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パラサイトOL物語



白い輪の中に、黄色の円を見つめている。

じゅわじゅわと焦げる卵3個を、フライパンに乗せている。

白咲美華(仮名 22歳)の日課は、仕事から帰ってきた後

明日の朝ごはんを作る。

朝が苦手な美華は、夜に準備をするのである。

「ああ、いつになったら、お母さん帰ってくるのかな」

焦げてきた卵を見ながら、カステラをつまむ。


美華の母の入院が決まって早15日。

父と弟の協力を得ながら、目玉焼きを皿に移す。


OLやっていると、社会に揉まれる!美華の仕事、窓口サポートセンター。

クレーム処理担当。電話の向こうのお客さんに怒鳴られて

さらに職場の人間関係に頭、悩まされて生きていくのなら、

家庭に入って、のんびり過ごしてみるのもいいんじゃない?

社会の「しがらみ」から抜け出せるかもしれない。


美華の周り、第一次結婚ブーム。来月は博美の結婚式に呼ばれてる。

綾香は22歳にして2児のママ。独身仲間は沢山いるけど

最後までツルんで遊ぶのは、悪友の愛美だ。

ああ、なんか、残ってる友人らと騒ぎたいが、時間がないなあ。


仕事しているだけなんて、幸せだ。今の美華には仕事以上に

家事が忙しい。自分の事だけで済まない。

家族の身の回りをお助けするなんて、

いつまで経っても、茶碗が、かたづかない・・・




手術後の母は、元気だった。母に家事の事を話すと

「(T▽T)アハハ!・・で、おかずのレパートリーは10日で一周したの?

家族が多ければ多いほど、負担が出てくるでしょう?

美華、まだいいじゃない。子供いないし。これに

じーさま、ばーさまも同居していたら、こんなもんじゃないわよ!

美華は、お父さんと弟と、あのカラフルな金魚だけでしょう?家にいるの。」

(金魚ではない、熱帯魚ですわ、お母様!!)


結婚している綾香の「忙しい」の意味が分かった。

自分の事だけで、悩んでいれる美華は人生、まだまだ甘い!と思った。

仕事で社会に揉まれているなんて、対して揉まれていないではないか・・

社会なんて、「渡る世間は鬼ばかり」の様な、一生切れない縁ではないのだ。

仕事してる方が、楽だと思った。仕事してる方が、綺麗な自分になれると思った。




今日も、明日に向けて目玉焼きを作る。

でも、明日からは卵が4個になるのです。

食卓が、賑やかになるのです。

先生に「完全復帰」と太鼓判を押されたのです。

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