生活の自然哲学()

2021/02/06 14:34

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静止と運動

前回の通信で極微の世界では物は静止すれば粒子、運動すれば波として作用する事を報告しました。更

に粒子の位置と運動量の間には不確定性原理があり、極微の粒子には絶対的な静止も無い事になります。

従って極微の世界の現象では決定論は成立しません。但し粒子の運動の確率は波動関数により厳密に決

定する事ができます。

 

巨視的世界においても物の静止と運動の間には驚くべき関係があります。日常生活でも曲がり角を高速

で移動すると遠心力を感じますし洗濯機では洗濯物の脱水に遠心力を用いています。静止している観測

者には存在しないのに円運動をする観測者には現存する遠心力とはなかなか不可思議なものです。

 

光とエーテル

光が波である事は反射、回折(物体の後ろへの回り込み)の現象から明らかです。早くも17世紀にオラン

ダの科学者C.Huygensは光の伝搬について有力な仮説を確立しました。以下Wikipediaより引用;

「ホイヘンス=フレネルの原理によると、前進波の波面の各点が二次波とよばれる新しい波の波源とな

り、全体としての前進波は(既に伝播した媒質から生じる)全ての二次波を重ね合わせたものとなる。」

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%82%A4%E3%83%98%E3%83%B3%E3%82%B9%EF%BC%9D%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%81%AE%E5%8E%9F%E7%90%86

これは水面の波の観察から納得できますが問題は光を運ぶ媒質が何かという事です。その名はエーテル

(ether)と呼ばれましたが、それは宇宙全体、真空をも充填し、しかも物体の運動の邪魔を全くしないも

のです。あるとしたらEtherこそ絶対静止の空間そのものになります。

 

ところが太陽の周りを高速で公転している地球の対ether速度を測定したマイケルソン・モーリーの実

(1887)によりそれは零であるとの結論が出ました。言葉を変えると真空中の光の速度は観測者の運動に

関わらず常に一定であるという事です。

 

この実験に対してオランダの物理学者A.Lorentzether中を運動する物体は運動方向に縮む事、更に

は時の流れが遅くなる事を仮定して静止系と運動系の座標 (x,y,z,t) (x,y,z,t)の間に成り立つ関

係、Lorentz変換を確立しました。

 

特殊相対性理論

上の問題に明快な解決を与えたのはA.Einsteinによる1905年の論文「運動体の電気力学」です。 

     岩波文庫 「アインシュタイン「相対性理論」内山龍雄訳・解説」

この論文は高校レベルの数学しか用いないのに正に画期的な成果を確立しました。もはやEtherは全く

出てきません。ここで使われている唯一の仮定は「真空中の光速は観測者の運動状態によらず一定であ

る」という光速不変の原理だけです。

 

今静止系Kの座標(x,y,z,t)に対してx方向に速度vで移動している運動系K’の座標を(x,y,z,t)

としますと両者には次のLorentz変換が成り立ちます。

  x = β(x v/c.ct)    (1)          x   = β(x’  + v/c.ct’)    (4)

    ct = β(ct + v/c.x)    (2)                  ct  = β(ct -  v/c.x’)    (5)

    y = y,  z = z      (3)                  y = y’,  z = z’      (3)

但しβ= 1/ (1- (v/c)^2)  c;光速

上式において速度vによりKàKとすると速度の方向の逆転và-vによりK’àK変換となるので完全に

相対的な関係です。

K’系に於いてx2’ – x1’ = L’例えば長さL’の棒をK系でt1=t2に観測するとx2 – x1 = (1- (v/c)^2)L’

となり長さが縮みます。同じくK’系において異なる時間間隔t2’ – t1’ = T’に起る事象をK系のx1= x2

て観測するとt2 – t1 = (1- (v/c)^2)T’となり時間がゆっくり進みます。

K’系において(x1’, ct1’)に起きた原因で結果が(x2’, ct2’)に生じた事象をK系で観測すると

その時間間隔はt2 – ct1  =β{t2’ –t1’  - v/c.(x2’ –x1’)}となり原因と結果の生じる場所の距離が大きい

場合にはその順序が逆転して観測されます。

この様に運動方向に相互の空間が縮み、運動系の時の流れがゆっくりになる、場合によっては原因と結

果の時間的順序が逆転して観測される等日常生活の経験からは理解困難な事が起る事が実証されていす。

 

