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し研究する会です。研究しながら理想の二十一世紀世界を実現しましょう。

 

近代医学

は感染症の原因が細菌やウィルス等の病原体である事を明らかにし、免疫学の進歩により天然痘、

ペスト、コレラ、赤痢、小児麻痺、結核、らい病等の重病の脅威は随分低下しました。近代医学の進歩

は誠に目覚ましくその恩恵は測り知れませんが、その基本的思想は「人は動物と同じく自然の一部であ

り、医学は自然科学である」というものであると思います。

 

従来の健康観

近代医学の思想に基づき次のようなものだと思います。

人は成長が止まると成人病の危険が増す。老化は自然の成り行きであり止められない。人の脳は毎日数

万の細胞が死滅し、そのため知力の低下は避けられない。Entropy増大の法則のように人間も時の流れ

に逆らう事はできない。

 

上の健康観は老化に対して人を深い不安に陥れていると思います。日本は平均寿命は世界最高水準にあ

りますが、健康寿命は10年近く短く、多くの人が病を抱えた老後をおくっています。少子高齢化が進行

し人口が減少している現在、それは個人の健康問題であるだけでなく社会的には福祉財政等の問題も避

けて通る事はできません。

 

新たな健康観

成人病は名称が不正確であり生活習慣病に改めるべきである。この改称を推奨したのは日野原重明先生

であったと聞きました。日野原先生は105歳の長寿を全うされ数年前に亡くなりました。この改称は新

たな健康観を端的に示していると思います。

かって日本の国民病であった結核はBCG接種と栄養の改善で克服されました。代わって日本の国民病と

言われた胃癌や脳卒中も冷蔵庫の普及により塩分摂取が抑えられて減って来ました。かっての国民病と

して日本は胃癌と脳卒中、米国は心臓病、フランスは肝臓病などと言われたのは病気が生活習慣に起因

するものである事を示しています。今回の新型コロナ禍でも国により雲泥の差があるのはその表れでし

ょう。

更に人の病気の原因は生活習慣上の心身の歪(stress)にある。医学は人の体の治療はするが病の根治のた

めには当人がその原因となった生活習慣を改める他には無い。

 

脳の可塑性

Norman Doidge, The Brains’Way of Healing

高橋洋訳、 脳はいかに治癒をもたらすか、紀伊国屋書店

この本には慢性疼痛、パーキンソン病、小脳の一部が欠損して生まれた先天的障害を負った人、種々の

原因の為盲目になった人等が脳の可塑性、即ち柔軟な成長性を活用して克服し、正常な日常生活を送り、

仕事をしている例が紹介されています。私はまだこの本を半分読んだだけですが次の感想を抱いていま

す。

脳は前述のように成長後は一方的に衰えるものではなく、一生を通じて柔軟に成長しうるものである。

その要点は脳を使う事にある。脳を使うと脳内に神経回路が新たに形成される。逆に使われない回路は

衰える。脳と体は一体であり、脳を使う事は体を使う事、即ち運動である。逆もまた然り。

 

この本を読みながら先週日曜日のNHK specialを思い出しました。米国の車いすマラソンの女子選手で

す。彼女は100mから車いすマラソンまで全種目8個の金メダルを来年の東京パラリンピックで狙える

位置にあるそうです。

実は彼女はロシア生まれで先天的に足が未発達で脊髄が露出した状態で生まれ、両親は子育てを断念し

て孤児院に預けたのだそうです。孤児院で彼女は足の代わりに逆立ちして手で移動する事を自然に覚え

ました。階段も平気で上り下りしていました。後に彼女は米国の養親の下で成長して以前からパラリン

ピックの米国代表になっています。

彼女の脳では足を制御する領域と手を制御する領域が合体して常人より細かな車いす制御ができるのだ

そうです。このように脳は訓練によって柔軟に新たな神経回路を形成して成長するものである事が示さ

れていす。

 

