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BEAUTY CLEAN


「パステルブルー、綺麗な色ですね。」

口紅を引く私に、鏡を通して目があったその人は

お掃除の中年女性。

ここはレディースルーム。

一人のウィンドーショッピングも

気軽でいい。

洒落たそのビルで出会ったお掃除中年女性は

笑顔で私に「お買い物なの?」と話しかける。



これから掃除に取り組む中年女性は

真冬でも半そでだ。

「寒くないんですか?健康的ですね。」

塗り終えた唇を、ティッシュで押さえ私が言った。


「好きな仕事をしているから、暑くなるんです。」と言う。

私はビックリしてしまった。

掃除の仕事って、人の後始末でしょう?

トイレですもの。客の私、そしてその他大勢が避ける、

汚れた個室の後片付けだって沢山・・・・

どんな気分で掃除するのだろう・・・



ビックリする私に「好きなんです。この仕事」と言う。

確かに好きじゃないとやれない仕事だ。

「やればやるほど、効果の出る仕事だから。磨けば磨くほど

綺麗になれる仕事だから。」
と壁を磨き始める。

私は、この女性のような職業意識を持った事がない。

職業意識と言うより、仕事に対するプライドでしょうか?


私は、自分が恥ずかしくなってしまった。

そして、お掃除中年女性を、なんて

心が綺麗な女性なんだろう。と思った。


心が綺麗な女性の周りは、いつでも綺麗なのだ。

パステルブルーの色の綺麗さでは、

お掃除女性の
心の綺麗さには、かなわない・・・


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