差出人: OsI [osamu-ichiyoshi@muf.biglobe.ne.jp]
送信日時: 20121017水曜日 22:49
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RE: 北大植物園に思う大学の行き方

 

森さん、

今後の世界に民主主義以外の道は無いと考えています。世界中どこでも過去5,000年間の文明が階級社会であったのは交通通信の未発達と人間の思想の未熟によると思います。私は自由と平等は人間の本質であると考えています。数百万年前の人間の遠い祖先はチンパンジーやゲリラから分かれて環境の変動に適応して森林から草原に居住地を拡大し約10万年前に故郷のアフリカを出て全世界に広がって行きました。その原動力は人間の思考力です。具体的には言葉による思考と思想の交換、即ち対話の能力です。私には思考において人間が自由かつ平等である事は自明の事だと思えます。思考は既存の概念に基づき実践を通じて新たな概念を創造します。農耕と共に始まった文明社会が階級に分化し最終的に国家が成立したのは自然法則にも似た社会の法則でした。他人を支配するための人の組織は文明と共に発生しました。ひとたび出現するとそれは独自の法則により発展しました。その原動力は直接には階級社会の産物である人間の支配欲ですが根本的には社会の生産力です。原始の直接民主制から階級社会への移行は人間社会の根本的な変革でした。マルクス主義の用語で言えば階級闘争ですね。人間による人間の支配を正当化するために何処でも神を創造しました。古代エジプトから日本まで古代社会において支配者は太陽神の化身や子孫であるとされました。合理的な中国ではに支配者も人ではあるけれでも天命を受けて人間社会を支配する権利を授けられた天子であるとされました。新しくはつい200年前にも西洋の絶対主義王政の根拠として王権神授説が説かれました。誠に人間は自己の利益のためにはどんな屁理屈でもこねる動物ですね。しかしそれはとりもなおさず人間が自由にして平等な思考する動物である事を証明していると思います。

 

高度な情報社会の段階に達した現代は自由にして平等な人間がその能力を最も完全に発揮できると思います。通信網を通じて人が世界中で瞬時に情報交換ができる現在従来の階層組織は不要になっています。イミョンバク大統領の竹島上陸は同氏の人気挽回には全く役立たず、日本の尖閣国有化に対する中国のデモは一週間で鎮静化しました。なぜなら今日では各国の国民が直接交流して政治屋の影響力は低下しているからだと思います。私はそう遠くない将来に政治家という職業は消えるだろうと考えています。それは過去の皇帝、将軍、執権、管領、大名と同様です。それに代わって行政は基礎自治体(市町村)が担い国の機能は外交、防衛、立法、司法、国民福祉、全国規模の事業のまとめ、および膨大な過去の国債の償還作業に限られ、何れの段階においても民の直接関与、即ち直接民主制が主になると考えています。千兆円を越える日本の赤字、それほどひどくはないのに政治危機化しているEUや米国を始めとして殆どの国は累積財政赤字問題を抱えています。即ち従来の政治体制はもはや持続可能でなくなりつつあるという事でしょう。これからは日本の外交においても直接民間交流がますます主になるでしょう。私達は来週韓国ソウルで開かれる衛星通信学会に行きますがこれも一つの直接民間交流です。毎日国境を越える人の数と情報の量は膨大なものです。既に世界は実質的に一つの村に成っていると言えるでしょう。

 

従って私は既存の政治にはあまり興味がありません。石原氏や橋本氏とは話したいとも思いません。現在の高度な情報社会では人は決心すれば大概の事は直ちに実行できます。現に私達も急死した同僚の遺児のための奨学資金を始めたではありませんか。これは決意してから3ヶ月で最初の募金と送金を行う事ができました。後15年これを続ければあの子は立派に成人すると思います。私は毎週木曜日に近くの団地でアジア人の子供達の学習支援をしています。これは学校の先生達が9年前に始めたものです。私はまだほんの3年ですが私が子供達に与えるもの以上に得るものもあります。また私はUnicefとパレスチナ子供のキャンペーン、および東京大空襲訴訟団にささやかな支援をしています。これらの活動は全く自主的なもので支援する相手もまた自主的な組織や団体です。今日ではインターネットを通じて私達は自主的な活動が容易になり、自由にして平等な思考する動物である人間がその可能性を最大限に発揮できる時代ではないでしょうか。

