東京高等裁判所 その1

一審判決の問題点

  1. 一審判決は、本件懲戒解雇処分がなされた背景事実を全く顧慮せず、コニカの主張する誇張されあるいは歪曲された事実をそのまま認めた。すなわち、一審判決は、一部(タイム誌記事の件)を除き、これらが就業規則に定める各懲戒事由に当たる、と明らかに不当で誤った判断をしている。そして、さらに重大な誤りは、懲戒事由に該当する余地のない株主総会出席の件について、一審判決はこれが懲戒事由に当たる、と判断した点である。
  2. 一審判決の問題点は、
    @第1に、一審において、Tが明確に指摘した本件懲戒解雇の背景と本質について、全く考慮せず、本件が労働事件であることの本質を忘れ、皮相的かつ形式的な法律判断をしている、という点である。
    A第2に、コニカが証拠として提出した反対尋問にも全くさらされていない数多くの陳述書の記載内容を解雇事由の認定のために積極的に証拠としているが、これは、陳述書をそのまま証拠にすることに対する証拠法上の疑義や根強い批判を全く無視するものである。しかも、これらの陳述書は、コニカの従業員がコニカの指示に基づき提出したものであり、コニカの主張に沿うようことさら事実を誇張したり、悪意をもって歪曲した内容になっており、証拠価値は、全くない。
    B第3に、上記誤った認識判断と事実認定に基づき、懲戒解雇処分が労働者であるTに与える重大性を考慮することなく、皮相で形式的な判断により、懲戒解雇事由に当たる、と判断している。そして、本件懲戒解雇手続についても、実体的手続保障が全くなされていなかった事実を無視し、単に形式的手続の履践だけをもって適法である旨判断している。
    C第4に、株主総会におけるTの言動につき、全く客観的証拠もないのに、上記陳述書等による歪曲した事実をそのまま受け入れ、本来就業規則が及ぶ余地のない時間と場所である株主総会におけるTの言動をもって、これが懲戒事由に当たる、と判断している。
  3. 以上に指摘した一審判決の判断の問題点は、後述するとおり、本件懲戒解雇が違法な時間外労働賃金規制に端を発した労働紛争の過程で、コニカがTを排除する意図で行われたものである、という本件紛争の労働事件としての本質を正しく見ない一審裁判所の姿勢自体に由来するものであり、不当である。
  4. よって、一審判決がTの請求を認容しなかった部分の判断は、取り消されるべきである。

次へ


TOP