訂正と捕捉 Re: 双子の逆説、浦島太郎効果について一考
昨日の通信の内容に間違いがありました。
以下訂正します。
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Lorentz変換
二つの観測系KとK’がありK’はKに対してx軸方向に速度vで等速に移動しているものとします。
観測系KとK’の時間及び空間座標をそれぞれ(t,x), (t’,x’)とします。光の速度はK系でもK’系でも
一定であるという光速一定の原理に基づいて両者の間には次のLorentz変換が成り立ちます。
x’ = (x –v.t) / √(1 - (v/c)^2)
(1)
t’ = (t – v/c^2.x ) / √(1 - (v/c)^2)
(2)
y’ = y
(3)
z’ = z
(4)
及び
x = (x’ + v.t’) / √(1 - (v/c)^2)
(1)’
t =
(t’ + v/c^2.x’ ) / √(1 - (v/c)^2)
(2)’
y = y’
(3)’
z = z’
(4)’
上の(1) - (4)と(1)’- (4)’は数学的には同等ですが物理的な意味が少し違うと思います。式(1)-(4)におけ
る独立変数は t,x,y,zでありt’,x’,y’,z’はそれらの関数です。独立変数tとxはK系において時間と
空間が独立している事、静止系Kで起きている現象をK’系で観測したら時空が関係し合って4元ベク
トル(t’,x’,y’,z’)になる事を示しています。
[捕捉]
観測者の近傍では時間と空間は独立ですが一般には世界は両者を含めた四次元連続体(four-dimensional
continuum)であるとされます。
典型的な例は宇宙観測です。何万光年も遠方の天体の観測象は実は何万年もの過去の姿です。このよう
に世界は時間と空間が不可分の関係にあります。
通常人間は静止系KにおいてK’系における運動体を観測しますので公式(1)’-(4)’を使います。する
と色々と面白い事が分かります。
[1] 運動体の空間は運動方向に縮む
式(1)’-(4)’を変化量で表すと
△x = (△x’ + v. △t’) / √(1 - (v/c)^2)
(1)’’
△t = (△t’ + v/c^2. △x’ ) / √(1 - (v/c)^2)
(2)’’
空間の観測は空間の二点を同時に測定しますので△t = 0
△t = (△t’ + v/c^2. △x’ ) / √(1 - (v/c)^2) = 0
これより
△t’=
- v/c^2. △x’
これを(1)”に代入すると
△x = √(1 - (v/c)^2). △x’
[捕捉]
式(1)’’において△t’ = 0と置くと
△x’ = √(1 - (v/c)^2). △x
即ち上と反対の結果になります。私が思うに上の一見矛盾に見える事の意味は「静止系で見ると移動体
は運動方向に縮み、運動体から見ると静止系の世界は運動方向に縮んで見える」事だと思います。
[2] 運動体の時間は歩みがゆっくりになる
今度はK系に静止している観測者が観測するので
△x =
0
とします。すると上と同様の計算により
△t = √(1 - (v/c)^2). △t’
[捕捉]
式(2)’’において△x’= 0と置くと
△t’ = √(1 - (v/c)^2). △t
即ち上と反対の結果になります。静止系で見ると移動体の時の歩みは遅くなり運動体から見ると静止系
の時の歩みは遅くなります。
[3] 運動体は重くなる。
詳細は省きますが静止質量moなるものが速度vで運動するとその質量は
m = mo / √(1 - (v/c)^2) > mo
[4] 運動体のエネルギーEは
E= mo.c^2 / √(1 - (v/c)^2)
(=) mo.c^2 + 1/2mo.v^2 (v/c <<1)
第二項は高校の物理で習う運動エネルギーですが第一項は静止energy, かの有名なアインシュタインの
公式です。
上の理論的結論は何れも実験的にも確立しています。実際にジェット機に時計を載せて飛行させた後に
地上に静止していた時計と比べると飛行体の時間の遅れを確かめる事ができます。アインシュタインの
エネルギー公式は実際に原子炉や原子爆弾の理論的基礎です。
双子の逆説
双子の弟はK系に静止し兄は宇宙旅行をして帰って来たら弟の方が年を取っています。日本人には浦島
太郎の方が分かり易いので浦島効果とも呼ばれます。これは上の
△t = √(1 - (v/c)^2). △t’