速度の合成法則についても面白い結果が得られます。

K’系の原点から x’ = wx.t’ , y’ = wy.t’ , z’ = 0で広がる事象をK系で観測すると

  x = (wx + v) / ( 1+ v.wx/c^2 )t ,  y = √(1- (v/c)^2).wy / ( 1+ v.wx/c^2 )t,  z = 0

となります。速度については

  dx/dt =  (wx + v) / ( 1+ v.wx/c^2 ),   dy/dt = (1- (v/c)^2).wy / ( 1+ v.wx/c^2 ),   dz/dt = 0

となり、v/c << 1ならdx/dt =  wx + v,   dy/dt = wy ,   dz/dt = 0 に帰着します。

 

私が興味を持つのは光の伝搬、v = cの場合です。この時dx/dt = c,  dy/dt = 0となります。この事はホ

イヘンスの原理による光の伝搬において光は直進する事、及び後ろ向きの二次波は生じない事を示して

いると私は考えています。

 

Lorenz変換を電気力学に適用すると更に興味深い結果が得られます。静止系に於いて電界E, Bがあり、

そこを電荷qの粒子が速度vで運動するとします。K系からK’系へのLorenz変換により

(Ex’, Ey’, Ez’ ) = ( Ex, β(Eyv.Bz) , β(Ey + v.By) )

となる事が示されます。これにより電荷qには次の力fが発生します。

   f = q. (Ex + βv x B ) = q. (Ex + v x B )  (if v/c << 1)

上のv x Bは静止系には存在しないのに運動系には存在する電界に当たります。これは高校物理で習った

Lorentz力です。電気技術者にとっては出発点となる基礎的なLorentzの法則は実は特殊相対性理論効

果だったわけです。

以上よりA.Einsteinの画期的な業績はA.Lorentzの広汎な先駆的研究の上に成り立つ事が分かります。

 

この論文は更に移動系における物の質量mは静止時の質量moに対してm=βmoとなりエネルギーW

W = m.c^2 = mo.c^2 + 1/2mo.v^2+,,,となる事を教えています。

 

生活の自然哲学

上の自然哲学から何を学ぶ事ができるでしょうか。

先ず学問は先人の業績の上に積み重ねて行く人類共通の財産である事です。多くの宗教や独断的な人は

とかく 万物は、万人は、永遠の、唯一の、全能のなど実証されようが無い形容詞を用いて我田引水的

な主張をしますが、科学者はもっと謙虚です。どんなに壮麗な理論体系でも事実に合わなければ捨てら

れます。上のEtherはその典型です。

 

ナチスのアーリア民族優秀論とか大日本帝国の万世一系の天皇主権論に基づく皇国史観は国民を戦争に

駆り立てるのに極めて有効でしたが学問的には荒唐無稽なものである事は明らかで、当時の学者が何故

反対運動をしなかったのかは歴史の教訓とすべきではないでしょうか。同じ事は英米の黄禍論について

も言えます。今日の遺伝学に基づく人類学から見ればまさに愚か論でしたね。

 

私の理解では現代物理学でもまだ不可解なものがあります。光速一定の原理や粒子の位置と運動量に関

する不確定性原理、とりわけ静止系と運動系の区別です。地球を回る人工衛星については地球を静止系、

衛星を運動系として扱いますがその地球は太陽の周りを回転し太陽は銀河系の中を運行しています。有

名な双子のパラドックスについては静止系と運動系の区別に関して釈然としないものを私は感じます。

 

分からないものがあるのを不快に感ずる人はいつも不幸ではないでしょうか。学校教育に適応しすぎる

とそうなると思います。分からないままに仮説を立てて行動し、実践によってその仮説の妥当性を検証

するという科学的研究法を習得する事が大切だと思います。不確定な事が多い人生はそれ自体一つの仮

説かも知れませんね。

 

思考の限界

知らざる事は考えられず

一事を思わば余事は考えられず

考えるとは考えざる事なり

思考の限界を知りて

考えるべし。

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+      市吉 修 

+     二十一世紀を楽しく生きよう会

+     HP ;   http://www5e.biglobe.ne.jp/~kaorin57/

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