実は私も世の中には耳を動かせる人がいると聞いて自分もやってみました。最初はできなかったのです

が、しばらくやっているとできるようになりました。これも脳内に新たな回路が形成されたのでしょう。

私には想像もできない音楽家や運動選手等の複雑な動きもすべて脳内に神経回路網ができているはずで

す。その場で臨機応変に変える事もありますので脳内の神経回路網を使用する働き、統合機能が何なの

か興味ある所です。それはComputerMultitaking OSを思わせます。私のPCは今インタネットに接

続してemailの機能とこの文章を作成する機能を並行して実行していますが、私は内容を考えつつ文字

を打つ、読み返して訂正するなどの作業を行っています。行き当りばったりを楽しんでいます。

 

ちなみに上述の脳神経の可塑性を利用する学習は強制してもうまくいかず、あくまで自発的に行う事が

必要だそうです。

 

人が生まれてから成長する過程、這う事から立ち上がり歩く事、言葉の習得などは当たり前と思われて

いますが、孫達を見ているとそれは無数の失敗と努力の上に獲得される能力であると考えられます。孫

達は靴を履く時左右を間違える事がよくありますが、今まさに左右を学びつつあるところです。またお

絵描きが好きですが、最初は単に紙上に色をなすりつけるだけでしたが、やがて線を引き更にまるを描

く事ができるようになりました。描いたものについて聞くと色々説明してくれます。聞くと私もなるほ

どと納得します。

孫達は遊びながら全く頓珍漢な会話をしている事がよくあります。言葉の特長は現実の枠を超えて考え

る事を可能にする事、人を現実の枠から解放する事だと思います。それは人の中に人の人たる心が形成

される事ではないでしょうか。

 

野生の象は乾季には水を得るために高齢の雌像に導かれて特定の地に到り、地面を掘って水を得ている

そうです。高齢の雌像は長年の経験を記憶しているのですが、その記憶が活用されるのはその必要が生

じた時です。

 

これに対して人間は未だ水不足が起っていない時にもその可能性を想定して対策を講じる事ができます。

言葉そのものは脳内の神経回路に記憶されますがそれを任意の時に発火させて思考する事が人の特長で

す。

従来Alzheimer病は回復不可能とされていましたが東北大学の川島隆太先生は80歳を超えた患者を回復

させています。その手段は本の朗読だそうです。朗読は脳の広汎な部位を活性化するそうです。

Alzheimer病から回復したお婆さんの話によると、病気の間も回りで起きている事はすべて分かってい

たそうです。ただ自分から何かする事ができなかった、即ち自発性の欠如がこの病の特徴でした。それ

は鬱病などの他の病についても言えるのではないでしょうか。

 

言葉は何より人と人との対話の手段です。思考は自己との対話ですね。人の語源は一つであり世の語源

は四と同じではないでしょうか。人という言葉は自分にも他人にも使われます。英語のOne, フランス

語のOn, スペイン語のUnoについても同様です。

古代ギリシアの哲学者アリストテレスは人間は社会的な動物であると言いましたが、蟻や蜂に止まらず

多くの鳥や動物もそれぞれの社会に生きています。それどころか粘菌などの原始的な生物も乾季には集

合して群体を成し胞子を生成して子孫を残します。ある種の魚は群れの一匹だけがオスで他はすべてメ

スですがオスが死ぬとメスの一つがオスに性転換するそうです。こう考えると生命は本質的に一つの全

体であると言えるのではないでしょうか。

 

度重なる自然災害、今回の新型コロナ禍での問題の一つは人の孤立です。人の本質は自発的に行動して

人とつながる事です。個人の健康は社会の健康と不可分です。新たな健康観を健康生活に活かしていき

ましょう。

  人生大道

人は違いを受け入れて 己が道を歩むべし

いかなる道を歩むとも 進まば世界が広がらむ

おのおの異なる地にありて 遍く道を求むれば

道はつながりて大道となり 人は行き交いて共に生きむ

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* 市吉 修   Osamu Ichiyoshi                   

* 二十一世紀を楽しく生きよう会                   

* Human Network for Better 21 Century     

*  http://www5e.biglobe.ne.jp/~kaorin57/

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