BACK

おともだち みきちゃん


から10年前、私が今の会社に入る前の

バイト先は、地元の小さなスーパーのレジである。

そこで会う「みきちゃん」は6歳の小さな女の子であった。

みきちゃんは、いつも私の為に、ジュースの ビンに野花を

摘んで「みかおねえちゃ〜ん」と息を切らして

会いにきてくれた。とても愛らしい顔をした女の子であった。


私が高校を卒業すると就職するので、もう、バイト先で会えない事を

伝えると、みきちゃんは「いやだ」と言い、うつむいた表情を

今でも、しっかり覚えている。


私は春休みに、みきちゃんの家に招待された。みきちゃんのお母さんは

手作りのチーズケーキを焼いてくれた。

レモン味が効いていて、とても美味しかった。

私はみきちゃんが可愛くて、お別れの記念にクレヨンをプレゼントした。

みきちゃんは飛び切りの笑顔で、私の似顔絵を描いてくれた。


あれから10年が過ぎ、みきちゃんは高校1年生。もう、私の事なんて

覚えてないかもしれない。でも、またあの笑顔に会いたい。

きっと、みきちゃんは私の書く「女子高生、愛美とは違うマトモな女子高生

しているに違いない。と願っていた。


そんなある日、私はみきちゃんのお母さんと会う。

「・・・みかおねーちゃん?いつ地元の売り場に帰ってきたんですか?」

18歳の時と変わらない私にすぐ気づいたらしい。

私は懐かしさに10年前に戻ってしまった。

私は、みきちゃんが何処の高校に行ったか尋ねた。すると

みきちゃんは、数年前に他界していた事を知らされた。

私の事は、人事異動で売り場が変わる度に

見かけていて、いつも声をかけたかったらしい。

でも、仕事中の私に迷惑だと思い遠慮していたと言う。


みきちゃんのお母さんは、私がみきちゃんと撮った写真を覚えていた。

プレゼントしたクレヨンでお絵かきした事も、追いかけっこした事も。


私はみきちゃんが、あのまま真っ白い心のまま

女子高生になっていると思っていた。みきちゃんにはもう二度と会えない・・

私は涙が止まらなかった。

みきちゃんが、「チーズケーキ作るの手伝ったよ。

冷蔵庫から牛乳取り出したの」と

元気一杯に私に話してくれた事が、昨日のようだった。



私は、菊の花を用意し、みきちゃんの家を10年振りに訪ねた。

ドアが開くと、みきちゃんが笑顔で

「みかおね〜ちゃ〜ん」と、やってきそうな気がした。

野花をビンに摘めた、みきちゃんは、今でも私の中で永遠の6歳の女の子。

私が、いくら歳を重ねてしまっても・・・




BACK