故郷の山々

2021/01/23 13:45

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しょう。

 

春眠不覚暁

の候となりました。夜の眠りが長くなり朝はつい寝坊してしまいます。季節は真冬ですが既に春が近づ

いているのを感じます。

 

故郷の山々

春が近づくと昔の事を様々に思い出します。正月に神奈川の自宅に帰った時昔の日記から抜き出した駄

作の中に故郷の山々と題するものがありました。

 

夜の八時の夜行に乗れば

故郷の山々

博多で夜行のえびの号に乗れば

十時頃にはもうえびの高原だ

 

翌朝にはもうえびの高原だ

行きつ戻りつよじ登る

 

ゆっくりと流れる車窓には

汽車の窓の外を眺めても

 

時折見ゆる民家の外には

故郷は遥か見ゆる筈もなく

 

果てしなく原野が続いている

ただ麓の町の灯が二つ三つ見ゆるのみ

 

突如視界が開けて

諦めて窓を閉めてまた外を見れば

 

眼下に見下ろす都城盆地は

寂しそうな自分の顔が映っていた

 

谷を埋むる濃い朝霧の下

時折汽車の放つ汽笛の音が

 

下りに入って急に速くなった

夜のしじまに苦しげに響く

 

列車が吉松駅に着く頃には

曇った日にそれは遠くまで伝わり

 

早くも霧は上がっていた

我家を守る母と末の妹に

 

見上ぐれば空の一角を占めて

複雑な思いをもたらした事であろう

 

霧島連峰が聳えている

このようにして私は福岡の学校に行き

 

列車の運行と共に

父は大阪方面に出稼ぎに行った

 

山は少しずつ形を変え

このようにして多くの人が故郷を離れ

 

やがて左右対称形になる頃には

様々な哀しみを味わった事であろう

 

列車は山田町に入り

そんな事は知らぬ気に

 

万ヶ塚そして谷頭駅に着く

汽車は幾つもトンネルを抜け

 

ここから眺むるおたこ、高千穂の峰は

都城盆地を去って行く

 

美しくもまた雄大なり

 

上は十年くらい前に書いたものですが、その経験はもう半世紀も前のものです。当時都城盆地に住んで

いた人は似たような感慨を持たれた事があったかも知れませんね。今はもう上の夜行列車はないのかも

知れませんが大学4年の間に福岡から帰省の度にした夜行列車の旅は懐かしい思い出です。

 

えびの高原、正しくは矢岳高原に入る前に列車は昨年大水害が起った球磨川沿いを走ります。急峻な谷

にへばりつくように人家は続き、所々に細長い丸木舟のような川舟が置いてあるのを見ると山育ちの私

にはまるで外国のように感じられました。球磨川は「幾歳故郷来てみれば、咲く花啼く鳥、そよぐ風、、」

の「故郷の廃家」で有名な犬童 球渓(いんどう きゅうけい)の故郷です。

 

上の光景にあるように早朝矢岳高原から都城盆地を見下ろすと盆地全体が濃い朝霧で埋まっているのを

見た時に日本神話の天孫降臨はここから来たのだろうと感じました。古事記に記された日本神話は世界

に誇れる我国の文化だと思います。外国の日本神話研究者で遺言により死後日本に骨を埋めた人もあっ

た程です。ただそれが明治維新以来神格化された天皇制による軍国主義の政策推進に悪用されたのが残

念です。ある時の旅で偶々座り合わせた人はこの地域の開拓農家の人でした。戦後の食糧難で食糧増産

の必要性を痛感し、この地域に入植されたそうです。上の詩にある時折見ゆる民家とはそういう開拓農

家だったのでしょう。自然に恵まれた日本国内の資源を疎かにして満州や蒙古に農民を送り込み現地人

の土地を強奪して匪賊という敵をわざわざ作った歴史を十分研究すべきではないでしょうか。幸いにも

日本国内には無尽蔵の自然資源がある。必要なのはそれを活用する人的資源だと思います。この地域は

温泉もあり、住めば良い所ではないでしょうか。この沿線はやたけ、おこば(大畑)、真幸(まさき)などの

味のある駅名やスイッチバック式の山岳鉄道が珍しくて一頃人気が高かったようです。

 

親しかりし

多くの人ぞ

今は無き

我が故郷に

聳ゆ山々

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+      市吉 修 

+     二十一世紀を楽しく生きよう会

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