自転車の本
*☆はお勧め本
1 | 行かずに死ねるか! 世界9万5000km自転車ひとり旅 | 石田ゆうすけ 実業之日本社 |
最新の世界ツーリングもの。タイトルだけですでに彼の決意と旅の中身を言い表している。本の内容も走行ルートもチャリツーリングの王道を行っている。石田氏はチャリを旅の手段に選んだ旅人であり、片意地張って何かに挑むこともなく感性豊かに7年という時間を過ごしている姿は、とても爽やか。思考が変に内向せず、人や風景との触れ合いを通して旅を語り通しているところに、石田氏のスタンスが見えている。とても清い印象。 | ||
2 | ☆自転車五大陸走破 喜望峰への13万キロ | 井上洋平 中公新書 |
最も影響を受けたアウトドア関連本である。6年半かけ世界を走りまわり、総距離13万キロを越える旅を描いているが、あまりの長さに新書一冊にはとてもその内容を表現しきれない。それでも世界周遊を扱った自転車ものでは最高傑作である。北米での旅始め、南米での谷川氏との交流や高山病、アフリカ危険地帯突破など、それぞれのエピソードが真に迫り、素人であるがゆえ隔てるものなく直接訴えかける。そして感動がある。実はぼくはこれを読んで、チャリツーリングの世界に踏み入った。アウトドア界に身を染めるきっかけとなった本だ。 | ||
3 | やった。 4年3カ月も有給休暇をもらって世界一周 5万5000キロを自転車で走ってきちゃった男 |
坂本達 ミキハウス |
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そんな会社があったのか、そんな立場でチャリダ-をできる人がいたのか、と思った。写真がきれいで読みやすい。井上氏ほどのダークさがなく旅を楽しんでいる姿がうかがえる。チャリダーとして魅力的なルートを走っており、大陸を走りつぶすという旅はしていない。これもまた、たった一冊で世界一周を描くのは無理がある。 | ||
4 | 天国と地獄 地球8万キロ自転車の旅 | 森逸広 晩聲社 |
この自転車の旅が森氏にとって人生を決定付けるものであったことが知れる。世界を走り続ける中で、大事なことは何か、やるべきことは何かを考え、自転車以外の活動にも関わっていくようになる。旅をしてそれで終わりではない旅人の記録。自転車や装備の描写などから、こだわりの人であることが伝わってくる。 | ||
5 | 自転車野郎 駆け抜けた4万7千キロ | 宇都宮秀俊 海鳥社 |
かなりハードなサイクリングを展開している。中でも危険地帯パナマ地峡(コロンビア〜パナマ)を完全縦断した記録は傑出していて、ルート図を載せた解説は貴重な資料だ。だがなぜか宇都宮氏の存在感は地味。世界を周遊するサイクリストは声高に自慢しない傾向にあり、メディアで発表しない者も多いはずだ。でも、もっともっと表に出てもいいと思う。そうしてサイクリスト、アウトドアで活動する者たちの地位を上げていって欲しい。 | ||
6 | 〈通称〉16歳のオリザの冒険をしるす本 | 平田オリザ 晩聲社 |
ほんとうはやたら長いタイトルだが、それは書かない。というよりそんなタイトルをつけること自体気取っているようで、鼻につく。なんと高校を休学して世界自転車の旅に出た著者だが、彼はやはりチャリダーでも「冒険」向きの人でもないような気がする。ただ、あの時代に、この若さで飛び出したことは凄いと思う。自転車の旅にもルートにもこだわりはなく、むしろ考えて「文学」することにこだわりを見せている。う〜ん、でもちょっと、ね。 | ||
7 | ユーラシア大陸自転車横断記 | 戸谷亨一郎 鳥影社 |
彼も素人全快である。それどころか自転車も素人で、旅始めの頃は荷はズタ袋にガムテープ、ジーンズでペダルを漕いでいたというからおもしろい。それでもうねうねとヨーロッパからアジアへ入り、ユーラシア横断を成してしまう。なんとも言い難い味が出ている。物書きとして肩に力の入っていない、こういう本が読んでいておもしろいのだが、そんな「作家」はそうはいないだろう。その前に、売れないのだろうな・・・。 | ||
