コンディショニングのうちアフターケアに関しては、練習時間の都合上、軽視されがちです。スポーツ障害での外傷は身体の疲労の蓄積で集中力が低下したときに起こりやすく、また使いすぎ障害では重傷になってから整形外科を訪れ、早くチェックできれていればと悔やまれる事もしばしばあります。このことから練習後に身体の各部分をチェックしながら、疲労を取りアフターケアが、スポーツ外傷の予防や使いすぎ障害の早期発見のためにいかに重要であるかが、おわかりいただけると思います。 ◎アフターケアにはどのような方法があるのでしょうか? 1.クーリングダウン 運動により緊張疲労した身体を徐々に元の状態に戻すために行われる。練習後、今までの運動を軽く持続したり、 軽いランニングをすることで心拍数や、呼吸数を整え、身体に不調な箇所がないか確認する。 2.アイシング 急性外傷の処置として有効であり、また運動終了後のクーリンダウンとして用いられる。 3.ストレッチング 筋がゆっくりと伸張されることで整脈環流を促し疲労回復に役立つ。また、運動により硬くなった筋・腱・筋膜をもと の柔らかさにし、間接可動域を復元させる。 4.マッサージ 筋の血流およびリンパ液の循環を促進させ、新陳代謝を盛んにし疲労回復を促す効果がある。以上の中からアイ シング・ストレッチングについて注目してみます。 <スポーツ現場におけるアイシングの重要性> 1.なぜ冷やすのか? ・救急外傷時:受傷直後に冷却することで、代謝活動のレベルが下がり(冬眠状態を作る)、直接ダメージを受けた 組織の損傷が最小限に抑えられ一次的損傷を免れた周囲組織への二次的損傷の波及も防止できる。 ・運動終了後:激しい運動により上昇した筋温を素早く定常の温度に下げることで筋組織の炎症を抑え早期に正常 の状態に復元する。 このような救急外傷時と運動直後のアイシングの目的が異なるため、アイシングの方法も自ずと違ってきます。 2.アイシングの基本的事項 アイシングを行うとき最も注意を要するのは凍傷です。凍傷は冷やす温度と持続時間により発生します。アイシング は 温度0℃が理想で、製氷機の氷は0℃です。しかし、家庭の冷蔵庫については次項で述べます 3.アイシングの手技 (1)救急外傷時 @二重のビニール袋に細かく砕いた氷を入れる。 (アイスパック) ※近頃では、循環冷却タイプ・氷嚢・コールド パック一体タイプなど多種多様なアイシング 関連用品が市販さ れ ています。 A0℃の氷を使用するなら損傷部の皮膚に直接ア イスパックを当て、家庭の氷ならハンカチ一枚をはさんで、身 体の形に沿うように整える。 Bアイスパックを15cm幅の伸縮包帯で巻く。包帯はぴったり巻くが、きつすぎないように! *包帯はアイスパックがカバーしていない部分も含めて損傷部全体を被うようにする。 C損傷部を心臓より15〜20cm挙上し安静にする。 D場合により副木などで患部を固定し、整形外科を受診する。 Eアイシングは感覚がなくなってくるのを目安に20〜30分続け、その後感覚が戻るまで約60分休む。 (2)運動直後のアイシング @外傷と異なり筋肉の新陳代謝を一時的に下げるのが目的なので、ほてった筋肉の熱感をとる程度に冷やす。 時間は5分程度とする。 A陸上・サッカー・ラグビーなど走る競技のインターバル時、氷を入れたバケツを用意しその中に大腿部まで浸 す。 B野球などでは、投球終了後に行う。 C柔道・剣道など前腕を使う種目では、次の対戦までにパンパンに張った前腕を冷やす。 Dアイシングのあとストレッチなどを行う。 <アフターケアとしてのストレッチング> アフターケアのストレッチングはウォーミング・アップのそれと同じようにすべての筋肉をオールラウンドに伸ばす基 本ストレッチングを行ったうえで、特に使った筋肉や疲労感を感じる筋肉を個性にストレッチしましょう。 ☆実施上の注意点 @自分の体力や柔軟性に合わせ、決して無理をしない。痛みを我慢し、無理にやるのは逆効果! A自分のペースでゆっくり行う。 B身体を曲げるときなどは弾みや反動を絶対につけない。 C笑顔で、楽な気持ちで、話しながらやってもよい Dひとつのストレッチを10〜20秒続ける。 |
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