東京地方裁判所 その11

懲戒解雇事由の不存在

上司に対する反抗等(補足)

  1. @ユニオンのビラ配り翌日の面談は、正当な労働組合活動に対し、コニカが不当に干渉し、これを止めさせようとした件である。
  2. W部長は、ビラの中身を見ずに、人事部と共に、ビラを受け取った社員にビラをごみ箱に捨てさせる行為をしている(W部長調書)。
  3. また、同部長は、Tの身内に対し、Tが労基署への申告をしたり組合活動をすることを止めさせるよう手紙(甲13の1)を送付した(W部長調書)。
  4. 同部長が、不当かつ行きすぎた行為を執拗に繰り返したことは明白である。
  5. A株主総会翌日の面談は、Tが業務を離れて一株主として株主総会に出席し、発言したことに対し、コニカが不当に干渉し、これを止めさせようとした件である。
  6. W部長は、従業員であるならば株主総会をうまく進めるように協力する義務がある(W部長調書)と述べ、株主には発言させまいとするのが従業員の本分であると主張している。
  7. これは、かってコニカが、株主総会を平穏に終わらせる為に、暴力団関係の総会屋に現金を供与し、逮捕者が出た過去に相通じるものであり、株主総会に関する法の定めの認識が根本的に間違っていることを明確に示している。
  8. @に関しては、正当な組合活動をしないよう、Aに関しては、株主としての権利を行使しないよう、W部長が「職務上の命令・指示」として、Tに止めさせようとしたものである。このような命令・指示が、コニカの職務権限に含まれないことは明白であるし、権利の正当な行使に対する侵害でもある。
  9. この権利の侵害に対し、Tが抵抗するのは当然のことであり、口論とはなったが暴行・脅迫の事実はない。
  10. @と同様の面談が以前にも何回か行われていたが、その時は口論とはなっていない(N課長調書)。
  11. この事実からも、W部長が行った権利の侵害が、執拗かつ相当程度を越していたことが原因で、今回は口論となったことが示される。
  12. 同部長らが、Tがいた実験室に来て、権利の侵害を行わなければ、口論さえ起こっていない件である。
  13. 面談時間が1時間前後なのに対し、口論はわずか10秒くらいである(甲15)。
  14. そして、口論が終わった後、なおも権利の侵害が行われていたのである。
  15. 両日とも面談は、W部長及びN課長の二人とTとの面談であり、日常業務中のことでないのみならず、通常の職場でその他大勢の社員がいる場合とは状況が全く違う。本件面談は、コニカ本来の業務でないことからも、何らコニカの業務に影響を及ぼすものではないことは明らかである。
  16. よって、W部長の行為が「職務上の命令・指示」に属さないことはもちろん、Tが、職場の風紀・秩序を乱し、または乱そうとした事実もない。
  17. @の面談の翌日、Tは、H人事課長他人事課社員数名と面談しているが、ユニオン宛抗議文を手渡されただけで、口論のことは何ら問題とされていない(甲8)ことからも、当時この口論が問題とされていた訳ではないことが明らかである。
  18. 上記の通り、両日の面談は、従業員就業規則第96条7号「他人に対し、暴行・脅迫をしたとき」、同第97条5号「職務上の命令・指示に反抗して職場の風紀秩序を乱しまたは乱そうとしたとき」に該当しない。
  19. 以上の通り、コニカが懲戒解雇事由としてあげる事由は、従業員就業規則の懲罰事由に該当するものではない。その他の懲罰事由についても同様であり、既に先に述べた通りである。

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