来年度の保育について(2)

河内からたち保育園

 先日のからたち便りで、来年度の保育についてお知らせしたところですが、言葉足らずな面があったりして、多くの方に不安な思いをさせてしまったり、ご心配をおかけしたりしてしまっているようで申し訳ありません。

 各クラスの懇談会の際に、ご質問や、ご意見を伺う時間をとらせて頂きましたところ、多くの方にさまざまな思いを語って頂けたことをとてもうれしく思います。今後も「子どもを真ん中に、おうちの方と、保育者が一緒に保育を考えていく」ということを大事にしたいと思っておりますので、遠慮なくご意見等お寄せください。

 さて、前回のものに少し説明を加えさせて頂きたく思います。


(今回のクラス編成について・・・)

● 異年齢のかかわりが大切な時代であるということ

 昔のように、地域で子どもたちが群れをなして、子どもたちだけで仲間を作って遊ぶということがほとんどなくなってしまいました。小さい子が大きい子にあこがれて、さまざまな遊びを引き継いでいくとか、大きい子、強い子が自分より小さい子、弱い子に対して手加減したり、配慮したりしながら、仲間関係を維持したり、広げていったりといったかかわりは、今の時代、大人が意図的にそのような環境を作らなければ、自然発生的には生まれてきません。

 もちろん、異年齢集団が良い面ばかりとは限りませんが、これからの子どもたちが「豊かで多様な人間関係を築いていく力」をつけていくためには、そうした異年齢も混じった多様なかかわりが必要であると思っています。
 
 そうした思いもあって、わが園では4年前から3・4・5歳児を混合で生活するようにしました。(今年度に限っては、年度途中から2歳児の進級に伴い、2歳児に配慮して2,3歳児+4,5歳児というクラス編成にしていましたが・・・。)


● 少子化による保育園運営の厳しさ

 保育士の配置基準につきましては、前回もお知らせしましたように、3歳児20名につき保育士1名、4,5歳児30名につき保育士1名というのが国の定める最低基準です。(最低基準ですから、それより多く配置することも可能ですが、熊本市に限らず、地方は財政難のため、最低基準=最高基準と言って良いぐらいに余分な人員が配置できるだけの補助金は出してもらえません。)

 そこで、数年先まで見通して、クラス編成を考えてみることにします。
(変化がわかりやすいように、今後数年のわが園の園児数の経緯を図にしてみますと、以下のようになります。)

 来年度(2006年度)の園児数は、3歳児19名、4歳児14名,5歳児13名ですので、3歳児に保育士1名、4,5歳児に保育士1名という配置で、3歳児(19名)+4,5歳児(27名)というクラス編成は不可能ではありません。しかし、実際には3歳児19名を保育士1名で見るというのはかなり厳しいと思います。(下図参照)

 仮に、上図のように来年度(2006年度)、今年度後半(2005年度9月から)のような「年齢別編成」で保育を行ったとします。

 そうすると、では「再来年度(2007年度)はどうなるか」を考えてみますと、下図のように、2007年度に進級した4,5歳児(33名)+3歳児(9名)(下図@)となり、クラスの人数が偏ったとてもアンバランスなクラス編成になってしまいますので、3,4歳児(28名)+5歳児クラス(14名)(下図A)という編成にするか、あるいは4歳児を2つに分けて、3,4歳児+4,5歳児(下図B)という編成にするか、あるいはその年から3,4,5歳児クラス2つにするかということになってしまいます。

 さらに、その翌年(2008年度)には、5歳児が19名となりますので、新入園児がさほど見込めないこの地域では、若干の園児数増加はあったとしても、必然的に5歳児+3,4歳児というクラス編成になるでしょう。(2007年度に3,4,5歳児クラスが2つになっていれば、それが継続されると思われますが、ここではとりあえず年齢別編成にこだわって下図のようにクラス編成をしたとします。)

 そして、さらにその翌年(2009年度)には、その年の5歳児(19名)が卒園してしまうと、もう3,4,5歳で1クラスしかできない、もしくは2歳児も混合に・・・となる可能性も出てきます。(このまま新入園児が極めて少ない状態が続いていくとすればの話ですが)

 このように、ここ数年先を考えただけでも、クラス編成が4・5歳混合だったり、3・4歳混合だったり、一つのクラスを2つに分けなければならなかったりと、毎年毎年バラバラなクラス編成になる可能性があり、それこそ安定したクラス運営、落ち着いた保育が成り立たなくなってしまうことが予想されるのです。

