君はあの青空をみたか−野球よ永遠なれ

ペルーの野球

BASEBALL UNDER THE SKY OF PERU


11/1(金)19:302(土)14:30/18:303(日)14:30/18:304(祝)12:30/16:30新宿シアターブラッツ

YOKOHAMA KID BROTHERS

 

善太が暗闇から突如現れる。
ワークショップ当時から観客がびっくりする「ペルー」のオープニングだ。
善太の長セリフの中に「石焼き芋パン」は出てこなかったが、待ちに待った「ペルーの野球」が今再演されているのだと改めて確信する。
太郎が現れる。コメヤーズと野球の試合をすることに決まって、「いつか青空の下で」の全体コーラスが起こる。
タローズがコメヤーズと約束したのは、タローズが勝ったらペルー行きの飛行機代を出してもらうこと、タローズが負けたら「ペルーへ行く」夢を捨てること、というもの。
この設定はもちろん昭和57年当時と同じもので、違和感も全くない。現代としては、「賭けるもの」として地味なのかもしれないが、そこがいいのだ。
ここで当時は、金を貯めてばかりで遊ばないほうがおかしいという「北京のギャング」が歌われるのだが、このシーンはカット。
その代わりに、本来のオープニング曲である「9(ナイン)」が流れる。

♪ 言ってみれば人生なんてね 生きてる意味など何にもないんだ
だからといってただブラブラ暮らせるほどには甘くはないんだ
諦めるにはまだ早いかもしれないんで 9で何かを始めるか


オープニングから、この重い歌詞。しかし、だからこそ草野球をする重要性が、後になって引き立てられる。
KIDのパターンとして、序盤に若者たちが登場し、ツッパリ風の歌や金に関する歌が歌われる。「ペルーの野球」も、KIDの基本スタイルを確実に貫いている作品であるといえよう。
さて、太郎とその妻サチの食卓のシーン。

サチがフォークを渡すと、「フォークというのはバッターの手元で落ちて・・・」
サチがエビフライ好き?と聞くと、「フライというのは結構難しくて・・・」
サチがサラダボウルとってと頼むと、「ボール?」
サチがボウルじゃなくて器よと言い直すと、「打つわよ」
見事に再現されている。それにしても、このシーン、東さんがよく語呂合わせできたものだ。
さて、太郎がなぜ野球に熱中するのか理解できないサチに、善太の恋人の結が言う。
「なぜ男たちが野球に熱中するかっていえば、ほかに闘う場所がないからよ。この時代で男たちが自分を賭けて戦うものがあるとすれば、仕事。ビジネスだけなのよ。
でも、ビジネスに賭けることができない男たちは野球に熱中するしかないんだわ」
つまり、仕事の正反対の立場に太郎がいる。しかし太郎は夢に向かって戦っている。
サチはその毎日の中で、食事を作って待っているしかない。サチのソロ「キッチンの窓」が歌われる。
しんみりしたいい曲。当時は女性4人コーラスだった。
夢を追う太郎のもう一つの問題は、貧困だ。貧乏が原因で9人にいたらないタローズ。このままでは試合ができない。
そこへ竜夫が現れる。
ワークショップのときは古城さんが演じていたカッコイイ男。
キザな竜夫とケンカをしたあと、四番を打っていたことがあると聞いた太郎、急に寝返り優しい声で竜夫をもてなす。恭兵さんのコミカルなシーンを伸さんが見事に演じる。
太郎の家に泊まらせ、すっかりタローズの一員となった竜夫。善太と3人で「年の値段」を歌う。

♪ できるなら今すぐに子供にかえりたい そのためなら思い出も恋人も捨てよう

青春時代を羨む3人の歌。まさに青春時代この「ペルー」を観ていた自分も、昔が羨ましくなり、少しジーンと来る。
タローズとコメヤーズの試合のシーンに変わる。当時コメヤーズのメンバーが観客席に向かって米を投げていたが、それはカット。
その代わり、ここでメンバーの足りないタローズが観客席に目を向ける。そう、舞台にお客さんを何人か連れ出して野球を進める!
「十二月の夢」や「ハメールン」でのハンド・イン・ハンドを思い起こさせる。今現在でも、昔の東さんのスタイルが甦っているようだ。
竜夫のホームランで逆転し、最終回、コメヤーズの攻撃を、
ピッチャーゴロ(太郎が取る)、ショートゴロ(太郎が取る)、センターフライ(太郎が取る)
という恭兵さんのギャグがあるのだが、このシーンはカットだった。
タローズの勝利でゲームセットとなり、「いつか青空の下で」のコーラスだ。

