朝食料金はツアー代の中に含まれていたが、11時までの朝食時間はとうに過ぎており、もったいないことしたなぁと考えながら、さすがに疲れが出てきたのか、またもウトリウトリしてしまう。
再び目が覚めた時には12時半をまわっていた。その時、夕べ洗濯したシャツが乾いていない(部屋も浴室も、日本のホテルのように乾燥していなかった)のに気付き、慌ててドライヤーで乾かしたり、デザートサファリから帰ったらすぐ空港に出発することを考えて荷物のパッキングを行ったりしていると、あっという間に15時をまわった。
そろそろだろうと、準備をしてレセプションに降りる。サファリの迎えはここで待っていたらいいのかレセプションに確認し、そうだと言われてロビーのソファに座って待つ。 15:30過ぎ、真っ白いディスタージャを着たアラブ人男性ドライバーさんがホテルの外から迎えに来る。その人について、ホテルの前に停めてある4WDに乗り込む。
すでに別のホテルからやって来た先客がいて、挨拶して1番後ろの座席に座る。(後で話しているうちにわかるが、ドイツ人のカップルと、10代前半くらいの息子とその母、それに母親の姉妹?らしい女性のフランス人家族達とご一緒になった。ドイツ人カップルの女性はモナさんと言って1番よく話をしたが、新婚旅行らしく旦那さんとアツアツだった)
外に出ると太陽がだいぶ西へと傾いてきて、思ったほど眩しくも暑くもない。ドバイの1月は、1年の中で1番最高気温が低く、過ごしやすい季節なのだ。半袖Tシャツの上に薄手の長袖パーカーを着込んできたが、それで丁度か少し暑いくらいだった。
高層ビルの立ち並ぶ街を走り抜け、15分くらいすると道の両側に砂漠が広がってきた。
道沿いにはポツリポツリとアラビアンナイトの物語に出てきそうな白や砂漠色の石造りの家が建っている。しかし、そのすぐ側は砂漠なのだ。砂漠のど真ん中を、整備が行き届いたハイウェイがひたすら真っ直ぐ伸びている。
ホテルを出て1時間弱走ったところで、車は右に折れ、砂漠の中に入っていった。
周りには同じような4WDの車が何台も停まっており、周りの砂丘ではサンドボードを楽しむ人や4輪バギーをかっ飛ばしている人達が大勢いた。
ここで一旦車から降ろされ、ドライバーさんがこれから始まる砂漠ドライブのために、車のタイヤの空気を抜いて柔らかくする。
ところどころ、わずかに背丈の低い木や草の緑はあるが、辺り一面砂漠である。砂はわずかに黄色がかった色で、おりしも西に大きく傾いてきた太陽の光を浴びて茜色に染まっていた。
タイヤ調整が終わると、いよいよ砂漠ドライブに出発だ。車はどんどんハイウェイから離れ、砂漠の奥深くへと進んでいく。
周りには大小さまざまの砂丘が出来ており、砂丘を登ったり降りたりしながら進む。砂丘の高さは大きいものだと5〜6階建てのビルくらいはあるだろうか。しかも、砂丘の形も様々で、なだらかなスロープを描くものもあれば、絶壁のような急斜面のものもある。
ドライバーさんたちは私達を楽しませるべく、わざとその急斜面を車で一気に下ったり、砂丘の斜面に沿って斜めに傾いた状態で走ったりする。まるでジェットコースターのようだ。砂丘の頂点から下り始める瞬間はフワリと体が宙に浮く感じで、ジェットコースターで駆け下りるのと同じ感覚だった。そして、車の中は陽気なアラビアンポップスのテープがかけられ、ドライバーのお兄ちゃんは時々手放し運転でノリノリに手拍子をとっている。(爆)
みんな、必死に車の座席にしがみつき、キャーキャー悲鳴を上げている中で、私1人冷静だった。ドライバーのお兄ちゃんは「凄いだろう〜」と自慢気に言うが、マサイマラのあの悪路に比べたら乗り心地も良く、面白かった。(ジェットコースター大好きなので、この程度じゃ驚きませ〜ん・笑)
しばらく、あちこちをグルグルと走った後、ある砂丘の上で車が停まる。ここで車から降りて、しばし砂漠の向こうに沈んでいく夕陽を眺めて過ごす。他にも何台か車がいた。
太陽は熱せられた鉄のように赤黄色に染まっているが、光自体は弱まって直視しても眩しくない。周りの雲も赤紫に染めながら、ゆっくりと沈んでいく太陽を見守る。
