ジャンボ! アフリカ 〜24.フラミンゴのいる湖ナクル湖へ〜

 

 ほろ苦い想いを残して赤道を離れ、北半球に入る。ニャフルルの町を抜けた後、再び別の場所で、今度は止まらずに赤道を通過して南半球に戻る。
 車はずっと坂道を下っていきながら、真っ直ぐナクルの町を目指す。遠く眼下には、小さくナクル湖が光っている姿も時折見える。ここはあのグレートリフトバレーの真っ只中なのだ。

 鉄道も通っているという賑やかなナクルの町を通過し、12時前、ナクル湖国立公園のラネットゲートに到着。
 ここでまたトイレ休憩を兼ねて、ゲート手前の土産物屋さんに立ち寄るが、赤道のこともあって買う気になれなかった。
 ここのお兄ちゃんは、私が訪れた土産物屋の兄ちゃん達の中では好感度NO.1で、人の良さそうな感じがしたが、半分逃げるようにして出てきてしまった。人の良さそうな兄ちゃんは、土産物屋の兄ちゃんには珍しくしつこく追ってこなかったけど。

 ゲートを入るとすぐに車は森の中に入っていった。この木立の向こうにナクル湖がある…と思ったら、いきなりその中にロスチャイルドキリンが現れた。アカシアの葉っぱをムシャムシャ食べている。時々バブーンにも会いながら、乾いたオフロードの道をしばらく走った後、12:45レイクナクルロッジに到着する。

 ここもブーゲンビリアなど色とりどりの花に囲まれ、プールがあって、南の島に来たようだった。
 そして、ロッジの食堂の前には草原が広がり、その向こうには森とそしてナクル湖の湖面が続いていて額縁に入れておきたいような景色だった。その草原には、バブーンが歩き回る。ここにもアンボセリと同じようにバブーンよけのマサイのお兄さんがいたが、カロに言わせたらマサイの服を着たキクユの人らしい。そういえば微妙に頭の形や肌の色が違う。

 ところで、ここのロッジはホースサファリ、そう、馬に乗ってのサファリをやっているそうだ。日本出発前の情報収集では全然知らなくて、ここに来て初めて知った。1時間で30ドル。う、う、う。でも馬に乗って、この大自然の中を歩いてみたい。ちょっと心がグラグラ揺れる。けれど、「この天気じゃ一雨来るよ」と言われ、迷った挙句、結局乗らなかった。ロッジに着き、食事を食べてしばらくは真っ青な青空が広がっていたが、3時過ぎた頃突然曇に覆われいきなりザーッと雨が降り出した。

 雨は30分ほどで止み、16時からのサファリドライブでは厚い雲が垂れ込めていたが、遠くには夕焼け色の空も垣間見えた。

 車がロッジを出ると、まずは周りの草原にインパラやトムソンガゼル、グランドガゼルの姿が見える。
 インパラは、オス1頭に対しメスが多い時には数十頭集まってハーレムを作っている。成長して自立のためハーレムから追い出されたばかりの若いオスやハーレムを作れなかった別のオス達は、また違った群れを作る。カロの「インパラの独身倶楽部」という説明は言いえて妙だと思った。ハーレムと独身倶楽部、両方見る。独身倶楽部のインパラの中には、片方の角が変形したオスインパラもいた。恋の戦いに敗れてしまったのだろうか?

 草原の道を下り、森の中に入ったり、再び草原へと登ったりを繰り返しながら車は走って行く。その途中、カロも5年ガイドしてきて2度しか見たことがないというシマハイエナにも出会った。シマハイエナ君は急ぎの用があるのか、ずっとトットコトットコ走りつづけていた。

 途中、オスのグランドガゼル同士の決闘場面にも出会った。
 草原の斜面を2頭のオスが角を突き合わせてケンカしている。向かって左側のガゼルが強く、追われた右側のガゼルはジリジリ後退していっている。そして、そのまま逃げていってしまった。何でケンカしていたんだろう?