暗転し、サチと竜夫の会話。試合には勝ったが、
「あいつはいい奴だが、酒はともかく人生に酔っぱらいすぎる。他人がそれで幸せになると思い込んでいる。本当は傷つけていることに気が付かないんだ」
と竜夫は太郎を批判する。サチは、
「貧しくって、ドジで、陽気で、寂しがり屋で。みんな太郎を愛してるのよ」
と分析する。そしてサチもそんな太郎を好きになった。
「トライアングル」が流れる。前半のクライマックスだ。

♪ 一人で暮らせば淋しさという文字を心に風が吹き込む ごくごくそれが当たり前のようにあなたと暮らしていた(サチ)
人の幸せはただ変わらない日々をこらえることか 目を閉じて浮かぶ夢に光を当てればそれは壊れるものか(太郎)
気を付けなかわいい人よ もともと愛は勘違い ごくごくそれが当たり前のようにさよならする日が来る(竜夫)
新しい夢に今から 飛び出していける力が残っているか今でも かすかな愛の名残捨てて

竜夫の出現により、現在の生活に疑問を感じ始めるサチ。安定した何も変わらない毎日がはたして幸せなのかという太郎。
そして、サチの立場に立って幸せを願っている現実家の竜夫。
3人が3人とも、新しい夢に行動できるだろうか。勇気をも必要とするこの葛藤の歌に、ジーンと心を打たれる。大好きな歌だ。
サチを抱きしめる竜夫。本当は竜夫は、サチの父親の会社の人間で、サチを連れ戻すためにやってきた。
しかし、たわいもない夢を追いかけている男を許せなくなったという。
太郎との別れを決断するサチ。誰もいなくなった家に帰ってくる太郎。酔っぱらっている。前半幕前の名ゼリフだ。
「おおい、サチ。俺が世界で一番大好きなサチ。帰ったぞ。ゴメン、俺が悪かった。だけど人間には一つぐらい欠点というものがあるんだってことを分かってくれ。
なあサチ、人は強さによって結びつくんじゃないんだ。お互いの弱さ、悩みや苦しみで結び合うんだ。さあ、ドアを開けてくれ、俺が世界で一番大好きなサチ!」

前半終了。
私はこのセリフが「ペルーの野球」の主題だと思っている。
仕事場の人間関係でも、趣味仲間でも、自分の正論を通そうとして、決して自分の弱点を見せず、高いレベルになったつもりの人がいる。
そして仲間の弱点はとことん突いていく。
そういう人達に警鐘を促す太郎のこのセリフこそ、現代社会に忘れがちな人間関係の結び付きの原点。
しかし、太郎のような考えを、生ぬるい、甘くない、成長しないと思う人もいるだろう。
そこをどう捉えるか。東さんの脚本はいつもこういう切実な問題につながる。
そういえば、ワークショップで売られていたペルーTシャツは、この大事な長ゼリフがプリントされていたなあ、と思い出す(今も大切に保管しています)。後半が始まる。