 そのため、早い時点で3,4,5歳児クラスを2つにしておけば、年度によって、各年齢の子どもの数や割合に多少変動があったとしても、安定したクラス運営が継続でき、来年度の3歳児クラス19名が数年後に卒園した際、園の定員数を減らし、3,4,5歳児1クラスとなるようなことがあっても、それまでの積み重ねによって、子どもたちの生活にはそれほど影響はでないのではないかと思うのです。

 来年度、異年齢クラスを2つに分けるというのは、前回のお便りにも書いておきましたが、ここ数年の子どもたちの様子を見る限り、50人弱で1クラス(幼児クラス)というのは、大人(保育者)の数にかかわらず、どこか落ち着かない雰囲気になり、一人でとか、少人数でじっくり何かに取り組むには、人数が多すぎると感じるからです。
ですから、基本として少人数のクラスがあって、遊びや活動などによっては、部屋を広げたり、一緒に活動をしたりするという方が望ましいのではないかと考えたのです。


● なぜ来年度なのか?

 いずれ、といっても早いうちに異年齢混合クラスにしたほうが、安定したクラス運営が継続できるということが、少しお分かり頂けたのではないかと思います。
 ただ、それが再来年度(2007年度)ではなく、「来年度(2006年度)から」踏み切ろうとしているのには、他にも理由があります。

 例えば、
@ 今年度は2歳児の大半が9月から「ちびひばり」として進級したことにより、すでに幼児クラスでの生活や、上の子達と一緒の生活に慣れている。

A 保育士は1名退職しますが、今年度非常勤の奈津美さんが、来年度から正職員としてがんばってくれることになり、まったくの新しい職員が来るわけではないので、子どもたちやおうちの方々にも戸惑いが少なく、職員もこれまでどおり、安定したかかわりができるのではないか。

B 来年度(2006年度)の新入園児は1名だけなので、園全体の雰囲気からしても、例年のように新入園児が園に慣れるまでの4,5月のような騒がしさもなく、在園の子どもたちもさほど不安定になることはないのではないか。

 以上のようなことから、近い将来、異年齢混合クラスへ移行しなければならないとするなら、むしろ子どもへの影響が少ない来年度がチャンスなのではないかと考えたのです。

 かなりの長文になってしまいましたが、これらのことを、まずご理解頂けたらと思います。

 さて、現在みなさんがご心配されていることの多くは、「来年度から実際の生活(保育)がどうなるか」ということだと思います。そこで、現在、園として考えていることをお伝えしておきたいと思います。


● 保育者(担任)の配置について

 これまでの説明のなかにも書いておりますが、本来、来年度のわが園の園児数(3歳以上児)からすれば、正規の保育士の配置は二人となります。しかし、来年度は移行の年でもあるため、少しでも子どもたちが安定して過ごせるようにと考え、園の財政的には大赤字なのですが、来年度(2006年度)に関しては、正職員3人と非常勤職員という体制で臨む予定です。また、主任(基樹)もフリー保育士としてかかわっていく予定です。

具体的には、仮に幼児クラスA、Bとした場合、

Aクラス・・・5歳児(6名)・4歳児(7名)・3歳児(10名)/合計23名に正規保育士2名

Bクラス・・・5歳児(7名)・4歳児(7名)・3歳児(9名)/合計23名に正規保育士1名+非常勤保育士2名(非常勤は時間が短いため午前、午後とも補うため)というクラス編成にします。そこへ主任(基樹)もフリーとして毎日ではありませんが、かかわっていくことになります。


● 異年齢の活動と年齢別の活動(たてのつながり・横のつながり)

(子ども同士のかかわりの面では・・・)
 熊本学園大学の宮里先生の言葉を借りれば、同年齢保育は「同年齢だけのかかわり」が中心ですが、異年齢保育は「異年齢のかかわり+同年齢のかかわり」です。異年齢児混合クラスには、同年齢の子どもも当然存在するわけであり、同年齢の友達とのかかわりをもとにして、異年齢のかかわりも育っていくのだと思います。

 また、わが園ではこれまでもこんな思いで保育をしてきたつもりですが、保育者が「教え、育てる」ような「教育」ではなく、「生活」のなかで仲間をモデルに多様なかかわりを、子どもたちが自然に気付き、学んでいけるように組織するということをこれまで以上に大切にしていきたいと思っています。保育者が先回りして役割分担し、子どもたちに予定していたことをやらせるのではなく、子どもたち自身が、お互いの違いに気付き、分担していけるような力を育てたいと思っています。ですから、「教育」というより、異年齢の「生活」のなかで自ら育つ方向を目指したいのです。