 

市吉


From: Etsuro Mori [mailto:etsuromori@jcom.home.ne.jp]
Sent: Wednesday, October 17, 2012 1:54 AM
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Subject: RE:
北大植物園に思う大学の行き方

 

市吉さん

斎藤報恩会の斉藤さんも都城同人会の加藤さんも初めてうかがいました。使ったお金は十二分に生かされました。まさにBe Gentlemenをそのまま体現した人たちですね。

アメリカにはnoblesse obligeの精神で寄付をすることを生涯の目的としている人も多いようです。バンコクでも個人の名前のついた道路が多数あり、これは慢性的渋滞に悩む市民のために私財を投じて土地を買収し道路を建設し、交通の渋滞緩和を図るという全くの善意の寄付行為です。税制上の措置もあるかもしれませんが、プミポン国王に拝謁するというタイ人にとって生涯最大の名誉が与えられることがMOTIVEとなっています。

UCSFでの留学を終えた山中教授を日本で雇ったのは奈良先端科学技術大学院大学という長たらしい名前の国立大学法人ですが、税金が学問の向上に役立ったケースです。

市吉さんのご指摘のように民間が直接かねを出すことがベストです。ただし今あたらしい技術やベンチャーにかねを出す投資会社は日本にはありません。かねをだすのは経産省の外郭団体の産業革新機構ですが、最近ジャパンディスプレーへ(東芝・日立・ソニーの液晶製造部門を引き取った)2000億円出資したように誰が見ても政治的な決断であり、事業の将来は極めて多難、いずれ2000億圓は無価値になるでしょう。

 

尖閣問題のブログで日本は民主主義で全体主義の中国はいずれ内乱で自滅するという予言がありました。しかし日本の民主主義もかなり危なくなっています、財政的に。

チャーチルが民主主義がベストな政治形式だと言った、ということで調べたところ民主主義はワーストな統治形式という言葉を引用しています。はたして日本の民主主義も十分機能しているでしょうか。

チャーチル19471111日下院演説:It has been said that democracy is the worst form of governance except all the others that have been tried.

 

今の日本ではマジョリティがサイレントで、ノイジーなマイノリティ主導で国政が進められています。市吉さん政界で一肌ぬぎませんか。市吉さんのように誰とでも堂々と議論できるひとは少ない。都城をベースに国政に参加しませんか。九州に本来の民主主義の機能する九州人民共和国を作る。閣議はもちろんインターネットのTV会議で無駄な出張旅費はかけません。99歳の加藤さんには名誉大統領になってもらえばいいでしょう。

 

From: OsI [mailto:osamu-ichiyoshi@muf.biglobe.ne.jp]
Sent: Tuesday, October 16, 2012 10:41 PM
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Subject: RE: 北大植物園に思う大学の行き方

 

森さん、

まさにおっしゃるとおりです。

ただし政府がお金を出すべきだというのは言うは安く、行うは難しです。政府は圧力団体が多すぎて意思決定が複雑すぎます。政府が音頭を取って行った第五世代コンピュータ計画が良い例ですが鳴り物は大きかったけれども成果は殆どなく数年で計画は胡散霧消しました。リーダにすえられた淵一博さんはその後は大学教授に転任して活躍されたようです。http://museum.ipsj.or.jp/pioneer/fuchi.html

第五世代コンピュータの鳴り物が大きかった1980年台前半には実は通信網の革命が進行しつつありましたが私達は全く気づきませんでした。それはインターネットとその代表的な応用であるWebemail systemです。当時は電子交換機, 大型コンピュータ、その反対のMicro computerの出だしの時期であり、通信技術者として私はDSPを用いた通信方式の開発に忙殺されてPacket交換の事は一応知っていましたがその利点には全く気づきませんでした。

 

政府の決定は国内の力関係で決まり、その時最も力の強いものによって決定されます。ところがその時の強者は実は衰退期にあるものです。従って政府の言う事はすべて疑い、弱者、少数派の言う事にも耳を傾ける事が重要だと思います。その少数者の最たるものは各々の個人ですね。我々個人がよく考える事が最も大切な事だと思います。

