カナディアン・ロッキー〜理想の旅

カナディアン・ロッキー レスプレンデント峰3426m・Mt.テンプル3543m 1999/7/20-27
同行 ジョン、坂下

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エンペラー・フォール(バーグレイク・トレイル)
レスプレンデント峰のアプローチはチャリで90km走り、世界有数の名トレイル・バーグレイク・トレイルをたどった。名峰ロブソンの麓には、大爆流エンペラー・フォールがある。滝壷も見えず、あまりの迫力に気が変になりそうだ。
ロブソン氷河 アイスフォール帯
レスプレンデント峰へはロブソン氷河を詰める。ロッキーの懐へ抱かれてゆく緊張感が高まる。パートナーは米国人「リバー・ランナー」ジョン。アウトドア・ヒッピーのまま年を重ねたような、山と川のベテランだ。正面はロブソン峰。
氷河上部
アイスフォールの上は雪原になっていた。長い雪原歩きで氷河を遡って行くと、傾斜も増してくる。レスプレンデントの山腹から落ちてきた崩壊雪崩れのデブリ横を登る。時間ばかりが過ぎ頂上は一向に近付かない。
山頂へと続く斜面
あまりに白く無垢に見える雪原。その白さの裏にどんな罠が隠されているのか、そう思うと怖くて踏み込めなかった。この途中でジョンはクレヴァスに落ちかけていたのだ。カールの底に立ち止まり、山の魔の手に捕われぬよう抜け道を探る。右手の北面した雪壁へと矛先を変えた。
雪壁(ヘッドウォール)に取り付く
カールの北面を分断しているクレヴァスを乗り越え、ロブソンから続く雪壁を登る。感覚的には垂直に近いが、実際は55度ほどの傾斜だろう。雪がうまい具合に締まりアイゼンがよくきく。この時点で既に正午を過ぎているが、果たして山頂へ達するのか。
頂上へ
時間切れで登頂を諦め、退路を求めて稜線を頂上方向へ歩くと、なぜか「行けるんじゃないか」と感じた。登頂への新たな意志を持って頂上への斜面にかかる。しかし見えているピークは頂上ではなかった。誰もいない雪面に我々だけでトレースを空へと刻む。
レスプレンデント峰登頂
偽ピークに何度か騙されながらも、午後3時過ぎ、登頂を果たす。この山にはこれ以上高いところはない、それが頂上であった。未明にテントを出てから11時間半が経っていた。3000m級とはいえ侮り難い。
頂上雪庇とロッキーの山並み
頂上稜線は案外急である。下からずっと白い雪面に続いている一本の軌跡、それが「俺たちのトレース」である。それを見て、何ものにも変え難い充足感を得る。最高の気分だ。
Mt.テンプル登山
カナディアン・ロッキーを縦断するアイスフィールド・パークウェイをチャリで南下。欧州アルプス・アイガーをも連想させる山容の峰を指して「あの山に登るんだ」と言うと、「俺も登る」と言って加わったのは、世界周遊中のアドベンチャー・サイクリスト坂下氏であった。
広大な斜面を登る
街道から見ると裏側になる面には氷河もなく、登り易いルートがある。このノーマルルートからチャリダーの体力にまかせて一気に標高を上げ、点のような先行者を追い抜く。技術的困難の無い山だ。
山頂にて
でかい山は通例偽ピークに騙されるものだ。そう思って見えていたピークに立つと、その先にもう登りはなかった。あっけない登頂だった。それでも観光地から離れ、自らの足で獲得する自然の風景は素晴らしい。
クマ
アラスカからカナディアン・ロッキーにかけての野外では、野生のクマに脅かされた。テントでは安心して眠れない。キャンプではクマにやられない対策が必要である。数いる野生動物のうちでもその存在感は極めて大きい。
Mt.テンプル山頂からの景色
カナディアン・ロッキーの山並みの広がりは、ヒマラヤに匹敵するほど凄い。断層のある特徴的な峰々が続く。登ろうという目で見れば、数え切れないほど魅力的な山があり、登山のためだけに訪れるのも一興かと思う。

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