8 こうもり編   9 FIELD
 TRIP 10 FIELD TRIP
 
 
2003年7月12日(土)

FIELD TRIP

なんだか遠足に行くようですが、要するに野外授業。

ブリスベンから南東にあるストラドブローク島(人も住んでいる普通の島)

に大学の施設があり、学生はそこで一泊、泊り込みで課題を仕上げるということであった。

FIELD TRIP 第一弾 寄生虫

「魚や貝やエビなどに寄生している虫を探せ」

島に着いた早々、地引網で魚を引き上げる作業を行う。

魚目指して軍艦のようにやってきた巨大なペリカン達が網に囲まれてしまい

人間もペリカンも右往左往するという動物ドラマが妙に感動的であった。


夕食も終わり、さっそく実験室へ行くと顕微鏡がズラリと並んでいる。

私は顕微鏡がかなり好きなのでしばし興奮を覚えた。しかし、

「えー明日帰るまでに最低3つ、寄生虫を見つけるように。」

「なんと!?」

確か寄生虫は小さい。例外を除けばミリかミリ以下のものだったはずだ。

しかも魚をさばいてそこから虫がごろごろでてきたなんて話は聞いたことも

ない。拡大されたさまざまな種類の寄生虫の絵が配られたが、これでは

火星人のほうがよっぽど生き物の形をしているだろう。

奴らは微小であり少数であり火星人以下なのだ。

しばしボーゼンとする私。


目の前には捕獲されたFRESHLY KILLEDの白身魚が口を開けて解剖

されるのを待っている。


わたしは留学生の特権を使う他なかった。

「先生、どうしたらいいのかさっぱりわかりません。」

英語のハンデは時として武器となる。

言葉がわからないのを理由に詳しい説明を貰い受ける。

私はバスの乗車料金をごまかしていたのがバレた時など度々この特権を使

用(乱用)している。


隣の生徒にも助けてもらいながら解剖。

「うまそうやねえ」

この国でも寿司は人気が高いのでそこら中から、SUSHIだのSASHIMIだの

聞こえてくる。なんだか得意になっている自分。

そして得意になっている間に刻々と時間は過ぎていってしまっていた。


「まずい・・・まだひとつも見つけていない・・・。」


すでに顕微鏡を覗き続けて3時間以上は経過していたせいで目もおかしくなり、

見ているものが魚の体内の拡大物なだけに

「魚の胃袋はまるで薔薇星雲のようだ・・・」

と精神状態も異常をきたしてくる。


その時何やらうごめく物体を発見。

「はっ いた!!薔薇星雲にミニ火星人以下が!!」

いそいでピンセットでそれを拾い高倍の顕微鏡で正体を見る。


私は「うっ」と確かに声をだした。

気持ち悪い。表現のしようが無いほど気持ちが悪い。

しかしそれをじっくりと観察した上、明確にスケッチしなければならない。
( Figure 1.)


しばらく魚は食べる気がしなくなった上、目にそれが焼きついて夜も寝付け

なかった。


翌朝、皆すでに疲れ果てている。

「今朝ジョギングにでてマンゴーを見付けたから持って帰ってきたのよ。そし

たら皆して「やめて!!あなたその中に寄生虫がいたらどうするのよ!!」

ってすごく嫌がられたわ・・・。」とクラスメイトも語っていたほど昨晩の皆のシ

ョックがうかがえる。


しかし長い二日目はまだ始まったばかりなのであった。