8 | オーストラリア銀輪走破行 | 石塚健 健友館 |
同じ素人の豪州行だが、こちらはやや力が入ってしまっている。「文学」しているというほどではないにせよ、もう少し素直に紀行を書いてくれればよかったのにと思う。 | ||
9 | ヒマラヤペダル越え | 深町達也 文藝春秋 |
中国チベット自治区が旅行者に開放されて間もない1986年夏、ラサからネパールのカトマンドゥへ走った学生の記録。走行距離は短いが、後年チベット・サイクリングの王道ルートになってゆく先駆けの旅。残念ながら現在は古い紀行になりつつあるが、描写が細かく、変わり行くチベットの当時の姿が分る。現在同じ場所を訪れ比べると、特に町は違いが大きいことだろう。 | ||
10 | ☆チベットの白き道 | 安東浩正 山と溪谷社 |
登山界と同じく、チャリの世界もバリエーションの時代に入っていく。ノーマルルートをベストシーズンにたどるのではなく、困難なルートを厳しい季節に行くのが、冒険的には高く評価される。安東氏は冬季に2年越しでチベット高原をチャリで完全横断した。その記録を見たとき「やられた」と思った。彼は登山もやるために、バリエーションの明確なスタンスを持ち合わせ、実践している。−30℃にもなる冬のチベットの旅は孤高で、ほとんど人目に触れることない景色は信じられないほど美しい。きれいなだけの写真をともなったチベット紀行本より、ずっと素晴らしい。 | ||
11 | チベット高原自転車ひとり旅 | 九里徳泰 山と溪谷社 |
アウトドア界で有名な九里氏の処女作。それぞれの旅にいちいちこだわりを見せるところは明快だ。ただすでにこの頃からやや気取ったところがあるのがなあ。 | ||
12 | 僕のマウンテンバイク旅行術 | 九里徳泰 山と溪谷社 |
相変わらず明確なスタンスを持って旅を実践している。指南書の体裁だが、その実、彼の旅の記録が多くを占めているような気もする。「どうだ凄いだろ」的な冒険小説にありがちな大袈裟な表現で、自分を高めようとしているところには反発したくなってしまう。それを書いている本人はそんなつもりはないんだろうけど。 | ||
13 | 人力地球縦断 北米編 人力地球縦断 中南米編 |
九里徳泰 山と溪谷社 |
九里氏を「冒険家」たらしめた8年越しの旅の記録。、自転車だけでなく、徒歩、カヌーも使ってアメリカ大陸を縦断しているが、プロフェッショナル関野氏のグレートジャーニーの影に隠れてしまった。何かアウトドア界の大物にでもなったような大仰な態度がやっぱりちょっとなあ。読み物としておもしろくはない。でも旅心を刺激する本で、メディアで発表できる力を持った人は貴重ではある。 | ||
14 | 自転車漂流講座 | のぐちやすお 山海堂 |
ありそうでない、サイクリストをめざす人向けの書。キャンプの仕方を解説したものは多いが、自転車旅の仕方を解説した本はなかなか見ない。著者自身がかなり濃く世界を走り回っており、むしろその逸話が楽しい。ここに河野兵市氏が少しだけ登場し、その豪人ぶりがおもしろい。 | ||
15 | 自転車地球放浪塾 | のぐちやすお 山海堂 |
海外ツーリングをめざすひと向けの書らしいが、その目的で買うより、読み物として手にする方が多いと思われる内容になっている。やっぱりのぐち氏の旅の経験がおもしろい。かなり大上段に構えているところがあるが、彼以上のチャリ旅を実践している者はほとんどいないのも事実だ。むしろ痛快である。旅立つ前の知識として詰めこむより、結局は旅をし、経験してゆくなかで、何事にも対処していけるようになることであると思うが。 | ||
16 | アジア自転車の旅 | 澁谷義人 連合出版 |
台湾を中心に走ったツーリング記だが、あまり興味のなかった地域だったせいか内容はあまり印象に残っていない。連合出版の書籍は装丁や文字がなんだか安っぽく、購入欲をそそられない。何かもっと強いテーマを持ったツーリングだと良かったのに。 |