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晴れた空



好きな人の為に作る料理って、やっぱり楽しいんじゃないかな?

心がこもっている。そんな愛情一杯の料理。作るのも

食べてもらえるのも嬉しい・・・


香奈は、好きだった男性が久しぶりに自分の家を

尋ねてくる事をメールで知る。

晴れた午前の出来事であった。

もう、諦めていた男性であった。香奈は友人が多い。

でも、ふと1人になってしまう自分を感じていて

その隙間を埋めてくれる真二が好きだった。

だけど、そんな自分の気持に身を任せてばかりいれなかった。

気まぐれでくれるメールに、一喜一憂するのも

これが最後。でも、ご飯を作ってあげよう。


得意な料理は、肉じゃが。砂糖と、かつおだしの加減が

真二の口に合う様になったらしい。

レンジでチン♪が得意だった香奈の料理(?)の

成長具合をずっと見守っていてくれた真二。

もう、あの頃の様なトキメキは、ない。

何気ない日常生活。なにも変わらない風景。

いつもの食料品売り場。買い物カゴを手にしただけで

楽しかったあの日々を思い出す。

すると、違った景色に見えてくるから不思議。


もう、この部屋に来ないでね。もう、会わないから。

貴方の居場所は、私じゃないの。

香奈はそう思う。いつも真二の気まぐれに振り回されているのが

嫌なのだ。真二なりの最小限の優しさが我慢出来ないのだ。


肉じゃがを作る。大きなニンジンが香奈をみて笑う。

誰かの為の料理って、あんなに楽しかったのに

鼻が滲みるのも、目が霞んでいるのも、玉ねぎのせいだ。


真二が変わらない笑顔で、部屋に来て暖かい料理を食べる。

「料理、上手くなったね」そう言った。

レンジでチン♪のレトルト食品が懐かしくなったらしい。

いいのだ。真二なんか次の恋の踏み台にしてやる!

真二よ、あんたなんて実験台よ!

だから、早く帰って。そう、真二の居場所は香奈ではない。

真二は、香奈の
姉の元へ、さっさと帰るべきである!


晴れた空。すがすがし日曜日。

次は、どんな和食に挑戦しようか?と

香奈は考え、干した布団を叩くのであった・・・

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