政府が音頭をとる事業の最たるものが戦争です。まともに考えれば人が人を殺し、その土地や財産を奪うのは強盗ですね。戦争を遂行するのに使われた宣伝は今から見れば大半は荒唐無稽ですが恐ろしいのは当時の国民がそれを疑問に思わず信じていたことですね。ナチスの人種論、日本の国体論、イスラエルの建国神話はどれも科学的には根拠がありませんが今だに信者も大勢います。Bush大統領がアフガニスタンに戦争を仕掛けたときには米国人の支持率は何と80%でした。イラクに戦線を広げる時に使った「大量破壊兵器」、それが無いと分かると急遽唱えだした「中東の民主化」などの戯言は今も記憶に新しいところです。

 

政府に頼らない一つの道は民間の直接投資です。東北大学通信研究所はノーベル賞級(工学賞は無し)の研究成果を長年にわたって輩出しましたが、それは斉藤さんという富豪が遺言で財産を寄付されてできたものです。詳細は下記の記事をご覧下さい。

1924年(大正13年)、八木秀次、抜山平一、千葉茂太郎の三教授の「電気を利用した通信法の研究」に対し、財団法人斉藤報恩会から、巨額な研究費が補助されました。これにより、我が国で初めて、電気通信に関する研究が組織的に行われるようになりました。新進気鋭の渡辺寧、松平正寿、岡部金治郎、宇田新太郎、永井健三、小林勝一郎などが相次いで加わり、体制が整備されました。その結果、多くの研究成果を挙げ、多数の論文が内外の雑誌に発表されて注目を集めました。

http://www.riec.tohoku.ac.jp/syoukai/preface-j.shtml

 

米国はノーベル賞の受賞者の数でも抜群に多く、また電気のT.A.Edison、自動車のH.Ford, 最近ではPCB.Gates, S.Jobsなどの偉大な開拓者に満ちていますが、いずれも国家プロジェクトで育った人は少ないようです。米国には国立大学は無くHarvardStanfordなど最も有名な大学の大半は私立大学です。私が21歳のとき留学したDelaware州立大学で半年暮らした寮はBrown Hallでしたが学内の多くの建物にはMitchell Hallなどと人の名前がついていました。即ち寄付した人の名前だと思います。米国は国民の金融資産も銀行預金より株式が多いのではないかと思いますが日本は圧倒的に銀行預金ですね。その銀行は国債を買っていますので日本人は間接的に国にお金を預けているわけです。国は大きすぎて自分が納めた税金や国債を通じてあずけたお金がいかに活用されているのか確認が困難です。

 

私達はもっと直接的な投資をおこなうべきではないでしょうか。

先週私が出た都城同人会について報告します。

乾杯の音頭はもう直ぐ99歳の加藤信さんが取られました。まだ杖もつかずに歩き、声にも張りがあります。

この方がこの会を始められた方で時は昭和26年だったそうです。まず都城出身者のために寮を建てられたそうです。昭和33年にその寮を売ってできたお金で都城出身者のための奨学資金を作られ、既に約3,000名の人々がその奨学資金を借りて学業を終え、各界で活躍されているそうです。その育英会は今年公益法人になり、今年は約百人の学生に奨学資金を出しているそうです

 

直接投資が大きな効果を挙げるには確りした人間の確りした組織が必要です。上の都城奨学資金や斉藤報恩会が良い例です。株式会社もそのための組織です。その他大抵の大病院がそうであるように社団法人や組合、NPOなどもあります。個人が確りすること、次に人と人が協力することが社会の根幹だと思います。

 

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      市吉 修                                Osamu Ichiyoshi                         

二十一世紀を楽しく生きよう会  Human Network for Better 21 Century   

 http://www5e.biglobe.ne.jp/~kaorin57/

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From: Etsuro Mori [mailto:etsuromori@jcom.home.ne.jp]
Sent: Tuesday, October 16, 2012 3:25 PM
To:  

RE: 北大植物園に思う大学の行き方

 

