紀行・冒険の本
*ジャンル分けは、明確な分類はできないので適当なものです。
*☆はお勧め本
冒険者としての植村直己
極地へ
人力の旅
冒険の記録
ノンフィクション
旅の記録
エッセイ
エッセイスト星野道夫
冒険者としての植村直己 | ||
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☆青春を山に賭けて | 植村直己 文春文庫 | 「青春を山に賭けて」は傑作だと思う。冒険を志す者なら誰もが羨むスタイルで旅を実行し、望みを我がものとして実現させてゆく姿は爽快この上ない。それでいて彼の心が丁寧に描かれていて、同じ感情を抱く若者であることが伝わり、親近感が湧いてしまう。北極の冒険を描いたものは、資金の面からもかけ離れた所業であるせいか、遠くへ行ってしまったように感じるが、彼のひととなりには相変わらず心打たれる。 |
極北に駆ける | 植村直己 文春文庫 | |
北極圏一万二千キロ | 植村直己 文春文庫 | |
エベレストを越えて | 植村直己 文春文庫 | |
植村直己の冒険学校 | 植村直己 文春文庫ビジュアル版 | |
植村直己の冒険 | 本田勝一、武田文男編 | 冒険評論になっている「植村直己の冒険」は、今も繰り返される冒険行為の危険を論じているが、「冒険」とは何が大事で、何が一般のひとたちに感動をもたらすのか、残念ながらそこを見ていないようだ。 |
植村直己 夢・冒険・ロマン | KAWADE夢ムック 文藝別冊 河出書房新社 |
彼の手記や対談、関係者による文章をまとめたムック。人間としての植村氏や妻の気持ちなど、冒険家ととりまきの感情が興味深い。遭難後20年経ち、彼の所業を振り返ると、まさに最後の本当の冒険家であったことが改めて知れる。 |
極地へ | ||
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極限に挑む男の遺書 北極海横断に生命を燃やして |
大場満郎 エモーチオ21 | いかにも冒険家のタイトルだが、読めば大場氏もまた悩めるひとりの人間である。何度も北極の徒歩横断に失敗し、満を持して4度目に挑むに当たって書かれたもの。それにしても彼の強さは尋常ではない。 |
(氷を歩いて2千キロ)北極の日本晴れ | 大場満郎 光文社 | 北極海横断を成した話だが、北極点到達を競わされる形となった河野氏とは旅の目的が違っていることはすぐに分かる。大場氏は当時NHKのテレビ番組に出演し、極地遠征にともなって資金集めに奔走する苦労を「実現のためには仕方がないんですよ」と言っていたのが印象的だ。夢を実現させようとする男のカッコ良さに感動した。 |
北極点はブルースカイ | 河野兵市 | 「北極点はブルースカイ」は「冒険家」河野兵市氏の唯一の著書だと思う。「焦げつく青春」をうたいチャリと徒歩と登山で世界を旅していたころの、彼の思いを知りたいと思う。それはぼくが理想と考える旅のスタイルを体現していたからだ。だが、この本は北極遠征のみの話で、支援してくれた人々への感謝のことばが並べられ、純粋なチャレンジャーとしての彼の心は覆い隠されてしまっている気がする。日本人初の北極点単独徒歩到達を成しながらも、リーチング・ホームという新たな旅を進めていた時に亡くなってしまった。それは衝撃だった。なぜなら、ぼくが理想と考えていた旅の行く末は「死」なのだろうかと思ったからだ。 |
南極大陸単独横断行 | 大場満郎 講談社 | |
氷原の彼方へ ドキュメント南極点探検隊 |
永田秀樹 東京新聞出版局 | 「氷原の彼方へ」は南極徒歩遠征を”手作り”で実現させた3人の男たちの記録だ。本来なら大西宏氏も参加する企画だった。だがNHKでも放映されたが、当時未踏の最高峰ナムチャバルワ遠征で遭難死してしまう。彼の想いも抱いて南極へ向かう仲間の友情がいい。しかし記録中心の本文はおもしろいとは言えない。 |
人力の旅 | ||
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みかん畑に帰りたかった | 埜口保男 小学館 | 第9回小学館ノンフィクション大賞の「みかん畑に帰りたかった」は上の河野兵市氏と著者の深い交流の話で、久々の爽快な冒険ものであり、河野兵市という人間を知ることのできる書にもなっている。自転車と徒歩と登山で世界を自由に駆け回っていた頃の河野氏のパワーは驚異的だ。彼がどういう旅をし、何を考えていたのか、この本のおかげで分かってきた。だがその旅を本人の言葉で語ることのできなくなってしまったのが残念でならない。埜口氏らが行ってきた旅の勢いがよく表れていておもしろい。 |
☆サハラてくてく記 リヤカーマン・アフリカ大陸横断11000キロ |
永瀬忠志 山と溪谷社 | リヤカーマンといえば永瀬氏だろう。彼以降の徒歩ダーでリヤカーを用いるようになった者は多いと思う。「サハラてくてく記」は彼独特の間の抜けた雰囲気が出て、非常に味があり、笑いが悲しく深い。文章がうまいわけではない。素人全快。なのに名作だ。後にザックを背負って歩き旅をした紀行が「アジアてくてく記」。サハラほどの熱さがないせいか、やや身軽な雰囲気になっているが、永瀬ワールドは発揮されている。2006年とうとう植村直己冒険賞受賞。 |
アジアてくてく記 足で旅した6200キロ |
永瀬忠志 山と溪谷社 | |
リヤカーマン 地球一周4万キロを歩いた男 |