足元の砂は非常に細かな粒子で、手ですくうとサラサラとこぼれ落ちて行く。柔らかい砂の上を歩くと、足は沈み、靴の中に砂が入ってきた。すでに靴を脱いで裸足で歩く人もいる。
その時、1人のアラブ人男性が近づいてきて、日本語で「あなた日本人ですか?」と話し掛けてきた。まさか、こんな砂漠のど真ん中で比較的流暢な日本語を喋る現地人に会うとは思ってもいなかったので、驚いて思わず、「Yes,IamJapanese」と答えてしまった。そしたら、彼はまた日本語で「アナタおかしい。私は日本語で喋ってるのに、どうして英語で答える?」と突っ込まれた。(笑)
彼はアリさんという、ドバイ在住の30代後半の男性で、1996年ごろから約5年間、日本に住んで働いたことがあるとのこと。千葉と相模湖近くに住んでいたそうで、日本のことも詳しく、「日本は不況で大変だね。小泉さんになってどうなの?」と言っていた。
再び車に乗り込み、砂丘の山を越えて走って、ベドウィン風のキャンプに辿り着く。
高い垣根の壁に囲まれた中は広く、白いテントがいくつか建ち並んでいた。テントの外にも、砂の上に直接アラビア絨毯が敷かれ、砂漠ドライブを終えて集まってきたサファリ客達が、その上に座ってくつろいでいた。
中に入ると、まずは濃厚なアラビックコーヒーを頂く。苦くてザラザラドロリとしたものが舌の上に残って、ブラックコーヒー大好きな私でもちょっと飲みにくかった。
日が沈み、辺りはどんどん闇に包まれてくる。太陽がいなくなった砂漠は一気に冷えてきて、少々肌寒かった。日中の暑さに気を取られてしっかりした上着を持ってこなかったことを後悔する。けれど、絨毯は大きな焚き火を取り囲むようにして敷かれており、火の側にいれば暖かかった。(時々、風に吹かれて火の粉が飛んでくるのには参ったが)
やがて、シーシャと呼ばれる水パイプが運ばれてくる。見た目は大きなアンティークガラスのランプといった雰囲気の道具に、細長いホースのようなものがついている。先には吸い口がつけられており、ここから煙を吸うのだ。私は、アルコールは飲むが煙草は一切しないタイプなので、これは見るだけ〜と思っていたのだが、アリさんが来て、美味しいから試してみなさいと勧めてくる。
う〜ん、何事も体験かな?と思って、私も吸ってみることにした。…が!!何とも言えない味?に思わずゲホゲホむせてしまう。う〜ん、どう表現したらいいのでしょう。普通の煙草の煙とは違い、妙に甘ったるい感じの何とも言えない煙でした。口に合わず、1口で止めてしまう。
近くには2頭のラクダもいる。引き馬ならぬ引きラクダ(?)で綱で引かれてはいるが、数十メートルの距離を乗せて歩いてもらえる。
ラクダのコブは馬のようにどっしり、鞍はついていたがお尻が少し落ち着かない感じだった。乗る時は、ラクダが上手に足を折り曲げて座っていてくれるので、簡単に乗ることが出来たが、立ち上がると結構高くてビックリする。降りる時は再び足を曲げて上手に座ってくれるのだが、ちょっとガクッと揺れた。
鞍の上には素敵なショールのように毛糸で編んだものが掛けてあり、口の方も同じく毛糸のマスクがかぶせてあった。
テントの方ではヘナペインティングの体験コーナーもあったが、寒くてしなかった。(笑)
やがて、夕食のBBQの準備が出来たと知らされる。
BBQというから、その場で焼いて食べる日本のBBQを想像していたら、すでに炭火で焼かれた鶏肉やラムのお肉、色々なサラダやサモサ、ナン、ビリヤニという黄色いご飯に辛いカレーをかけたようなものをお皿に好きなだけ取っていくバイキングだった。
色々節制のあるイスラム圏だからどうかな?と思ったが、ドリンクコーナーには缶ビールも置いてあった。食事やミネラルウォーター以外は有料とのことで、缶ビールは1本10ディルハイムだった。
食事が終わると、やがて音楽がかかり、ベリーダンスショーが始まる。絨毯敷きの広い舞台にお客さん達が集まる。