 さらに、同年齢では「競争的な関係になりやすい」のですが、「異年齢は安心と挑戦の雰囲気が作りやすい」という利点があります。この利点を最大限に生かせるような保育を心がけたいと思います。

 とはいえ、これまでのような年齢別の活動も重視していくつもりです。年度当初はどうしても3歳児中心の保育にならざるを得ないと思いますが、後半は5歳児の就学も視野に入れて、5歳児としての活動を増やしていくつもりです。

 イメージで言うと、年度前半は3歳児+4・5歳児という感じで保育を行い、後半は3・4歳児+5歳児という感じの保育に、そして特に後半には、4歳児は5歳児にあこがれを持ち、自分たちもあんなふうになりたいという思いや力をいっぱいためこんで、次の年に花開く準備をしていけるようにしていきたいと考えています。
 
 そのためにも、これまでの「ひばり組」、「めだか組」、「つくし組」という名称は残し、年齢別の活動も意図的に行っていきます。年齢ごとの担当保育者も決め、年齢別活動のときは年間を通して、できるだけ同じ保育者がかかわっていくように配慮いたします。

(各年齢の発達課題などについては・・・)

 基本は異年齢のクラスが二つになりますが、これまで同様、「一人ひとりの子どもを職員みんなで保育していこう」と考えていますので、年間指導計画や月間指導計画、週案(週の計画)、日案(日ごとの計画)などは、3歳以上児の担任みんなで話し合って立案し、さらに職員会などの際に職員全員で検討します。その計画に基づいて、それぞれのクラスで、あるいは一緒に、保育を進めていきます。ですから、多少は担任によるカラー(個性)が出るとは思いますが、基本的にはクラスによって、同じ年齢の子どもの育ちや到達度が違うというようなことは無いようにしたいと考えています。

● 行事について

 現在のところ、行事についての取り組みも、「これまでと大きく変える」ということは考えていません。これまでの運動会などでも、異年齢グループとしての取り組みなどを取り入れてきておりますので、そういったものをもう少し丁寧に、他の行事においても取り入れて・・・、ということになると思いますが、これまで通りの年齢毎の取り組みも続けていくつもりです。
 行事への取り組みについては、これまでも毎年パターン化したものではなく、「子どもたちにとってどうなのか」を常に念頭において、「前年の反省をもとに、より良いものを」と係を中心に職員会議において、職員全員で検討してきておりますので、今後も同様に、職員みんなで知恵を出し合いながら、より良い取り組みができるように考えていくつもりです。もちろん、おうちの方々も「こんなふうにしてみたら?」などご提案頂ければ参考にさせて頂きます。

● 普段の生活について

 普段の生活についても、これまで同様、わが園では「自由な時間」を大切にしていきますので、クラスが分かれたからといって、何もかも別々になるということはありえません。朝夕の集まりや当番活動、昼寝の際などはクラス毎でとなるかもしれませんが、遊ぶときには部屋を自由に行き来したり、園庭で一緒に遊んだりと、これまでと大差ないのではと思います。

 こまかな活動に関しては、少人数のグループ活動というのも取り入れていきたいと考えていますが、それは一人ひとりの子どもの育ちを丁寧に見るためであり、子どもたちの仲間関係を築きやすくするためでもあります。ですから、食事等でもグループで食べることがあったり、仲良しの友達と食べることがあったり、保育者と食べることがあったりという風に、これまで通り、あまり固いルールを決めるのではなく、子どもたちが「自分で考え、自分で決める」という場面も大切にし、柔軟にいろんな取り組みをしていきたいと思っています。



 いかがでしょうか?少しは具体的なイメージがつかめてきましたでしょうか?

 わが園では、まだまだ試行錯誤しながら、ということにはなりますが、十数年こうした異年齢保育に取り組み、全国の保育者の研究大会などで発表したりして、それなりの成果を出している「ひまわり保育園」の先生方や、熊本学園大学の宮里先生などのお力添えも頂きながら、私たちも一丸となって、精一杯取り組んでいきたいと思っています。

 アンケート用紙を添付しておきますので、ご質問やご意見、ご要望、ご感想などがありましたら、遠慮なく、どしどしお寄せください。(必要に応じて、今度のからたち会総会でも、時間をとりたいと思っています。)

 頂いたご意見、ご要望について、すべての方にご満足頂ける結果にすることは、とても無理だと思いますが、園として真剣に考え、改善できる点は改善し、出来ない点につきましては、きちんとご説明させて頂きたく思います。
 
 今後ともご理解とご協力をどうぞよろしくお願いいたします。


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