◆Lの季節◆

 

 ● 製品データ
タイトル  Lの季節 −A piece of memnories−
発売日  1999年8月5日 メーカー  トンキンハウス
定価  6,500円 ジャンル  デジタルノベル
廉価版  ベストプライス\2500/2001年6月7日/トンキンハウス/2,500円
関連商品  通常版に加え、初回限定版があります。その他ビジュアルファンブック
 (攻略本)、音楽CDなど周辺グッズは多数あり。
   
 ● 評価
外見衝撃度  初回限定版、通常版、廉価版とそれぞれジャケ絵は異なるのですが、
 物憂げなヒロインでケーム観を端的に示しているところは共通。
 ★
超越世界観  現実界と幻想界の二重構造はいいんですけど、このセカイ系っぷりは
 キツイ。マジキツイ。
 ★
声優度  14名の攻略可能ヒロインズは全員フルボイスです。
 ★★★★
演出度  メニュー画面放置で何度も見たく/聞きたくなるOPムービーが最高。
 ゲーム本編も立ちキャラのパターンが豊富です。
 ★★★★
時間報奨  攻略サイト見ながら進めていけばストーリー・CGとも100%達成
 できますが、システム的に繰り返しプレイがツライです。いろいろと。
 ★★★
牽引力  全体のストーリーはメインキャラで一度見れば充分かな。あとは
 気に入ったヒロインとのエンディングを回収するくらい。
 ★★★
ゲーム性  基本的にノベルゲーなのでゲーム性皆無ですが、口出しシステムと
 いう新要素あり。デメリットのほうが多い困ったシステムですが。
 ★★
快楽性  バックログ、早送りというノベルゲーを快適に読み進めるための
 要素は一通り入ってます。できればスキップもっと早くして。
 ★★★
芸術点  幻想界のヒロイン設定がねぇ・・・安易で御都合主義で単なる客寄せ
 パンダで、人外スキーとしてこりゃ許せないですよ。
 −
所有価値  結構出回った&廉価版のせいか、割と簡単に入手可能。
 キャラデザ:渡辺明夫ってとこで、そこら辺に所有価値あり。
 ★★
総合評価  評価難しいソフトです。ところどころに散見される粗の部分に対して、
 許せるか(または気づかないか)。まるで踏み絵のようなゲーム。

46点

   
 ● コメント
イントロ
現実界と幻想界、表裏となる2つの世界それぞれに存在する学園を舞台にしたノベルゲーです。ゲーム内の期間は1週間くらいでしょうか。通学路と喫茶店内とゲームセンターを除けば行動範囲は全て学園内という超閉鎖空間の中で、主人公とヒロインは奇妙な事件に巻き込まれることになります。

それではお約束のヒロイン紹介。現実界、幻想界とも最初の2人がメインヒロイン、次の4人がサブヒロイン、残りの1人が隠しヒロインという扱いです。

現実界:
・天羽 碧(あそう みどり):完璧ツンデレ超人。
・星原 百合(ほしはら ゆり):周囲との交流を避ける物憂げ少女。
・弓倉 亜希子(ゆみくら あきこ):母性本能溢れるも一番の貧乳キャラ。
・東由利 鼓(ひがしゆり つづみ):苗字に名前まで入っちゃってるせいか男子生徒を下の名前でしか呼ばないスポーツ少女。
・弓倉 さやか(ゆみくら さやか):亜希子の妹。楽器持ってなくてもうるさい吹奏楽部。
・草壁 湊(くさかべ みなと):無気力代理教師。ルートに入らないといいとこ見えない。
・鵜野森 椎奈(うのもり しいな):印象薄い、碧の貴重な友達の一人。

幻想界:
・鈴科 流水音(すずしな るみね):制服改造おせっかい幽霊。
・舞波 優希(まいなみ ゆうき):いじめてオーラ出しまくりの死神見習い。
・湖潤 リリス(こうすい りりす):ロリ羽虫体型の音楽の精霊。見た目どおりの性格。
・氷狩 吹雪(ひかり ふぶき):空手部所属のヤンキー雪女。幻想界のツンデレ担当。
・エリザ・ノインテーター:学園理事長代理。ボディコン切れ長24歳ヴァンパイア。
・霧城 七衣(きりしろ なない):絵画として描かれた2次元魔法生命体。腐女子属性。
・リ・サ:主人公に恩返ししに来たモモンガ少女。純粋すぎるおのぼりさんタイプ。
レビュー
一回のプレイにかかる時間はじっくりストーリー読んで2時間、スキップ飛ばしまくりで30分〜1時間くらいでしょうか。繰り返しプレイ必須のこのゲームでこの長さは妥当で、ボリュームの割にめまぐるしい展開を見せるサービス精神は良いのですが、だからといって気持ちよくプレイできるかと言うと実はそうでもなかったりします。
というのもこのゲームには他のノベルゲーに見られない新システムとして、口出しシステムというものがあります。ストーリーを追っている最中に「次のページへ送る」マークが変わったらその合図。ここですかさず□ボタンを押すと、目の前のヒロインに対して好意または嫌悪の感情を「自覚」することが可能。あくまでも自覚であるため、その場でヒロインの態度が変わるわけではないのですが、結局は好感度判定のために正しい選択が必要で、ヒロイン攻略のために欠かせない要素だったりします。
んで、これが困ったことに、「口出ししない」ことも選択肢の一つであるという点。すなわち、メッセージスキップでつい飛ばしてしまうこともありがちなわけで、せっかくの「繰り返しプレイのためのスキップ機能」と明らかな不協和音を奏でております。

