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洗濯物の悲劇


自分の家に留めておいて、世の中にはあまり公にしたくない物。

それは「洗濯物」である。


メイクバッチリ、コテコテ巻髪、ヴィトンのバッグ。そのスタイルに

「ゴミ収集袋」に詰め込んだ、洗濯物を持つ私は

どこかマヌケに見える。

私は今、コインランドリーにいる。


見知らぬ主婦が、洗濯物にアイロンをかけている。

他人の私生活を見ているようだが、ここにいる以上

私の私生活も見られているのだ。

歳を重ねても、出したくない「オーラ」・・・

それは「生活感」である。


私の洗濯物を一つでも置き忘れたくない。

落し物をしても、絶対に名乗りでたくないもの・・・・

それは、「洗濯物」である。


乾燥が済むと、さっさとしまいたい物がある。

それは、ババシャツと、

うさちゃんプリントの毛糸のパンツである。


貧弱は、寒さに弱い。歳を重ねる事に寒さが

骨までしみる。胸がないので特に胸が寒い。

ついでにフトコロも寒い。


冬でもババシャツなし、毛糸のパンツなしの

若いギャルが羨ましい。


金を出しても買えない物・・・・

それは「若さ」である。


私は洗濯物の乾燥が済み、

「ルーズソックス」を手にする。

間違いない。私の物である。


伸びきって足首のところまでズルズルと

おちてきた。そのルーズソックスの中に

もう一枚、靴下が入っている。



そうだ、二重にしたままであった。

伸びきったルーズソックスに包まれた靴下。

これも、なかなか趣(おもむき)があって良かろう。


私は、「ゴミ収集袋」に「見らたくない物」を

さっさとしまった。


そして、そ知らぬ顔で

コテコテ巻髪を揺らし、

コインランドリーを離れたのであった。

メイクバッチリで着飾って行きたくない所・・・・

それは「コインランドリー」である。

それは
「ゴミ収集袋を持った私」である。


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