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ナースルックに憧れて


「白衣の天使」と言ったら「ナース」!

男性はみんな、看護婦さんに弱いのは何故なのだ?

OL A子は思う。ああ、私なんで看護婦さんにならなかったのだろう?

(「ならなかった」ではなく、知能指数が足りないから

「なれなかった」だけの話ではないか?)

他人様の大事な命に関わる仕事は、A子には向くはずがない。

しかし、事務職のA子は
子供の頃から

歌って踊れる、陽気な看護婦さんに憧れていたのであった。

・・・・と、言うより、その衣装に身を包まれてみたい・・・

と、願っていたのだ。乙女心である。



A子は、地元付近にある作業着を販売している店に足を運ぶ。

少し暗めな店には、足袋やら農作業用の帽子が並んでいる。

店内を、指をくわえて見ているA子に「いらっしゃいませ。何を

お探しですか?」と中年女性が声をかけてきた。



「あの〜、ナースルックありますか?」と発言した馬鹿なA子に

「あのっ!何に使うんですか?」と

まるで、天然記念物でもみるかのような視線で、

質問してきた中年女性。

久々に感じる冷ややかな視線に、A子は思わず息を止めてしまった。



どうやらA子はナースに見えないらしい。

(A子の発言の仕方が、マヌケなのだ)

趣味で使うとも言えず、コスプレ大会をする、
とも言えず、

「会社の慰安旅行で、ウケ狙いで使うんです。」と、微笑みながら、

A子の頭でも思いつく最良の返答
を出してみる。



中年女性は、店の奥から大きなカタログを持ってきてくれた。

「これは、先生が着るもので、看護婦は、こっち。」と

先ほどよりも、この中年女性の、気持ちだけの親切さを

A子は隣で、カタログを見ながら感じていた。



どうやらナースルックには、色が3種類あるらしい。

「白、ピンク、水色。何色にしますか?」と聞かれ

迷わず A子は 「ピンクでお願いします^^」と答えた。



ナースルックは特注で、1週間かかるとの事。

商品入荷後に、連絡をもらう事になった。

A子は身元を明かさなくてはならない。

しかも、コメント欄に「使用目的」を、しっかり書かされた。



A子は、「大丈夫だ。私は悪い事はしていない。」と胸を張った。

そうである。ただ、ちょっぴり奇人扱いの視線を向けられただけ

の話なのだ。

でも、A子にとってそんな事はどうでも良いのだ。

どうやら脳天気は、頭に花が咲いてるらしい。




後日、念願のナースルックが入荷したと連絡が入り、

A子は受け取りに足を伸ばした。


¥7900で、帽子は3枚も付いていたらしい。

メインのナースルックは、七部袖で後ろにベルトが付いていたようである。


スカート丈を短くカットし、勘違いのA子は、

白の網タイツで一式揃えてみた。

もう、完全に自己陶酔の世界である。

髪の毛をアップにして、気分はナイチンゲ〜ル。



どうやらウェディングドレスを着た時と、同じ気分だったらしい。

A子の心残りは「本物のナース」に見られなかったことである。

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