マサラ日記     previous«  »next

2月8日(火)

 ここのところ、風邪とともに精神状態も悪化。とくにひどかったのは日曜日あたりだったか。音楽を聴く気もせず、料理をする気も起きず、たまっている原稿やらも当然できず。とにかく、すべてがおっくうで困った。思わず「こりゃ、いわゆる男の更年期か? それともうつ?」とも勘ぐったくらい。

 月曜日になって、少しは状況も好転したが、今もまだ心身とも本調子には遠い。ともかく、やらねばならないことが山積みになっている状態。ともかくコツコツやりましょうか、インド人のように。

 飽きっぽく根気のないイメージもあるインドの人々だが、たとえばアートや料理の分野における一流人の突き詰め方とか集中力、持続性には脱帽することがしょっちゅうだし、市中の人たちの一見地味な手仕事などにも、絶え間ない根気や研ぎ澄まされた精進の賜物みたいなものを感じさせられることがあって、ハッとさせられることがある。

 たとえば、私がインドから日本に書籍を小包にして送る際、郵便局から出すのがふつうだ。このとき郵便局には「梱包屋」さんがいて、よくお世話になる。各国通関で中味を見やすくし、しかもきちんと受取人には届くよう、白い布でできたきんちゃくのような袋をその場でステッチして書籍を包み込み、その上から宛名を書いてくれるのだが、その手際に舌を巻くことがしょっちゅうだ。

 また、日本だと「傘」というのは消耗品、あるいはへたをすると「使い捨て」的な感覚で使いがちだが、インドだと傘は大事に扱われるものであり、傘屋さんもいて、ちょっと傷んだ傘をじょうずに修理してくれる。この傘屋さんの手つきの器用さも特筆もので、見ていてホウッと唸ったりする。

 年季の入ったいい仕事に出会うとこちらもうれしくなるものだが、こと東京ではそういう機会にお目にかかるチャンスがずいぶん減った。イージーなやっつけ仕事ばかりが目につくのは、心さびしいものだ。

 最近、私が今いちノレないことの一因も、周囲にイージーな連中が多いからである。自分だけでもまじめにやろう。