ちょいと前のことだけど、現代版たぬき囃子ともいえる現象に遭遇したのでそのことをぐだぐだと書いてみるのです。
と、その前にたぬき囃子について一応説明しておきましょう。
たぬき囃子というのは江戸時代から多くの報告がある、わりと知られているらしい怪異現象です。夜中に遠くの方から祭りの囃子のような音が聞こえてきて、その方向に行ってみると今度は別の方向から音が聞こえてくるというもので、
たぬきが人を化かしているんだろうということでたぬき囃子と呼ばれるわけです。
「しょ しょ しょぅじょぅじ しょぅじょぅじの 庭は」で有名な”証城寺の狸囃子”はたぬき囃子の歌なのです。
で、おいらの体験は、その夜、自転車で家に帰る途中にどこぞかで野外ライブでもやっているらしい音が聞こえてきたわけです。 1kmほど先から聞こえてくるみたいで、「近所迷惑だな、この分だと近くを通るな」と思いながら走り続けていると、いつの間にやら音が聞こえてくる方向が斜め後方になっていて、しかも前より音源が遠ざかっているようなのです。しかも、その方角には野外ライブなんぞ出来る場所はないはずだし、仮にあったとしても、住宅地で夜中に野外ライブなんて許可が下りるとも思えない。で、そのころになって「ほほう、これがかのたぬき囃子と呼ばれるものかいな」と考え至ったわけです。
幽霊なんかの心霊現象を全く信じないおいらが遭遇するくらいだから、こういう体験をした人はけっこう多いんじゃないのかな。
このたぬき囃子、妖怪や幽霊が跋扈した江戸時代のみならず、昭和に入っても似たような事例がいくつも報告されているようです。 羽田空港で飛行機がエンジンを吹かす音が杉並区で聞こえるとか、高速道路の付近で「ドンドンドン」という音が毎晩鳴り響くとか、いろいろとあるようですな。
何でこんなことを書くかっちゅうと、実家に帰る新幹線の中で読んだ荒俣宏「日本妖怪巡礼団」(集英社)にたぬき囃子の話が出てきて、ふと思い出したからなんでした。
なぜこういう音が聞こえるのか。特殊な気象条件が重なって起きる物理現象、というくらいはわかるけれど、どういうメカニズムでこの現象が発生するのか、どっかの物理学者が研究してないのかな。
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