もう一つのレモン水
お気に入りの、ピンクのセーターに身を包み
ミニスカートの丈を気にしながら、
巻髪が揺れる程、ブーツのヒールを鳴らしながら歩く。
今日は学生時代の友人と会う。
つのる話を胸に秘め、七色に光るステンドグラス前に視線を向ける。
友人は手を振って私の名を呼ぶ。
女二人でウィンドーショッピング。
歩き回るその前に腹ごしらえだ。
シルバーに光る、友人の薬指の理由をとことん聞いてやろう。
私達は地下のレストランに向かう。
「お冷」は、人工的な水の味を隠すためのレモン水だが
カレーのかかったオムライスの美味しさ一つで
私のお気に入りのレストランになったのだ。
私達が店のテーブルに着くと
忙しそうなウェイトレスが「いらっしゃいませ。」
と言い「お冷」を持ってやって来た。
・・・・・私達は目を疑った・・・・・
女二人の私達に、3人分の「お冷」・・・・
向き合っている友人の「お冷」と、
私の席には何故か「二人分のお冷」
私は友人と不思議そうに目を合わせた。
「お決まりになりましたら、お呼び下さいませ。」
ウェイトレスはそう言い、その場を去っていった。
・・・・何か憑いてきたのだろうか・・・・
・・・・私達には見えない何かが・・・・
透明なグラスに入った、もう一つのレモン水は
私達を見て、不気味に微笑んでいるようであった・・・
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