差出人: OsI [osamu-ichiyoshi@muf.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2013114月曜日 0:14
宛先:
'

件名: デフレに関する一考

配信無用の方はお手数ですが返信願います。本MLは会員の紹介により加入する会員の自主研究会です。返信または全員へ返信により意見交換をお願いします。二十一世紀企業研究会とは「人が全国どこでも学び、生涯現役で働ける企業」を提案し研究する会です。研究しながら二十一世紀企業を始めましょう。

 

デフレに関する一考

安部政権は成長戦略と称して金融緩和と2%インフレ目標なるものを掲げています。デフレ=不景気、デフレの反対はインフレというのは余りに単純な思考ではないでしょうか。金融は既に極限まで緩和されている事は私達の銀行預金の極小の金利が明白に物語っています。経済成長とインフレとは全く別物で物価ばかり上がって不景気という事もあり得ます。つい30年前まで経済学者がStagflationなる名称を捻りだした状態に長らく苦しめられた事を皆様はまだ覚えておられると思います。

 

デフレは経済成長の一面

企業や技術者は生産システムの改良に日々取り組んでいますので製品がますます便利になると同時に安価になるのは当然です。また日本が1980年代始めまで続いたInflation(見かけ上の経済成長、実は不動産バブル)から一転して低成長になり物価が安定したのは中国を始めとしてアジア諸国(BRICS)が世界経済の中で役割を大きくしてきた事から当然の事だと思います。何しろ日本の1/10と言った桁違いに安い人件費でしたから低価格の輸入品の増大によって物価が下がるのは当然だと思います。金額で見れば低成長かも知れませんが物価が下がる事は実質的には経済成長です。

 

前提

とすべきは上の単純な事実です。この事実を見ず金融緩和により政府がばら撒きをやって麻生氏の言う実需を喚起しても経済成長は起こらない事は過去の自民党の政策で何度も実証済みです。その結果は1,000兆円という目の眩むような累積財政赤字に明白に現れています。

 

政府の事業は必ず赤字となる。

今政府がAなる国債を発行して民間から資金を集めそれをばら撒いて事業をやったとします。それが所謂乗数効果で(1+a)*Aなる経済成長をもたしたとしましょう。税率をbとするとそれが税として政府に戻ると税はb*(1+a)*Aとなります。他方国債は時が来ると利子cを付けて償還しなくてはりません。従って政府の事業が利益を産むには (1+c)*A < b*(1+a)*A でなくてはなりません。すなわち b*(1+a) > 1+ c > 1. ここでbは税率ですから納税者としてはできるだけ低くしたいものです。高々0.1のオーダーでしょう。すると乗数効果は10倍程度なくてはなりません。乗数効果とは投資効率ですが期間内に投資の10倍の売り上げを達成する事は通常の経済活動では不可能です。政府が事業をやれば必ず赤字が累積する事は明らかではないでしょうか。

 

公共事業は国民経済のコスト

社会基盤、社会福祉、基礎教育、学問、立法、司法、外交、防衛等の公共事業は国民経済のコストであって税の範囲で毎年行っていくものだと思います。国民経済の主体はあくまでも国民であって政府ではありません。この思考が本末転倒している状態が政治屋ばかりでなく一般国民にまで及んでいるのが問題の根だと思います。

 

国民経済は本質的に成長する。

ある人がお金を使うのは基本的には自分に対する投資と見ることができます。例えば人が旅行に行って見聞を広げればその分が新たな創造であり、その人が使った旅費はそのまま国民経済の収入になっています。金額的にはある人の支出は別な人の収入ですので総和を取ると 国民総支出 = 国民総収入 です。そこで何が創造されたかと言えばその活動において国民が創造したもの、知識、経験、発明、発見、相互理解、生産方法の改善、新規産業の創造です。従って国民経済は本質的に成長するはずです。これは「人は努力する事によって成長する」という極く当たり前の事が社会の中で無数に重なりあって社会も成長するという事だと思います。

 

東日本大震災の復興に見られる傾向

政府に頼って復興しようとしても、煩わしい手続きばかりで中々うまく行かない場合が多いようです。NHK特集などを見ると地域住民が力を合わせて自力で復興しようとしている所はいち早く復興しつつある場合が幾つもあります。この時一つの特徴はインターネットを通じて全国から支援が寄せられている事です。その過程を検証すると地域の人々が大災害からの復興について深く悩みまた考えた事、地域住民が話し合を重ねて意志を統一して組織を立ち上げた事、地域の自治体や外部からの支援者と協力してできる事から事業を開始している事などが共通しているようです。

 

国民経済の成長の条件

上の事から経済成長の条件は以下のようにまとめられます。

[1] 個人の努力

[2] 人と人との協力、共通の目的を達成するための事業化、組織化

[3] 各人が責任を果たせる組織の運営

よく企業は人なり、と言いますが企業ばかりでなく如何なる組織も、ひいては国家も畢竟基本は個人です。個人本位の組織とは民主的な組織です。個人の自由の権利は各人に平等に与えられます。人は自由なればこそその行動に責任が生じます。こう考えると各人が責任を果たせる組織とは民主的な組織である事は明らかだと思います。組織における個人の権利はその果たすべき義務に応じて与えられます。この点は企業も国家もまだまだ未熟ではないでしょうか。権力の乱用と無責任がはびこってはいないでしょうか。国民は徒に国に頼って自らの努力を怠ってはいないでしょうか。自分の不幸を他人のせいにしていないでしょうか。

東北の被災地において地域住民が主体となって全国からの支援に支えられて復興を果たしつつある事は今日のインターネット時代には産業も政治も直接民主制が最も良く機能する事を表していると思います。

 

************************************************************

      市吉 修                                Osamu Ichiyoshi                         

二十一世紀を楽しく生きよう会  Human Network for Better 21 Century   

 http://www5e.biglobe.ne.jp/~kaorin57/

************************************************************