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ゴールデンエイジとは =
技術の習得は新たな神経回路の形成ですから、脳・神経系の可塑性(やわらかい性質)が高い方が有利です。従って、その大脳の可塑性が比較的高く、また動作習得のためのレディネスもピークを迎え、双方が絶妙なハーモニーを奏でるゴールデンエイジが重要視されるのです。
それは、動きを頭で理解してから体に伝えるのではなく、見たまま感じたままのイメージに従って体全体で技術を吸収していく特別な時期だからです。そのために、この時期以前(プレ・ゴールデンエイジ)に様々な運動・遊びを通じて、神経回路を開いておくことが条件となります。

(1)プレゴールデンエイジ(〜8・9歳頃) 〜 サッカーの楽しさを伝える 〜
ひとつの動作によって、ひとつの“神経回路”が形成されるという、神経回路の配線が急ピッチで遊んでいる時期です。運動能力の基礎は、この年代で形成されます。従って、この年代の子供達にはサッカーだけでなく、色々な遊びを経験させ、ボールに触れることの楽しさや身体を動かすことの喜びを教えて、“サッカーが好き”という状態で次のステージへと送り出すと良いでしょう。
この時期の子供は、楽しそうなこと、興味のあることには夢中になりますが、おもしろくないと感じればすぐにやめてしまいます。指導者は、子供達が飽きない練習内容や練習の進め方を工夫しなければなりません。つまり、子供達がその時その時で興味を示したこと、楽しんでいることを大切にしながら、自主性を損なわせないように練習を行うことが重要です。ボールを使った鬼ごっこなどの様々な遊びや多面的な活動、スモールサイドゲームでたくさんボールに触れる機会を与えてあげるよう工夫すると良いでしょう。

(2)ゴールデンエイジ(9〜12歳頃) 〜 実践的な技術の定義 〜
神経系の発達がほぼ完成に近づき、形成的にもやや安定した時期ですから、動きの巧みさを身につけるのにもっとも適しています。この時期は一生に一度だけ訪れる、あらゆる物事を短時間で覚えることのできる「即座の習得」を備えた時期(ゴールデンエイジ/Golden Age)なのです。また、精神面でも自我の芽生えとともに、競争心が旺盛になってくる時期です。従って、指導者は子供達に、クリエイティブな選手になるために必要な要素=判断を伴う実戦的で正確な技術=、つまりは「サッカーの基本」を身につけさせることを心がけましょう。ゲームを通して「基本」の必要性を理解させ、反復練習によって、サッカー選手として将来大きく成長するための基礎を子供達に作ってあげることが大切です。
「ゴールデンエイジ」と呼ばれるこの時期には、プロが見せるような高度なテクニックも身につけることが可能です。一度習得した技術は大人になってからもずっと身についています。従って、この時期に多くの技術を学ばせることが、将来大きくのびるための大切なポイントとなるのです。ところが、この時期は筋肉が未発達なため、強さや速さに対する体の準備はできていません。ですから、スピードや力強さを要求するのではなく、大人になっても必ず残る財産ともいえる「技術」=ボールをコントロールする、精度の高いパスを出すなど=を身につけさせるよう心がけましょう。

(3)ポストゴールデンエイジ(13歳頃以降) 〜 より個人に目を向けた指導 〜
筋肉や骨格が急速に伸び、体のバランスが今までとは異なってきます。そのために感覚が狂い、習得した技術が一時的にできなくなったり、上達に時間がかかったりします。このことを「クラムジー(Clumsy)」と呼びます。この時期には次のようなことが指導のポイントとなります。

○ 新しい技術の習得よりも、今まで身につけた技術・習得を実戦状況の中でも発揮できるようにしましょう。
○ 男性ホルモンの分泌が著しくなり、速筋繊維の発達が促される時期なので、これまで身につけた技術をより速く、より
   強く発揮できるように少ない 回数や短い時間に集中して行いましょう。
○ この頃になると戦術的なことも理解できるようになります。基本的なグループ戦術やコンビネーションの練習で、サッカ
   ーの視野を広げさせましょう。
○ この頃は、肉体的にも精神的にも非常に不安定な時期であり、指導において特に難しい年代です。「クラムジー」「思春
   期」「反抗期」についてよく理解し、それぞれの子供にあった指導を心がけましょう。特にこの頃になると男女の
   差がはっきりしてきます。女子は男子よりも早く思春期が始まります。
○ 子供達の体格、体力的に差が大きいのもこの時期です。画一的な指導ではなく、一人一人を理解し、それぞれの子供
   にあった指導を心がけましょう。

(4)インディペンデントエイジ(15〜16歳以降) 
クラムジーが終わると、自立のための準備期になります。この時期には、精神的にも肉体的にもバランスがとれるようになり、それまで身につけたサッカーの「基本」を土台として、さらにその上に自らの個性を発揮できるようになるのです。次のようなことが指導のポイントになります。

○ パワーはこの時期から17〜18歳にかけてスパートしているため、13歳以降のトレーニングに加え、ジャンプ系の運
   動が可能になります。(ただし、個人差が大きいので、負荷のかけ方には注意が必要)
○ 自己の特徴をよく知り、それを伸ばすように自ら取り組みことができるようになります。
○ 能力に応じた環境の提供が必要になってきます。(*天井効果の防止)

*天井効果・・・様々な能力の集まった集団の中でトレーニングしていると、中程度の能力を持った選手はどんどん伸びて
  いくのに対して、能力の高い選手は伸びが低下してしまう(天井が塞がれてしまう)現象(Ceiling Effect)  






                                                                 
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