です。兄は時間△t’かけて早さvで宇宙をぐるりと回って地球に帰ってきたら旅行にかかった時間は
△tだけだった。
△t/△t’=√(1 - (v/c)^2) < 1
その時地球では既に時間が△t’ 経っていたので弟の方が年寄りになってしまうわけです。
[訂正]
上は明らかに間違いですね。それでは兄弟は同じ年齢になってしまいます。
使うべき式は上とは反対の △t’ = √(1 - (v/c)^2). △t でしょう。兄は時間△t’の間宇宙旅行をし
て懐かしの地球に帰ってきたら地球では△t = △t’ / √(1 - (v/c)^2) > △t’ なる時間が経って
いた。
これは逆説と言われるように分かりにくいですね。上では弟が静止し兄が宇宙をぐるりと移動してきた
のですが相対的に兄から見ると自分が静止してその間反対に弟が移動してきた様に見える筈です。一体
相対性原理はどうなったのか。
実は兄弟の間には決定的な違いがあります。弟がずっと静止していたと主張できる根拠はその間加速度
を感じなかった事です。加速度aが質量mにかかると力f=m.a になります。弟は静止していた(等速直
線運動をしていた)ので全く外力を感じなかったのに対して兄はぐるりと宇宙を回って旅行をしたので
その間ずっと加速度が加わり力を感じていました。
ここからは単なる直観ですが外から加わる加速度即ち力を感ずる方が移動系であるとすると常に地球の
重力に引かれている地球人は重力による時間の遅れを受けているのではないかと思います。実際高い建
物の下と上に正確な時計をおいて時間のずれが実験的に検出されているそうです。
宇宙に於いて重力が極端に強いのがBlack holeです。Black holeに落ち込む物を遠くから観測すると
Black holeに近づく程、時の歩みが遅くなり最後は止まっているように見えると思います。
詳細を知るには一般相対性理論を用いる必要がありますが残念ながら私は全く無知です。この道に詳し
い方がおられたら解説をお願いします。
あと書き
相対性理論は論理的にも実験的にも確立されていますが時に解釈を間違い易いものです。岩波文庫
「アインシュタイン 相対性理論」のp58で本人が「くれぐれも慎重にしなくてはならない」と述べて
います。おそらくアインシュタインがベルン時代に友人と定期的に行っていた研究会でLorentz変換に
ついても随分議論していたのでしょう。その研究会にはOlympia Academyという立派な名称を冠して
いましたが今から思うとその名に恥じない学問の場でした。詳細については下記URLをご覧ください。
アインシュタインは大学では教師に受けが悪かったので卒業後思うように就職ができず、友人の父の紹
介でやっとベルンの特許局の審査官の職にありつく事ができました。この間に行ったOlympia academy
は彼等にとって又とない学問の場であったと思います。仮にアインシュタインが大学の助手にでも就職
していたなら仕事に追われてあの偉大な業績は上げられなかったかも知れません。
大学では教師に受けが悪かったアインシュタインですが、1905年に特殊相対性理論が発表されると直ぐ
にその幾何学的理論としてミンコフスキー空間論をその大学時代の教官の一人H. Minkowskiが提唱し
ました。 https://en.wikipedia.org/wiki/Hermann_Minkowski
おそらく授業の中等で何となくこの問題について相通ずるものがあったのではないでしょうか。
Olympia Academyではアンリ・ポアンカレの「科学と仮説」も議論したそうです。ポアンカレも独自の
考察によってLorentz変換と全く同じ公式に到達していましたので相対性理論について色々議論したに
違いありません。当時の物理学の基本的課題であったエーテル仮説の矛盾についてOlympia academyを
通じてアインシュタインは十分に考察した筈です。それが高校レベルの数学しか使わずに「物理学の暗
雲」を一挙に吹き飛ばし同時に電磁気学に新たな展開をもたらした論文「運動体の電気力学」の完成度
の高さに現れています。
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+ 市吉 修
+ 二十一世紀を楽しく生きよう会
+ HP ; http://www5e.biglobe.ne.jp/~kaorin57/
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