東京地方裁判所 その4

懲戒解雇事由の不存在

機密漏洩発言

  1. コニカは、機密漏洩発言があったとして、これを懲戒解雇事由の1つにしている。
  2. コニカの主張する点は、Tが社内情報を必要に応じて社外に持ち出す旨発言し、それを撤回しなかったことである、としつつ、当該社内情報については、時間外労働問題との関連を否定する。しかし、これは、明らかに事実に反するものである。
  3. 仮に、本件時間外労働問題を全く除外するならば、Tの上記発言は、何の脈絡もない発言ということになる。そして、かかる発言内容を懲戒事由にするなどということは、それ自体内容が不明で、およそ不合理であるからである。
  4. 上記発言は、先に記載した事実経過の中で発せられたものであり、Tが労働基準監督署に提出した資料、つまり、コニカが労基法上の違反行為を犯し、時間外労働賃金を支給していない事実を示す資料に関して、Tの発言を捉えていることは明白である。しかも、H人事課長は、Tは社内情報をフロッピーディスクにて会社の許可なく社外に持ち出した旨述べて(乙1)、これは、勤怠情報に関する内容であったことを明白に認めているから(H人事課長調書)、争う余地のない事実である。コニカが主張する機密漏洩発言の件は、コニカにおける違法時間外労働に関する内部告発資料を指すものであることは明白である。
  5. それ故、コニカは、自ら違法な時間外労働を行わせていながら、Tが是正させるため、やむをえず提出した違法時間外労働の事実を示す資料を提出したことをもって、それを咎めることは、それ自体許されない。つまり、Tの上記行為は、コニカの違法行為を是正させるために取ったものであるから、社会的相当行為として違法性はない。
  6. したがって、Tの上記行為は、就業規則第97条6号等「事業場の重大な機密を社外にもらし、またはもらそうとしたとき」「職務上の命令・指示に反抗して職場の秩序を乱し、または乱そうとしたとき」に該当しないことはもとより、コニカがこれをもって懲戒解雇事由とすること自体、公序に反して無効である。

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