 すり鉢状の地形の底にあるようなナクル湖に徐々に近づいてくる。
 森を抜け、湖の周りの平坦な草原に出ると、ウォーターバックやバッファローの群れもいた。ウォーターバックは気が小さく神経質なのか、道を横断するときも1列になって1頭ずつ周りを確かめながら横断している。そこへ車で近づくと、横断するつもりだったウォーターバック君が固まりついて動かなくなってしまった。ごめんね、驚かせちゃったね。

 フレッドさんが、遠くにシロサイの親子がいるのを見つけてくれた。ロスチャイドキリンもアカシアの葉っぱを食べている。

 やがて、車はナクル湖のほとりに着いた。
 広い〜!平坦な岸辺の向こうにフラミンゴが湖の上で立っている。その姿が湖面に映り、ピンク色に染まっている。時々、編隊を組んで飛び立ち、湖の上をゆるやかに滑空する姿はとても優雅だ。カロが言うには多い時には200万羽のフラミンゴが集まってきて、湖の周りいっぱいがピンク色に埋め尽くされるそうだ。これはまだまだ少ないとのこと。

 車から降りてもいいよと言われ、カロと一緒に湖のほとりを歩く。所々砂と違って白く染まっているのはフラミンゴのフンや羽が落ちているのだ。他の人の旅行記で、ここを歩いたらズブズブはまったと書いていた人がいたが、時期が違うからか全然はまる感じはしなかった。そして、足元には所々塩の結晶が出来ている。ここナクル湖はソーダ湖なのだ。

 湖のほとりを少し走って移動すると、別の場所にはペリカンとアフリカハゲコウもいた。

 ドライブ終了時間も近づいてきたので、そこから湖を離れ、再び森に入って行く。
 ここの森にはヒョウがいるとのことで、森の中では絶えず左右の木の上に目を配る。…と思ったら、フレッドさんがフクロウ発見。後姿で何フクロウかよくわからなかったが、この森の中で1羽のフクロウを見つけるなんて本当に凄いです。

 連絡用の無線が騒がしくなり、フッレッドさんも少し車のスピードを上げてある方に走り始める。着いた先の、とある木の周りは、すでに数台のサファリカーが取り囲んでいた。
 え?何々?フレッドさんとカロが木の根元を指し、ヒョウがいると教えてくれた。あ!ホントだ、ヒョウがいる!!最初草陰に隠れて見えづらかったが1頭のヒョウがいた。

 フレッドさんが、少しでも見えやすいようにと、先着していた車の間に上手に割り込んでくれる。ヒョウは何やら側にあるモノをくわえて動かそうとしているようだ。「インパラの首!」とカロが言う。上手にくわえてヒョウが立ち上がったとき、見事なインパラの生首が見えた。頭も角も完全だ。ひぇぇ〜、すんごい!!よく、アメリカとかヨーロッパで、鹿やトナカイの首から先だけを使った壁飾りを見るけど、そのまんま同じ物が作れそうだった。
 どうやら、ヒョウはそのインパラの生首を持って、木の上に登りたいらしい。インパラを口にくわえたまま前脚を伸ばして爪をたてているようだ…が、登れない。一旦、インパラの首を落とす。そしてまたくわえて登ろうとする…が、登れない。「首が重いんだね」とカロ。何度かチャレンジしたが、とうとう諦めたらしく、木の根元にインパラの首を置くと、少し離れた所に移動した。
 そこにはもう1頭のヒョウがいた。2頭は寄り添うようにして、伏せの体勢で、インパラを木の上に持ち上げようとしたヒョウが、もう1頭のヒョウの耳をペロペロ舐めている。もしかして、2頭はカップルで、インパラをくわえていた方がオス、もう1頭がメスで、「なぁ〜。俺、疲れちゃって持ち上げきれないから手伝ってくれよぉ」「やーよ。男だったらあなたがやりなさいよ」…なんて会話していたのだろうか?(勝手に想像中)

 雲が多い分、早くに薄暗くなり始めた中をロッジに帰るが、ここまででライオンはメスだけど一応はビッグ5を見れたわけで、なんだか嬉しくなってしまう。

 この日のロッジでは、夕食時に各テーブルをお兄さんがギター片手に弾き語りをして回っていた。リクエストした曲を演奏して歌ってくれるのだ。ケニアの曲はわかんないな〜と思って『ジャンボ』をリクエストする。そしたら、後で違うテーブルではビートルズを演奏していたので、ちょっとコケた。でも、おかげで『ジャンボ』の歌、マスターしちゃったもんねぇ??

 それから、ロッジの水道の水は微妙にしょっぱかった。カロに「ナクル湖から水を引いているの?」と聞いたけど、井戸水だと言う。でも、湖が近いから影響があるのかもしれない。