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スチュワーデス物語


紺色のスーツに黒の帽子。

赤と青のスカーフを首に巻いて「スッチー」になりたい。

ああ、私どうしてスッチーになれなかったんだろう。

英語が話せたら、青い目の彼氏に

「I LOVE YOU, I WANT YOU, I NEED YOU」と

うっとりして身を任せられるのに・・・


OL B子は、英会話に通っている24歳である。

非現実的な世界に生きている、「ぶっとびOL」である。

B子の憧れは、「スッチーの制服」であった。

一度でいい、空港で「スッチー」になり、飛行機をバックに

記念写真を撮ってみたい。


化粧のノリも、まだいいB子は幼馴染の男友達

「C男君」と写真を撮りに出かける。


C男君の趣味は、カメラである。

風景を撮影するのが好きな24歳。なかなかの美男子である。

B子は、「最近、彼と別れて面白い事がないから、

面白い事しましょう。」とメールを入れたらしい。


こうしてB子誘いにより、空港に写真を撮りに出かける。


C男君は、「本物みたいに名札もつけようよ〜」と

画用紙に、名前をゴシック体でレタリング。

どうやらC男君もノリ気らしい。

そして、安全ピンをセロハンテープで止め

B子の左胸に付ける様、渡した。


B子は、黒のタイツと7センチヒールで

全身を鏡に映すと、すっかり気分上昇。


予行練習と言う事で、その格好でB子らは

地元のラーメン屋へ行く。

もう「肝試し」のようである。


黒の帽子が、暖かい。振り返る視線の数。

B子は堂々としている。そんなB子を見る周りの視線を

C男君は観察している。


こんな格好でラーメンをすすっているのだから、

対した根性である。B子の
彼が別れを選んだのは

正しい選択である。



予行練習で自信がついたB子は、いよいよ

「空港」へ向かう。

お腹いっぱい、胸いっぱいのB子を助手席に

C男君は運転しながら、「非現実的な日常」を

どうやら楽しんでいるようである。



空港に到着。

爽やかな青空と、白い建物。行き交う人達に

ニセモノ スッチーのB子は、白い雲の様に浮いている。

大きなトランクを持ち、空港ロビーに入る。

さすが図太い性格。対した根性である。


C男君は警備員を発見!


ああ、B子は職務質問をされないか?



そ知らぬ顔で警備員とすれ違った。



しかし、B子は背中に視線を感じていたのだ。

何とか写真を撮り、スリルを味わった二人は

25歳になる前に、いい思い出が出来た。と

手をとりあったのだ。



後日、スッチーの写真が出来上がった、と

C男君が持ってきてくれた。

背景の中の、見知らぬ老人夫婦が

B子を
指差しているのが1枚あった。

これも何年かたてば、「美しい思い出」の

一つになるのだろう。

手作り名札の文字が、右上がりになっていた事も・・・

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