夜。サチが出て行って寂しそうにしている太郎に善太が声を掛ける。

ペルーに行こうと思っているのは俺とお前だけか、と嘆く太郎に善太が言う。
「そんなことはないさ。太郎が円を描く。その円を太郎がここがペルーだって言えば、そこはペルーなんだ。
少なくともこの町の9人は円の中に入ってくる。ぼくは善太だ。ぼくは頭が悪いからペルーがどこか知らない。
サチも町の人たちもなんだ。だから太郎が、ここがペルーだって教えてあげればいいんだ」
そして、夜空を見上げて、「太郎、ペルーはあの星よりも遠いか」と聞く。ロマンチックなシーンだ。
善太は、「ポアロ」のときと同じように、知的発達の遅れた少年役を、当時飯山さんが見事に演じた。
このシーンは、その善太の純朴な気持ちが、太郎の心に染み透ったようで微笑ましい。
太郎のような人間は、弱さの象徴であるような善太の意見をも素直に受け入れることができる。ここに感動する。
一方、同じく独り身のサチの元に、竜夫が現れる。
一生に一度ぐらい人生に酔っぱらったってかまうものかとサチに告白する竜夫。
しかし食卓に二人分の食事が出ていることに気付く。サチは毎日太郎の分まで食事を作っていたようだ・・・
ボストンバッグを提げ、町を出て行こうとする太郎。町の人達が引き止める。
しかし淋しさ、むなしさでいっぱいとなった太郎は叫ぶ。
「俺はもうお前達と付き合うのは飽き飽きしてるんだ。俺がどんなに野球のメンバーを集めようとしても、たった9人が揃わない日が何日あったか覚えているか。
俺は大嫌いなんだ、お前達が。つまらない愚痴や馬鹿馬鹿しい噂話、みじめったらしく自分の弱さを平気でさらし、何もできない上に何もしようとはしない!」
信じていた仲間達も、きっと夢を追っかけられない現実家で、形だけの引き止めなのだろう。そう感じた太郎の、絶望的な叱咤だった。
しかしそこへ、グローブやバット、溢れるほどの野球道具を持った善太が現れる。
「太郎、どこに試合に行くんだ?みんなどうしてバットやグローブを持って行かないんだ。ぼくに全部持たせるのはずるいぞ」
ただひたすらに野球をしようとする善太に、激情していた太郎がバッグを投げ出し、「負けたよ」とつぶやく。
ここで、昔、KIDで東さんが叶えられなかった長渕剛さんの楽曲「Hold your last chance」が使われた。か弱いタローズの面々が太郎と抱き合う。

やがて、竜夫が太郎の前に現れる。
話をする前に、どうしてペルーに行きたいのか太郎に問いただす竜夫。太郎は説明する。長ゼリフだ。
小学校のとき転校した太郎は、クラスのガキ大将とケンカして勝ち、その子の持っていた権利をすべて奪ったという。
とくにその子が中心だったクラスの野球チームをそのままかっさらい、その子はチームから外れてしまった。
太郎が試合をして遊んでいるときは、その子は一人で壁に向かってキャッチボールをしていた。
なぜそのときにたった一言声を掛けてあげなかったのか。
あるとき試合をして遊んでいると、その子が涙ぐみながら試合を見ている姿が目に入った。
翌日、その子はペルーに転校していくことに。そのとき太郎は、何か途方もない失敗、一生取り返しがつかないことをしてしまったと怖くなったという。
先生に手を引かれて教室を出ていくその子の後ろ姿に、廊下で太郎は叫んだ。「おい、ペルーで野球をやろうぜ!」
そしたらその子は、振り返って、ニヤリと笑って歩いて行った・・・
「だから俺はペルーに行って野球をしなければならない。もしあいつに会えなくても俺はやらなければならない。たとえサチが俺の夢を嫌って二度と帰ってこないとしても」
と付け加える。竜夫は、その話を聞いて、決心したように、太郎に本当のことを話す。
「サチはそんな理由でお前から離れて行ったんじゃない。俺が寝たからだ。サチだって寂しかったんだ」
竜夫を殴り倒す太郎。起き上がった竜夫が、最後に「太郎、ペルーへ行くのか?」と聞く。太郎は言う。
「行かない。ここがペルーなんだ。この町がペルーだってことにやっと気が付いたよ。俺は今お前を殺したいほど憎んでいる。サチもだ。
だけど、この町には哀しみに顔を歪ませたサチがいるだろう。そしたら俺は、笑ってあげるつもりだ。あの男の子が笑って許して廊下の角を曲がっていったように」
そして太郎はサチと再会する。もう何もかも知っているよと言う太郎に対して、だったら別れの言葉はいらないわねと、やはりさよならを告げるサチ。

しかし太郎は続ける。
「前にも言ったろう。長い人生の間には、人は誰でも一度や二度の失敗はあるんだって。ぼくは何とも思っちゃいない。
大事なのは、ぼくがサチを必要としてるってことなんだ」
まだ、取り返しがつかない間違いをしたと思っているサチに、過去に取り返しのつかない間違いをした太郎が言う。
「お互いもう十分傷ついたぜ。ぼくは9人の友達がほしかったんだ。ぼくには本当に友達と呼べる人間が何人いるだろうかって」
太郎の心の原点が寂しさ(孤独)だったと見えた気がしたサチ。
「みんなで野球をやろう。生きている間にはいろんなことが起こるんだ。まるで少年達の原っぱでの野球のように」
という最後のセリフと同時に、コーラス曲「ペルーの野球」が流れる。

