演劇実験室∴王国 第八召喚式

蛭子の栖

作・演出/野中友博

2003年10月22日(水)〜28日(火)

於:中野 劇場MOMO

〒164-0001 中野区中野3-22-8  Tel:03-3381-8422

公演は終了致しました。
沢山の御来場、ありがとう御座いました。


 イラク戦争が始まろうとしていた頃、私はかつてのシベリア出兵にそのイメージを重ね合わせていた。米英によるイラク攻撃は、国連の意向を無視する形で始まったが、我々の政府はそれを支持し、今またイラク特措法で自衛隊を派遣しようとしている。自国に対する専守防衛を唯一の存在理由とするはずの自衛隊の隊員が、いかなるモチベーションでイラクに対する作戦行動(補給作戦はどう考えても軍事作戦である)に荷担できるのか、私には見当もつかない。イラクは別に日本を攻撃も牽制もしなかったではないか? まあ、それは自衛隊員各個に責任がある訳でもないだろうが……

 シベリアへの派兵もやはり、ロシアの革命政権が我が国への攻撃をしかけたからという訳ではない。共産主義思想の拡散を防ぐという大義と、大量破壊兵器の排除という大義は、共に「正義の戦争」という欺瞞を成立させる阿呆陀羅経だ。我々の国の軍隊(自衛隊が事実上の軍隊である事に誰が異論を唱えられるか)は、他国の民族自決を否定する形でしか発動しないようにすら見える。欧州大戦への参戦やシベリア出兵と、イラクやその他の紛争地域に自衛隊を派遣したがる風潮に、同じ匂いを嗅いでいるのは私一人ではあるまい。

 このような情勢下で、日本が「新たなる戦前」という時代に突入したのだという危惧を抱く人々も少なくないようだ。では、戦前とはそもそもどのような時代を云うのだろうか? 例えば、前大戦を基準に考えれば、戦前とはどの辺りの時代をさすのだろうか? よもや世界恐慌前後の僅かな時代をさす訳ではあるまい。だとすれば、直接の交戦国家とした戦った日清・日露両戦争の戦後である大正という時代、欧州大戦やシベリア出兵という形で、他国の紛争に嘴を突っ込んでいたその時代こそ、前大戦にとっての戦前という時代だったのではないかと思われてくる。件のシベリア出兵や関東大震災、米騒動やスペイン風邪の流行という暗部はある物の、大正は民本主義と『赤い鳥』と松井須磨子の『カチューシャの唄』に代表される、あまりにものどかなイメージに包まれている。それは明治と昭和の両天皇の間にあって、弱々しい印象のみで記憶される時代の君主、押し込められた現人神のイメージとも共通するのだ。

 そして、歩行困難で登院できないと云った理由で、実質的な天皇権を失った君主のイメージはまた、足萎えの故に流された皇祖神の兄妹神である蛭子のイメージへと繋がる。

 私はこれまで、多くの封印された神々を、作品の呪術的象徴として採り上げたが、今回のモチーフは、尊き血の中から排除された蛭子の末裔との邂逅となるだろう。深き杜の奥での封印された神々との出会いは、我々に新たな戦前を読み解く鍵を与えてくれるだろうか……?

PERFORM

中川こう/鰍沢ゆき/佐藤由美子/佐々木べん

小林達雄/阿野伸八/諏訪部仁/雛涼子
北島佐和子/円谷奈々子/鈴木淳/野口聖員/駒田忍・他



CREW

音楽・寺田英一/美術・松木淳三郎/照明・中川隆一/音響・山口睦央
宣伝美術・河合明彦/演出補・垣花理恵子/舞台監督・根岸利彦
制作・K企画/企画製作・演劇実験室∴紅王国


CO-CREW
(演劇実験室∴王国)

末次浩一/沢村小春/藪本悟氏/大川戸由嘉/萩谷正人

THANKS

劇場MOMO/総合演劇誌テアトロ/シアターガイド/
風琴工房/岸田理生カンパニー/遊牧民社/P-BOX


料金 前売 ¥3,000-  当日 ¥3,500- 

    入場券は日時指定自由席。一部当日指定有り。前売り、予約優先の整理券制です。
10/22(水) 10/23(木) 10/24(金) 10/25() 10/26() 10/27(月) 10/28(火)
昼の部 × × × 14:00 14:00 × 14:00
夜の部 19:30 19:30 19:30 19:00 19:00 19:30 ×
 当日券、及び入場整理券は、開演の90分前より発行します。

 開場は開演時間の30分前です。

 開演10分前には、受付のお済みでないチケットを、全てキャンセル扱いとさせて頂きますので、お早めに御来場下さい。

 なお開演後の御入場はお断りする場合がありますので、御了承下さい。


演劇実験室∴紅王国 第八召喚式

蛭 子 の 栖

化蝶再臨

作・演出 野中友博

2003年  10月22日〜28日

於・中野 劇場MOMO


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