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呪いの部屋


まん丸お月様が、夜空を優しく照らす肌寒い冬。

子供の頃から、いつも私の帰り道を見守って

ついてきてくれた暖かい光。

今日は友達達とカラオケをする。

仕事の後のプライベートは、OLである私の仮面を外し、

自分らしく振舞える、月の光に包まれているような居心地に

身を任す。


そのカラオケ屋は、数年前から利用している。

以前、霊感の強い彼女に警告された
「呪いの部屋」がある。

マニアックな、アニメソングの数の多さに心奪われ

私達は忘れかけていた、その「呪いの部屋」に再び足を踏み込む。

・・・そう。アンビリバボーの様な世界に、足を踏み込んだのであった。



私達は、アニメの懐メロの事で頭が一杯であった。

最近、私の心奪われるアニメソングがある。

それは「ドラボンゴールZ」の
「まんぷくZENKAIパワー」である。


心が満たされていないから、せめて腹だけでも満たされようと

この曲を選択した訳ではない。



1時間も歌ったであろうか。私達は歳のせいか?疲れてきた。

だだ、若い頃と違うのは、この「まったり」した空気に身を任せて

いるのが、妙に心地が良い。

言葉は少なくてもいい。ただ、この「ほろ酔い加減」に今は身を任せたい。



そんな時、この空気を打ち消すように私は声を上げた。

「・・・私ね、以前に「この部屋は避けようっ」て、ある友達に言われたの・・」

不思議がる友人達に、さらに私は言葉を続ける。

「誰かがこの部屋でコックリさんをして、
そのコックリさんが帰らずに、

この部屋に居座ったって言うの!」




私達は、自分達の脳天気さに寒気がさした。

いい歳をとっくに過ぎて、
「天才バカボン」を歌った自分の思考回路を

他人事のように、たった今「お馬鹿」と思った。




友人が悲鳴を上げた!

「ぎゃ〜!見て見て、あああ、あ、あそこに「御札」が張ってある〜!」

・・・・私は、頭が痛くなってきた。ああ、悪霊は、やはり居座っていたのか。


しかし、もう一人の友人が冷静に口を開いた。



「あの御札って、客呼び込みの御札じゃない。」



・・・・本当だ・・・・



・・・・・・・私達は「客呼び込みの御札」と言う存在を

確認した後、脳天気に「おじゃまんが山田君」を歌い、

顔と夜が、更けて(老けて)いくのを肌で感じたのであった・・・・。


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