♪ 明日のための稼ぎがどうだとか 気に喰わないことがどうにも多いとか
妬みや愚痴やつまらぬイザコザや 乗り遅れた満員電車も忘れ去れ
心に溜まったゴミを吐き出して 体中青空を染め込んで
今はただひたすらにベースボール



眩しいほどの照明。エンディング曲を聞いて、また感動が込み上げてくる。それは、今の自分がいかに小さい人間かという反省もあるし、
あるいは、もう昔には戻れないという哀しみもある。しかし、これからの現実生活に生かしたいという希望もある。
前にも書いたが、「ペルーの野球」は、KIDの基本スタイルを踏襲し、東さんのメッセージ性も分かりやすく反映された素晴らしい作品だと思う。
金か楽しさか
現実生活か夢か
愛か夢か
強さで結び付くか弱さで結び付くか
何もしないか何かするか
愛か約束か
間違いを許すか許さないか
「失なわれた藍の色」「街のメロス」「哀しみのキッチン」に続く「街シリーズの決定版」というちらしの言葉があるが、
まさに様々な葛藤が凝縮されている作品の一つと言って過言ではない。
正解はない。しかしその葛藤のキーワードとなるのが、東さんの他の作品群でも頻繁に出てくる「孤独」だ。
今回はカットされてしまったが、ペルーのダブルエンディング曲の一つである「誰でもいいから」の歌詞に、最後に現れる。

♪ わけもなく気も狂うほどの孤独に苛まれるとき 何もかもこれまでのことが無意味に思えてくるとき
誰でもいいから 誰でもいいから ただそばにいてほしい それが君であればと
岩ほどの覚悟を決めて それでもくじけそうなとき 今すぐに泣き出しそうな弱虫許されたいとき
誰でもいいから 誰でもいいから ただそばにいてほしい それが君であればと

東さんのメッセージ性を今回も「ペルーの野球」に乗せて忠実に再現し、今の生活に合った感動と力をくれた「北川伸in横浜KID」の「本気」に感謝します。
そして、KIDの再現化は、伸さんに期待する他はないことを改めて確認しました。
それは、行動力もさることながら、KIDのファン・関係者・役者の年齢を鑑みると、もう再現の時間がないからです。
無理に再現する必要性?という問いに対しては、必要と答えるしかありません。なぜなら、東さんのメッセージ性は、結局、東さんの作品以外では伝わらないからです。
そして、そのメッセージ性(葛藤や感動から来る力)は、現在でも通用し、現代こそ必要だと思います。
他作品では伝わらない東さんの作品を、音楽・BGM・照明・外観まで当時と同じにこだわって再現しているのが北川伸in横浜KIDです。
外観だけでなく重要なのが、葛藤する主人公を演じる恭兵さんの役回りです。
観客は、恭兵さんから葛藤を投影して観るわけですから、東さんの作品には恭兵さんが必要だったわけです。
逆に言うと、私が他演劇作品で感動できない理由はそこです。葛藤に苦悩し、観客に同情させるほどの恭兵さん役がいないと成り立ちません。
これは東さんが作り上げたKIDのパターンです。このパターンしかないのです。そしてそのパターンの演出と恭兵さん役を演じるのが北川伸です。
ペルーのちらしにも恭兵さんから直々のコメントがありましたが、東さんの感動を手に入れるには、伸さん、あなたに期待するしかありません!

