京都宇治訪問記

 

2023/05/14

 

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先週は所要で関西に行き序に京都の宇治を訪問しました。

 

宇治平等院鳳凰堂

十円玉でおなじみの名所です。これは藤原摂関家全盛時に造られたものです。修学旅行生や外国人など

の旅行者で賑わっていました。私に興味があるのは何よりその名に「平等」という言葉が入っている事

でした。自宅に帰ってから友松円諦著「仏教聖典」を開いてみると確かに「四姓平等」という章があり

ました。四姓とはバラモン、クシャトリア、バイシャ、スードラのインドの四カーストです。即ち社会

の階級に関わらず万民平等の思想を釈迦は説きました。遥か2500年も前にこのような思想を明明白白に

説いていた釈迦牟尼には驚きますが、藤原家全盛時に藤原頼道がどうしてこの名を採用したのか興味あ

る所です。

 

源氏物語museum

鳳凰堂から宇治橋を渡ると近くに源氏物語museumがあります。源氏物語は当時から朝廷の中で大評判

になっていたようです。今では世界的にも有名な文学作品ですね。

 

私達は高校の古文で源氏物語を学びました。私は光源氏の万能の貴公子、Playboyぶりに反発を覚えま

した。改めて考えなおすとこれは古代の平等な母系制社会から不平等な家父長制社会への過渡的な状態

を示していると思います。

 

農業が始まったばかりの頃は原始の群婚を引き継ぎ母系制の平等社会でした。群婚では母系にならざる

を得ませんから。財産は母から娘に引き継がれ、男は昼間は生まれた家で働き、夜は好きな女の家に通

います。女に飽きれば男は通うのを止めればよく、男に飽きれば女は男を出入り禁止にすればよろしい。

生まれた子は母の家で育てます。男はある程度年を取るとどこかの家に婿入りします。すなわち妻問婚、

婿入り婚の母系制社会です。これは誠に自然で自由平等な社会ですが現在は殆ど残っていません。但し

明治の頃まで日本各地に残っていた夜這いはその名残ですね。

 

農業の始まりは私有財産と貧富の差を生じました。同時に共同作業の必要からより緊密な、より大きな

村が生まれ、土地と水を巡る近隣の村との争いの為に戦いの指導者が必要となり、それが世襲化して社

会が階級に分裂しました。それと同時に社会の権力が女から男に移りました。

その過程は日本神話においてよく表されていると思います、天照大神が最高神とされる高天原は原始の

母系社会を表しています。それは大事な事は八百万の神が集まって決定する民主社会でした。そこでは

天照大御神も働いています。それに対する男の反乱を表すのが弟のスサノオです。高天原で乱暴を働き、

そのために天照が岩屋に隠れて世界が闇夜となりました。八百万の神の努力で天照を再び世に出すと同

時にスサノオを裁判にかけ、その肘を切って下界への追放刑に処しました。

 

古事記は大和朝廷による全国統一の様子を語っていますが、そこに活躍するのは男、しかも武力に勝れ

た男です。それに対して源氏物語の世界は既に社会が完全に階級に分裂し、権力は男が握っている貴族

社会が舞台となっています。以前報告した「とりかえばや物語り」では男として成長し、貴族として朝

廷に出仕し、大いに活躍した人が途中で生来の女に返り、女としての生活を始める話でした。その時彼

女が衝撃を受けたのは「男は外で活躍できるのに、女はただ男の訪れを待つしか無い」事でした。

 

源氏物語に出てくる姫君達に私は深い同情を覚えます。彼女達の非力は生産手段を持たない事が原因で

すね。男は朝廷の権力機構にぶら下がって上にへつらう出世主義が蔓延していました。このような体制

に見切りをつけた骨のある中流貴族、いわゆる受領階級の男たちは任地での任期が切れても京には戻ら

ず国司等として赴任した地方で現地の有力豪族に婿入りして土着しました。それは古代からの婿入り婚

制度には極めて自然な成り行きでした。

 

そう考えると伊豆に流された源氏の頼朝が現地の豪族北条時政の娘政子と恋仲になり、北条氏に支えら

れて平清盛に対して挙兵したのも古代以来の婿入り婚の延長と見る事ができるのではないでしょうか。

鎌倉幕府は頼朝が死ぬと直ちにその実権が北条氏に移ったのも理解できます。

 

歴史を辿ると学ぶ事が無数にあります。私が源氏物語から学ぶのは「人は、特に女は確り学んで自立せ

よ」という事です。

 

京都駅からJR奈良線に乗ると沿線には到る所名所あり。のどかな地方線の列車に乗るだけでも何かしら

ほっとします。紫式部も宮中を退職後は宇治に引っ込んで源氏物語の続編,宇治十帖を書いたようです。

 

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