市吉さん

いつも楽しくエッセイを拝読しております。

iPS細胞研究の山中教授の話ですが、私は研究者には潤沢な研究資金と潤沢な生活費を与えるべきと思います。古今東西、研究者は知的好奇心に導かれて研究を行うのであり、経済的な利益に惹かれて行うものではありません。しかし優秀な人材も十分な経済的なリターンがないと研究者という職業を選ぶことができないのではないでしょうか。貧乏な家庭に生まれたものが大学、大学院で学び、その後も不安定な生活の中で研究を続けるということは非常に困難な選択肢です。金持ちの子弟(例えばチャールズ・ダーウィンやJ.M.ケインズ)だけが学者になれるという社会では学問の発展はないと思います。モーツァルトは生涯貧困の中で苦しみながらも数々の名曲を生みましたが、もし十分な生活費があれば更に多くの名曲が生まれていたことでしょう。たしかに研究費の増額は現下の日本の財政上では厳しいですが、増税でなくとも役人の天下り関連費用などを削ることで捻出できると思います。

From: OsI [mailto:osamu-ichiyoshi@muf.biglobe.ne.jp]
Sent: Monday, October 15, 2012 12:58 AM
To:

Subject: 北大植物園に思う大学の行き方

 

配信無用の方はお手数ですが返信願います。本MLは会員の紹介により加入する会員の自主研究会です。返信または全員へ返信により意見交換をお願いします。二十一世紀企業研究会とは「人が全国どこでも学び、生涯現役で働ける企業」を提案し研究する会です。研究しながら二十一世紀企業を始めましょう。

 

札幌出張

先週は仕事で札幌に出張しました。

 

北大植物園を見学

時間が無かったので一箇所だけ、北大植物園を見学しました。そこは道庁のすぐ裏手にある森です。中に博物館や宮部金吾記念館、高山植物園などがあります。博物館等は内部の展示物ばかりでなく建物そのものが見ものです。すべて木造ですがしゃれた飾りがあります。札幌農学校の創立に関わったクラーク先生の出身地Massachuset州の影響もあるかも知れませんが、私はロシア風の印象も受けました。この植物園の入場料は400円です。普通の日なのに結構多くの人が見学していました。この植物園の入場料収入がいくらになるかは知りませんが、大学は持てるものを社会に還元してその対価を得ることにより財政の一助とするのは良い事だとおもいました。

 

北海道大学はクラーク先生が校則として決めた一条Be Gentleman!の伝統が感じられます。Gentlemanとは日本語では士であり士とは志を持った人だと思います。男も女も関係なく志のある人が士だと思います。志はなるべく高く持つのが良いのでBe ambitious! となるわけです。即ち大志を抱けです。それは今日の私たちにも大切な事ではないでしょうか。

北海道大学の新渡戸稲造等が創立した遠友学舎は大学に行けなかった一般市民に高等教育の機会を提供する夜学でした。それが終了したのは戦時中に軍事教練を拒否したからだそうです。

 

現在年に数回九大と北大が合同で一般向けの講演会を開いています。場所は東京です。毎回数百人の聴講者があります。

日本は世界に類を見ないほど財政が硬直化しており、各大学は生き残りのために一般社会に門戸を解放しつつありますがこれは本来の大学のあるべき姿だと思います。

 

今回ノーベル賞を受けられた京都大学の山中教授もiPS細胞研究所の資金集めに苦労されているようですが、私はその苦労が山中教授の研究に役立っているのではないかと思います。弟子たちが有期契約で身分が不安定なので正規雇用し安心して研究に集中させてあげたいと言われていましたが、それは一面真理で一面そうでもないのではないかと思います。政府から潤沢な資金援助があればかえって研究は停滞することもあり得ます。金の工面に苦労するのは即ち世の中の関わりであってそれは研究には却って有益な事もありえます。弟子達は限られた環境の中で必死に研究して学位をとれば大学や企業で就職の機会も増え、新天地で新たな研究が開ける可能性もひろがるのではないでしょうか。

 

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      市吉 修                                Osamu Ichiyoshi                         

二十一世紀を楽しく生きよう会  Human Network for Better 21 Century   

 http://www5e.biglobe.ne.jp/~kaorin57/

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