そもそも、どうして繰り返しプレイが必須なのか。実はこのゲーム、エンディング到達フラグや一度見たCGの情報をシステムデータとして持っているわけではなく、シナリオセーブデータと一緒に管理しています。そのため、途中まで展開が同じキャラの攻略を分岐前でセーブしておき、別々にエンディングを回収するという、エロゲーでは基本中の基本テクニックが使えない。新たなヒロインを攻略するたびに、毎回ストーリーの最初から始めなくてはなりません。これもまた見事な不協和音。助けてリリス〜。

肝心のストーリーのほうは、えーとなんていうか。どちらの学園でもちょっとした事件が起きるのですが、それが過去に起きた事件と酷似しており、その関連性の推理とか関係者の証言が小出しにされるさまが話の肝であります。しかしプレイヤーを置いてきぼりにさせないためか過去の事件について全く知らない主人公、周りの人に聞いて回っても「あの事件のことは話したくないの」「お前は知らなくていいことだ」とすっかり蚊帳の外。主人公という素晴らしい肩書きを持ちながら皆からいらない子扱いされる鬱展開かと思いきや、ラストで「この2つの世界を作ったのは主人公、貴様だ」という持ち上げっぷり。この0か100しかない二極展開は、例えて言うなら勝ち組と負け組でしか物事を判断できない厨房とネットで会話しているようです。
他にも、死神の能力を全然発揮できずにいじけていたヒロイン優希のシナリオでは、彼女が最後にちょっと本気出したらそれまでツチノコだった守護精霊がいきなりセイントドラゴンとかいう大層なものに化けて一発即死。ゲームバランス壊レテルヨ?

それともう一つ。上記の点数評価(芸術点)でも述べましたが、幻想界のキャラ設定がなっとらんですよ。「幽霊」という設定にしたからには幽霊っぽいイベントの1つや2つ、具体的には壁抜けとか空中浮遊とかあってもバチは当たらんと思うのですが、幽霊だからそもそもバチは当たらんですかそうですか。
極めつけはエリザ先生。彼女はヴァンパイア族であるため高貴っぽさの獲得に成功しているものの、「この世界のヴァンパイア族は、血を吸わなくても生きていけますし、陽の光にも耐性がつき、社会に適応できるようになっています。」というこのゲーム特有の超サイコーな俺設定によって、「陽光を浴びて浮かび上がるシルエットが美しい」さまを見せ付けてくれる掟破りのキャラクターです。さらに、彼女シナリオのラストでは教会におびき寄せての最終決戦で「先生、ヴァンパイア族は本来こういう聖なる場所が苦痛じゃないんですか?」と薄っぺらい緊迫感を煽っているのですが、そもそも彼女以外のシナリオでは教会でのバトルはありません。
幻想界の住人とハッピーエンドを迎えられる!という売り文句を掲げるなら、各種族の特性を良いとこ悪いとこ含めてきっちり話に入れてください。こういう御都合主義ってのは金輪際やめてください。お願いします。

総評:
あっちの世界の過去の事件に関わった悲劇のヒロインがこっちの世界に転生してハッピーエンド、という構成の絶妙さがこのゲームでやりたかったことなのかもしれません。でもヒロインたちが、2つの世界の主人公は魂を同じにする存在であることを知っているかと言えば、それはかなり微妙。気づいているヒロインもいるようですが、スーパードールリカちゃんみたいな髪型の某ヒロインは、とりあえずこっちの世界で似た人がいるからいいかー、としか思ってなさそうです。
攻略ガイド
ネットで攻略HPを検索するのが一番です。さすがにここには書ききれない。まずは現実界・幻想界とも何も考えずに1回ずつプレイして、強制バッドエンドを味わってみましょう。そこからお気に入りのヒロインを見つけてみてはいかが? ちなみにサブヒロインはメインヒロインのどちらか攻略後、隠しヒロインはメイン+サブの6ヒロイン攻略後でないと攻略できませんので、先走らないように。
出演声優
野上ゆかな、柳原みわ、中川亜紀子、柊美冬、田村ゆかり、紗ゆり、桑島法子、池澤春菜、堀江由衣、夏樹リオ、生駒治美、山口百合子、鈴木真仁、山本麻里安
関連ソフト
ソナタ(PS/T&Eソフト)、この世の果てで恋を唄う少女 YU-NO(PC、SS/エルフ)

 

   

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