来年度の保育について

初瀬基樹

 先日の劇場ごっこには、たくさんの方々に見に来て頂きまして、本当にありがとうございました。はりきって舞台に上がった子、恥ずかしくて普段どおりの姿が見せられなかった子、照れ隠しにふざけてしまった子などなど、さまざまでしたが、それぞれに、よくその年齢の特徴や、その子らしさがあらわれていたなあと違った角度からも楽しめた劇場ごっこでした。

 また、先日25日(土)には、年長児(つくし組)の卒園記念金峰山登山も無事に終わりました。一つひとつ行事を終えるたびに、子どもたちの成長を実感し、うれしく思いますが、まもなく、つくし組は卒園式を迎えます。大きくなったなあ、成長したなあという思いと、園を旅立っていくさみしさ、私たち保育者にできることがもっともっとあったのではないか、などという思いが同居し、複雑な1ヶ月となります。いずれにせよ、つくし組の子どもたちには、最後まで、元気で楽しい園生活をおくってもらいたいなと思います。もちろん、私たちもできるかぎりの保育をしたいと思います。

 さて、同時に新年度のことについても考えなくてはいけない時期です。
今年度は、3歳未満児の途中入園が多かったため、年度途中から、部屋の都合で2歳児の半数以上を進級させ、2,3歳児混合クラスと4,5歳児混合クラスという分け方にしましたので、「異年齢児混合クラス」という感覚はあまり感じられなかったかもしれませんが、わが園が「年齢別クラス編成」(子どもたちをそれぞれの年齢で分けたクラス編成を「年齢別クラス編成」といいます。)から、現在の「異年齢児混合クラス(幼児クラス)」として生活するようにして4年が過ぎました。「異年齢児混合クラス」には長所もあり、短所もあり、といった感じではありますが、やはり、これからの子どもたちにとって、ますます必要となる「人との多様なかかわり」がたくさん生まれるなあという思いです。そして来年度は、さらに「集団作り」ということを視野に入れて「もう一歩進めた形の異年齢児混合クラス」にしたいと考えています。

 「もう一歩進めた形」というのは、具体的に言いますと、わが園では、3歳以上児がだいたい50人弱ぐらいなのですが、それだけの人数が同じ部屋で一緒に生活するとなると、やはり大人の数にかかわらず、どこか落ち着かない雰囲気になってしまいます。ここ数年の「幼児クラス」としての生活では、同年齢のかかわりだけでなく、きょうだいのようなかかわりが自然な形でうまれ、とても良いなと思う反面、一人で、あるいは少人数で、じっくり集中して何かに取り組んだりするには、人数が多すぎるのではと感じます。そこで、3歳以上の子どもたちを2クラスに分け、少人数のクラス編成にしてはどうかと思うのです。異年齢児混合クラスを2つ作るということです。(下図参照)そのほうが、保育者も一人ひとりの子どもを丁寧に見ることが出来ると思いますし、仲の良い友達づくり、さらには集団作りという観点からも良いのではと思うのです。



 また、1年ごとの区切りではなく、3年をひとつのサイクルとします。3歳児が5歳児になるまでをひとつの区切りとして考えるのです。そうすると、一緒に生活してきた3,4歳児の子どもたちの集団は、そのまま4,5歳児の集団として残り、自分たちが築き上げてきた集団を次の年へ継続しながら、あらたに3歳児を迎えるというわけです。
 
 さきほどの国の基準では3歳児には子ども20名に対し、大人1名となります。この体制では、とても一人ひとりにじっくりかかわってあげられないというのが現状ですが、お世話好きなお兄ちゃん、お姉ちゃんが同じクラスにいることで、着替えなどを手伝ってもらったり、一緒に遊んでくれたりしますと、3歳児の気分もかなり違うのではないかと思うのです。「子ども同士で育ちあう」というかかわりが、より自然に生まれてくると思うのです。

 そして、もうひとつ、このような異年齢保育を進める理由には、みなさんにも知っておいて頂きたい深刻な問題もあります。
それは、私たちのこの河内町においても、子どもの出生数が年々減少しているということです。ここ2,3年でいうと、正確にはわかりませんが、河内町の出生数は年間20人ぐらいではないかということです。全国的にも少子化が進んでいますが、この河内町においても少子化の問題は、これからますます深刻になりそうな気配です。

 わが園においては、来年度の入園希望者は、今のところ、たったの1名、そして現在0歳児クラスは5名ですが、0歳児クラス(つぼみ組)の子どもは、全員進級するので0歳児クラスは0名でのスタートとなります。制度的なことを言うと、少々難しいのですが、子どもの数に対する保育士の割合というのが、国の最低基準として定められています。0歳児は子ども3名に付き保育士1名、1歳児・2歳児は子ども6名に付き保育士1名、3歳児に至っては20名に付き保育士1名、そして4,5歳児になると30名に付き保育士1名です。
 
 この基準に合わせようとすると、わが園は子どもの数が少ないため、年齢別に分けたクラス編成は難しいのです。さらに、年度によって各クラスの子どもの人数に変動があるため、今後、ますます3歳以上児のクラス編成は難しくなっていくと思われます。そこで、多少、人数にばらつきがあっても安定したクラス運営をするためには、異年齢児混合クラスの方がよいということになります。

 熊本市では、今年50周年を迎えたひまわり保育園が10年ほど前から、こうした異年齢保育に取り組んでいます。私はこのひまわり保育園の園長先生や主任の先生方と親しくさせて頂いているので、よくお話を伺ったりするのですが、とても丁寧な保育をされていることにいつも感心していました。そのひまわり保育園の先生方にも相談に乗ってもらいながら、また、そのひまわり保育園に、研究者という立場でかかわってこられた熊本学園大学の宮里六郎先生(ご自身でも「異年齢保育」「過疎地の保育」を研究しておられます。)にも、来年度から、年に何度かでも、わが園にも足を運んで頂いて、もう一度子どもの見方や保育の進め方など、一緒に考えていって頂きたいと考えております。
 
 ご心配な点や、ご不明な点など、多々あるかと思います。どうぞ遠慮なくお尋ねください。私たちも、まだまだこれから勉強を積んで、子どものたちにとって、おうちの方々にとっても、今以上に楽しく過ごすことの出来る「もうひとつの家」にしていきたいと思っています。一緒により良い保育を考えていきましょう。ご理解とご協力をお願いいたします。

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