(了)









とある街の小さな塗装工場で働く男は、こよなく野球を愛し、ペルーに遠征し、青空の下の高原で野球をすることを夢見ていた。
彼の妻は、自分よりもペルーへ遠征することに魅かれている夫に不安を抱きながら日々を過ごしていた。
単調な生活が続く毎日。そんな中突然、二人の間に一人の男が現れる。
夢だけを追う男にホームランはあるか。
愛を願う女にヒットエンドランは。
そして二人の中に突然現れた男にホームスチールは。
何気ない小さな街で繰り広げられる愛の物語。
あなたはそこまで夢中になれる夢はありますか。あなたにはそこまで愛せる誰かがいますか。
いつか青空の下でまた会って、思い切り野球やらないか・・・
汗と泥と涙と愛を混ぜ合わせて・・・
Baseball under the sky of peru
Baseball under the sky of peru



cast
北川 伸
桜 めい
登美 大地
仲田 博喜
荒川 結奈
遠谷比芽子




staff
原作 東由多加
脚本・演出 北川 伸
音楽 小椋 佳 太田シノブ AKO SIN
音楽指導 AKO
振付 SH,Kit
照明 宮崎正康
音響 松丸恵美
プロデュース 清水圭介 飯原正巳
後援 巻上公一 入江省三 (株)ヤングジャパン



予想される曲目
1.9(ナイン)
2.北京のギャング
3.キッチンの窓
4.ただ暖め合うために
5.年の値段
6.いつか青空の下で
7.トライアングル
8.やれるもんならやってみな
9.たったひとりのベースボール
10.少女
11.ドラマに向けて
12.ペルーの野球
13.誰でもいいから

YOKOHAMA KID BROTHERS


  

 
 
  ペルーの野球

「ペルーの野球」は、1982年、「WORK SHOP OPENING SHOW」として上演され、翌年の「ぴあテン」の上位にランクインしました。
WORK SHOPを皮切りに、THEATRE APPLEなど全国ツアーを実施し、のべ6万人を動員した人気作です。
WORK SHOPは、THEATRE365以来のKIDの稽古場兼劇場として原宿竹下口の目の前に構えられ、「エンジェル」以来の支持会員制も導入されました。
WORKSHOPの支持会員になったファンは、一年間に3回観られるなどの特典が付与され、その強みもあって「ペルー」は、複数回観ているファンが多いと聞きます。
1985年には、柴田恭兵さん不在の中、PARCOpart3で再演されました。
ですから今回の横浜KIDの上演は、WORKSHOPの本演から25年ぶり、ということになります。
横浜キッドブラザースもWORKSHOPとは縁があり、1987年に「哀しみのキッチン」を上演した経緯があります。
しかしこの「ペルーの野球」は、横浜KIDは当時公演しておらず、今回が初めての上演となります。
「ペルーの野球」は、残念なことに当時レコード化されず、それはつまり、今回の公演は、その曲群を聴けるという大きな価値を持っています。
小椋佳さんによるこの曲群は、一般レビューされている「誰でもいいから」を筆頭に、柴田さんが好きだった「いつか青空の下で」、
メッセージ性のある表題曲「ペルーの野球」「ドラマに向けて」、中盤の葛藤曲「トライアングル」など、KIDファンには欠かせない名曲ばかりです。
また「ペルー」は、東作品の根源を為す『「愛」と「夢」の葛藤』の具現化がいちばん分かりやすい作品と、KIDの当時のスタッフからも言われています。
KIDファンから見た「ペルー」も、ENDLESS KID.の「KID好きな芝居アンケート」(2001〜4年;回答数200名)で、「キッチン」「シンガポール」に次ぐ第3位となった人気のある作品です。
  とある街のペンキ屋に勤めている男は、こよなく野球を愛し、ペルーに遠征し、青空の下の高原で野球をすることを夢見ていた。
  彼の妻は、自分よりもペルーへ遠征することに魅かれている男に不安を抱いていた。
  その二人の間に隣町から一人の男がやってくる。
  そして三人の−愛のトライアングル!
  夢だけを追う男にホームランはあるか?
  愛を願う女にヒットエンドランは?
  そして二人の仲を裂こうとする男にホームスチールは?
  小さな街で愛のゲームが白熱する。
  「失なわれた藍の色」「街のメロス」「哀しみのキッチン」に続く街シリーズの決定版(当時のちらしより抜粋)
「愛」か「夢」かの葛藤と、レコード化されなかったせつない音楽。そして、人と人との結びつきとは・・・
東京キッドブラザースのテーマが詰まったこの作品を・・・ぜひ懐かしんでください。

文責 イリちゃん(ENDLESS KIDBROS.)

 

横浜キッドブラザース
ENDLESS KIDBROS.

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