てんかん
てんかんの定義
てんかんはさまざまな原因でおきる慢性脳疾患で、大脳神経細胞の過剰発射に由来する反復性発作(てんかん発作)を特長とし、
それに関連した多種多様の臨床及び検査所見を伴う。
(1973 WHOの定義)
てんかん(症候群)の原因別分類
@特発性 原因不明 年齢に関連して発病
A症候性 脳の病気が原因 出産時の障害、脳奇形、など
B潜因性 症候性てんかんの可能性があるにもかかわらず、明らかな基礎疾患がなく、検査でも異常が認められない
C家族性 生まれつきの遺伝子が関係している
てんかん及びてんかん症候群の分類 1989(清野昌一・八木和一監修 てんかんテキストより)
局在関連性(焦点性・局所性・部分性)てんかん及び症候群
1.突発性(年齢に関連して発病)
・小児良性ローランドてんかん(中心・側頭部に棘波をもつ良性小児てんかん)
・後頭部に突発波をもつ小児てんかん
・原発性読書てんかん
2.症候性
・Rasmussen症候群(小児の慢性進行持続性部分てんかん)
・特異な発作誘発様態をもつてんかん
・側頭葉てんかん
・前頭葉てんかん
・頭頂葉てんかん
・後頭葉てんかん
3・潜因性
全般てんかん及び症候群
1・突発性(年齢に関連して発病 年齢順に記載)
・良性家族性新生児けいれん
・良性新生児けいれん
・乳児良性ミオクロニーてんかん
・小児欠神てんかん(ピクノレプシー)
・若年欠神てんかん
・若年ミオクロニーてんかん(衝撃小発作・ヤンツ症候群)
・覚醒時大発作てんかん
・上記以外の突発性全般てんかん
・特異な発作誘発様態をもつてんかん
2.潜因性あるいは症候性(年齢順)
・West症候群(乳児けい縮発作-infantile
spasms・電撃・点頭・礼拝けいれん)
・Lennox-Gastaut症候群
・ミオクロニー失立発作てんかん
・ミオクロニー欠神てんかん
3.症候性
@非特異病因 ・早期ミオクロニー脳症
・早期乳児てんかん性脳症(大田原症候群)
・上記以外の症候性全般てんかん
A特異症候群
焦点性か全般性か決定できないてんかん及び症候群
1.全般発作と焦点発作を併有するてんかん
・新生児発作
・乳児重症ミオクロニーてんかん
・徐波睡眠時に持続性棘徐波を示すてんかん
・Landau-Kleffner症候群・獲得性てんかん性失語(てんかん失語症候群)
・上記以外の未決定てんかん
2.明確な全般性あるいは焦点性のいずれの特徴をも欠くてんかん
特殊症候群
1.状況関連性発作(機会発作)
・熱性けいれん
・孤発発作あるいは孤発てんかん重延状態
・アルコール・薬物・子癇・非ケトン性高グリシン血症などによる急性代謝障害や急性中毒際にみられる発作
てんかん発作の国際分類
<全般発作>
脳の異常放電が両側の大脳半球全体から動じに始まる発作。発作の始まりから意識を失い、けいれんを起こす場合は左右対称
意識が完全になくなり動きが止まる欠神発作というのもある
@欠神発作
覚醒時にみられ、意識障害を起こして動作が停止する発作
レンノックス症候群では数秒〜20秒程度の短い非定型欠神発作(発作の発現と終わりが揺るやか)がみられる
Aミオクロニー発作
四肢や首にみられる、急激な筋肉の収縮(ピクつき)でコップを手から落としたり頭をテーブルに打ち付けたりする
乳児重症ミオクロニーてんかん(SME)は、有効な抗てんかん剤が今のところなく、しばしばミオクロニー発作の重積状態を呈する
B間代(かんたい)発作
全身及び四肢の筋肉がガクンガクンと反復性の屈曲性けいれんを起こす
C強直発作
全身及び四肢の筋肉を強直させる発作で、発作の発見時に一過性に呼吸を止めてチアノーゼ(唇や爪が青紫色)が見られることが多い
レンノックス症候群では、短い強直発作(tonic
spasms)の合併が多くみられる。
全身を強直させて頭部を前屈し、両上肢を挙上させ、眼球が上転する数秒〜30秒程度の発作、立位時には発作のため転倒してしまう
D強直間代発作
強直発作で始まり、その後間代発作へと移行していく
発作の持続時間は5〜10分程度で、発作後に疲れて入眠する場合が多い
E脱力発作(失立発作)
姿勢を保持している筋肉が突然脱力する発作で、立位や座位時には転倒して顔面や頭部を打撲してしまう
発作が多い場合には外傷を防ぐためにヘッドギアの装着が必要
レンノックス症候群では、前述した非定型欠神や短い強直発作の他に、脱力発作を合併していることがある
<部分発作>
@単純部分発作
@運動発作(大脳皮質の運動領に発作焦点があるとき)
・ジャクソン発作 (ex 右の拇指がぴくぴくとけいれん→前腕→上肢→同側の顔面へと移動)
・左口角および顔面のけいれん
・右、左手のけいれん
・右への眼球間代発作・頭を回転させる
・体を1〜2回転させる旋回発作
A自律神経発作(自律神経症状のみを一過性・発作性に呈する 側頭葉関連焦点がある)
・上腹部不快感・臍周囲や心窩部の疝痛発作
・腹鳴
・嘔吐
・排ガス
・排便
・顔面蒼白または紅潮
・動悸
・血圧上昇または低下
・呼吸促迫
・過呼吸、尿失禁
B感覚発作(大脳皮質の感覚領野にてんかん焦点があるとき)
・身体感覚発作 (身体のある部分にチクチク・ピリピリ・ヒリヒリなどしびれに似た感じ)
・視覚発作 (輝、閃光などが見える 眼がかすむ 多様な形のものがみえる 半盲 全盲・眼が見えない・暗くなるなど)
・聴覚発作 (音が低音になる 聞こえない 強く響く など)
・嗅覚発作 (妙な、不愉快な、あるいは硫黄の嗅・臭がする など)
・味覚発作 (苦味、酸味、塩味など異常味覚を発作性に感じる など)
・眩暈発作 (体全体が動揺したり、周囲の回転などを感じる など)
C精神発作(多くは側頭葉から 意識が無くなっては、複雑部分発作と共通する)
・幻覚発作 (無い物が見える 既視体験 未視体験 など)
・錯覚発作 (有る物を異なって見る 物が大きく見える・巨視症 小さく見える・小視症 距離が近く見えたり遠く見えたりするなど)
・感情発作 (不安 恐怖 抑うつ 離人症 不機嫌状態 空しさ 怒り など)
・言語障害発作 (無言など)
・記憶障害発作 (健忘など)
・認識発作 (無反応など)
<複雑部分発作>
意識が朦朧として、突然激しく動いたり、口をもぐもぐさせたり、意味なく歩き回ったりする
1回の発作でも、最初は部分発作であったのが全般発作に移行していくこともある(二次性全般化)
参考;重症児のQOL マザーグース通信