Overland Track

オーストラリア タスマニア クレイドル山セントクレア湖国立公園 1997/6/25-7/1

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クレイドル山とドーブ湖
オーバーランド・トラックの起点。タスマニアの南西部には自然のままの広大な未開地域がある。そこに立ち入るには川を遡るか、自分の足で歩くしかない。ここには整備されたトレッキング・ルートがあり、その一端に触れることができる名トレイルとなっている。
クレイドル山より
柱状の岩が積み重なったような独特の山容。トレイルから離れクレイドル山に登ってみる。季節は冬に入り、氷化した霜と雪が薄らと岩の上に乗っていた。南にはこれから歩いて行く大地が広がる。中央の山はバーン・ブラフ。
Waterfall Valley Hut
ルート上には無人の小屋が点々とある。オフ・シーズンのこの時期、トレッカーに出会うことも稀で、小屋でひとりということもあった。非常に良い状態で保たれていて、訪れるトレッカーの意識の高さがうかがえる。
Windermere Hut
森の中に木々に紛れてひっそりとある小屋。夜の静寂はどこまでも深く、ロウソクの燃える音が聞こえる。冬には時に氷点下にもなり、暖をとらずにいると張り詰めた空気に押し潰されそうになる。
トラック上のトレイル
とても雨の多い地域で、天候は安定しない。トレイルは泥濘になるところが多いが、ボードで整備されている部分もある。ぼくが歩いた6日間は、奇蹟か必然か、すべてよく晴れた。
氷化
タスマニアの最高峰Mt.オッサへ登る。基部の沢の日陰部分は凍って白くなっていた。ハイ・シーズンの夏季にはない静けさがトレイルを通して感じられ、ここならではの得難い印象を心に刻みつけた。ひとりで歩くに最高の季節だった。
Mt.オッサより
タスマニアは「もっとも謎を秘めた大地」とも喩えられる。標高1600m余りの最高峰からはその「タスマニアの半分が見渡せる」。視界には人工物は何も入らない。自然の広がりだけがある。これほどの場所は世界にもそうないだろう。
トレイルからMt.オッサを振り返る
日の当たらない南面は白かった。奇妙に伸びる木と朱を帯びた地草との対比が独特だ。日の短い冬は日中でも夕刻の愁いが感じられ、ワラビーやウォンバットたちも佇んでいる姿を見かけた。
ファーガソン滝
メイン・トレイルを外れたところには魅力的な湖や滝が幾つかある。流爆音を頼りに径を下ってゆくと、落差のある立派な滝が樹林の間に現れた。オーストラリア本土にはない自然がタスマニアには溢れている。
セントクレア湖
入り江になっている凪いだ湖面に、美しく風景を映す。この辺りに人が入るようになったのは最近のことだ。その遥か以前からこの風景はここにあったはずだ。これからもこの姿のままであって欲しい。
大木
大木のある森には自然の力強さを感じ、畏れを抱く。倒れた木も自然の一部として森が飲み込み、生命が循環する。人知の及ばない途方も無い時間とパワーがそこに渦巻いているのだろう。自然の強さを感じたトレッキングだった。

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