東京高等裁判所 その9

懲戒解雇手続及び相当性に関する判断の誤り

懲戒手続の違法 

  1. 一審判決は、本件懲戒解雇の手続につき、「コニカは,Tに弁明の機会を与え,所定の手続を経て懲戒解雇を決定したから,その手続に瑕疵があるとは認められない。」(判決書)と判断し、
    @Tが聴聞の機会を与えられなかった点については、「手続上,Tに聴聞の機会を与えることは義務づけられていないから(乙10,11),Tの主張は採用することができない。」
    A十分な弁明の機会が与えられなかった点については、「Tが事実関係の認否をするために最低限必要な期間がなかったとはいえない。」
    B労働組合との協議がなかった点については、「仮にコニカがユニオンとの間で協議を行うべきであったとしても,当時の事情を考慮すると,このような手続的瑕疵は,懲戒解雇の効力を左右する瑕疵とはいえない。」と判示している。
  2. ところで、Tは、一審において、本件懲戒解雇手続は、実体的手続として著しく不当であるばかりか、労働協約に規定する「懲戒の認定は、慎重に行い」という趣旨に反する旨指摘した(一審の書類)。
  3. しかし、一審判決の上記判断は、重大な懲戒解雇処分の場合でも、形式的に懲戒手続を履践した形が調っていれば、事足れりとするものであって、上記@の判示は、まさしくその例である。
  4. 上記Aの判示は、一審判決が全くTの上記指摘を顧慮せず、懲戒解雇処分において、実体的適正手続の保障がはかられるべきであるという観点が欠落していることを物語っている。すなわち、Tが本件懲戒処分の手続の違法を主張するのは、形式的手続を履践したか否かに問題の本質があるのではなく、実質的、実体的に適正な手続とはいえない違法性がある、という点である。一審判決は、コニカにおいて、Tに対し、相当期間の弁明のための期間を与えることや当日に聴聞の機会を与えることが、極めて容易であり、全く緊急性も認められない状況下において行われた本件懲戒解雇処分につき、実質的判断をした痕跡さえない。
  5. また、労働組合との協議手続は、コニカ労組が協議を放棄する立場を鮮明にしていたから、労働組合との協議は、ユニオンとの間ですべきであったことは当然である。したがって、当時の事情からしても、ユニオンとの間の協議手続をしなかったという手続的瑕疵は重大であるから、上記Bの判示は、失当である。
  6. 以上のとおり、本件懲戒解雇処分は、重大な手続違反の瑕疵があり、その瑕疵は、懲戒解雇処分の効力を左右するものである。
  7. よって、一審判決は、取り消されるべきである。

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