みんなが集まって座る中央に、薄いすけすけの衣装を着た1人のキレイなお姉さんが登場する。イスラム女性は肌を隠すのに、お腹と太腿から下を丸出しの、露出過多のドレスを着たこの人はイスラムの人じゃないのかなぁ?…というか、ベリーダンスのルーツもよく知らない私。(;^_^Aでも、金髪で白い肌のキレイなダンサーは、まるで月の砂漠に舞い降りた妖精みたいで可愛かった。(なんか、こう書くとオヤジ的発言みたいだ…)
ダンサーのお姉さんは、軽やかに舞台の上をクルクル舞い踊る。手は波うつように動かしながら、同時に腰を振り、ステップを踏んで進んでいくのだからすごいものだ。特に腰の動き〜!私には真似できないわ〜。
お姉さんはひとしきり1人で踊った後、観客たちの中から1人か2人ずつ引っ張り出して、一緒に踊ろうと誘う。
まずはアリさんが誘われ、陽気でノリのいい彼は楽しそうに一緒に踊っていた。
次にお姉さんは私の所に来て、私の手を引っ張って誘う。ひぇ〜、踊れないよ〜と首を振るが、アリさんに「日本人はなぜこういう時にやらない?」と言われ、まぁ何事も経験だ〜と覚悟を決めて(?)立ち上がる。お姉さんが私に動きを見せてくれるが、リズム感に乏しい私にとって、手と腰と足を同時に動かすのはかなり難しい。お姉さんは優雅な舞いだが、私は盆踊りだった…。(笑)でも、まあ楽しかった!モナさんも引っ張り出され、最初は私以上に恥かしそうだったが、それでも最後は楽しそうに踊っていた。
最後は観客のほとんどが立ち上がって、みんなで一緒に踊りまわっておしまいだった。
これでデザートサファリのツアーは終わり…だが、ここでドライバーさん達が、お客からツアー料金を集め始めた。私のところにもやって来て、請求される。…え?!私は夕べホテルで払ったぞ?一体どうなっているんだ?!ドライバーさんに、「昨日、ホテルで払った」と説明するが、ドライバーさんは怪訝な顔をして、他のドライバーさんと何やら話し合っている。
え〜?!嘘でしょ、まさか2重請求されることはないよね?と思って、ちょっとドキドキする。とにかく、ホテルに戻って前払いしていることをホテルの人に確認してもらう、ということで話は落ち着き、帰りの車に乗る。
キャンプの外に出ると、頭上には満天の星空が広がっていた。
20時半出発。夜の砂漠を、ヘッドライトのみで数台の車が一緒にひた走る。しばらく走って舗装されたハイウェイに出た後は、それぞれのホテルを目指して散って行く。
21時半に戻るのはギリギリかなぁと思っていたが、途中ガソリンスタンドに寄り、砂漠ドライブの前に空気を抜いたタイヤに再び空気を入れて調整したので、結構手間取ってしまった。さらに、フランス人親子のホテルに先に寄って帰ったので、あっというまに22時に近づく。
ひぇ〜!!22時に迎えの車がホテルに来るというのに、これじゃ間に合わない〜!
結局、リビエラホテルに帰ったら22:10をまわっていた。すでに迎えのドライバーさんは来られて待っている。
焦るが、先にホテルのレセプションに行き、デザートサファリのツアー料金は夕べ払ったことを立証する。誤解を解き、2重請求は阻止できたが、一体何でこんなややこしいことになったんだ?!
それからダッシュで部屋に戻り、カバンを取って来る。デザートサファリの前に準備しておいてよかった〜。
22:20過ぎ、リビエラホテル出発。空港には22時半過ぎに着いた。
それから息つく暇もなく、両替やチェックイン、出国手続きを行って搭乗ゲートに向かう。この時間でも人は多くて、航空会社のカウンターでも出国審査場でも長い人の列が出来ていて、しばし待たされる。やっとこさで搭乗ゲートの前に辿り着いた時は23時半をまわっていた。
それから近くのトイレで洗面を済ませ、やっと人心地つく。1:15の出発便を待つ間は猛烈な睡魔に襲われていた。でも、うっかり爆睡して飛行機に乗り遅れては大事なので、必死に睡魔と闘った。(笑)
飛行機に乗り込み、座席に座った瞬間、丸24時間という短い滞在時間のわりには濃くて強烈だったドバイの記憶が甦り、一気に体の力が抜けそうだった。そして、心地よい疲労感にふわふわ意識がさまよう中、あっけなくドバイを飛び立ったのである…。
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