は、正しかった!

うん?・・・と言う事は・・・・・

私は30半ば過ぎに結婚すると、ただただマイナスな人生

送るのか・・・・
(冷汗)

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