永瀬忠志 毎日新聞社 | 氏の南米縦断の旅を中心に書き下ろされたもの。日記的で決してうまい文章ではないがその分親近感がわく。06年11月にTV東京で南米の一部の旅が放映され、古風なキャンプスタイルが知れておもしろかった。結婚後、感性が何だかまじめになってしまったようでちょっと残念。 |
ロバと歩いた 南米アンデス紀行 | 中山茂大 双葉社 | 普通の旅行者が旅の手段として徒歩を選んだといった感じの、気負いのなさがいい。それでいて旅程の長さは尋常ではない。中山氏の明るさか、旅はのほほんと楽しげだが、後日談のロバとの触れ合いは思わず感動的であった。実際南米のあの大地の雰囲気を知れば、歩きを通すことが生易しくないと分かる。 |
アラスカ垂直と水平の旅 冬季マッキンリー単独登頂と アラスカ1400キロ徒歩縦断の記録 |
栗秋正寿 山と溪谷社 | 植村直己氏以来、単独で冬季のマッキンリー登頂を成した栗秋氏は、更にリヤカーを引いてアラスカを旅をする。彼の考えや行動は冒険家のそれではない、旅人のスタンスで行っていることが知れる。大袈裟な表現もなく、凄いことをしているという構えもない、等身大の男の姿に力をもらう。 |
サハラ横断 砂の巡礼 | 前島幹雄 | 前島氏はラクダを連れ、なんとサハラ砂漠を西から東へ、そしてイスラムの聖地メッカまで徒歩横断をした。冒険記とは違う、旅の記録として、考え、経験したことを描いたのが「サハラ横断 砂の巡礼」。やや難解な言い回しが気にはなるが、そのこだわりようとイスラム世界での旅の質の高さは驚きだった。 |
シルクロード9400km走り旅 ランニングシューズをはいた孫悟空 |
中山嘉太郎 山と溪谷社 | 植村直己冒険賞を受賞した旅の記録「シルクロード9400km走り旅」。ちょっととてつもないことをした響きがあるが、実際の中山氏は超人でもない普通の人の雰囲気が出ている。この他にも南米も走っていて、そちらの記録も興味深い。 |
ウーマンアローン | 廣川まさき 集英社 | 第二回開高健ノンフィクション賞受賞「ウーマンアローン」は、女性がひとりで北米ユーコン川1500kmをカヌーで旅した紀行。平易な文体で清い紀行になっているが、盛り上がりに欠ける。ネイティブとの交流、フランク安田への思いをもっと読めたらよかった。 |
冒険の記録 | ||
アマゾン漂流日記 | 坪井伸吾 窓社 | いかだでアマゾン川を旅することは植村直己氏以来日本人にはひとつのスタイルとなっているようだが、そのうちの3人の仲間の記録が「アマゾン漂流日記」。冒険という気負いもなく、軽妙な文が旅の雰囲気をよく表しているようだ。 |
52歳、駆け抜けたアフリカ | 戸井十月 新潮社 | プロ作家のバイク記「52歳、駆け抜けたアフリカ」はダンディーな紀行で、戸井氏が直面したアフリカの現実も描かれ、旅人としての余裕も感じられる。 |
遥かなるゲバラの大地 | 戸井十月 新潮社 | 五大陸走破行南米編。氏が敬愛するチェ・ゲバラの最後を訪ねることをひとつの目的に、南米を一周。彼の地の自然と人の現実と、自分を見つめる旅のスタイルはクラシカルでありながら、氏ならではの視点とクールな文体がさらっとして新鮮。 |
この地球を受け継ぐ者へ 地球縦断プロジェクトP2P全記録 |
石川直樹 講談社+α文庫 | 人力にこだわった旅の報告を二つ。「この地球を受け継ぐ者へ」はP2Pの日記。そのぶん内容にまとまりがなく、日記形式ではなく別に編みなおして欲しかった。メッセージはあるのだから。 |
グレートジャーニー@ | 関野吉晴 ちくま新書 | 新書のこれは写真報告といった感じになっている。プロフェッショナルとも言える関野氏の南北アメリカ大陸までのエッセイ。その先も刊行されたが、そちらは未読。 |
グレートジャーニー全記録T移動編 我々は何処から来たのか |
関野吉晴 毎日新聞社 | ようやくグレートジャーニーがまともにまとめられた。二冊組で移動編、寄り道編に分けられている。関野氏の旅は一級の価値を伴った冒険行為だった。ただ、本書は緞帳な文章で偉大なる旅のなんたるかが表現しきれていない。まじめさの表れた本。もっと攻撃的な刺激が欲しい。グレートジャーニーから受け取りたいメッセージはこんなことばかりじゃない。 |
☆地平線の旅人たち | 地平線会議編 窓社 | 毎月行われている地平線会議での’80年代から’96年の報告をまとめたものだが、日本の冒険の前線を行く者たちが多数登場しており、実に刺激的。近年版もまとめて欲しい。 |
サハラに賭けた青春 上温湯隆の手記 |
上温湯隆 時事通信社 | 「サハラに賭けた青春」は20代前半でサハラで渇死し伝説ともなりつつある上温湯氏の唯一の著書で、サハラへの入れ込みようが実に強い。生きていたらその後の彼はなにをしていただろうか。 |
オートバイ世界一周四万六千キロ | 奥平正和 静岡新聞社 | オートバイで世界を旅した者も紀行を出版している。奥平氏がオーソドックスなスタイルとルートで世界一周した紀行は、内容もオーソドックス。 |
マゼラン海峡ヤッホー | はんがい哲郎 新風舎 | ごきげんな南米ツーリングを展開している「マゼラン海峡ヤッホー」は旅の楽しさが本にも表れているが、冒険的要素はそれほどない。 |
世界を駆けるゾ! 20代編、30代編、40代編(上、下) |
賀曽利隆 フィールド出版 | そして大明神賀曽利氏の「世界を駆けるゾ!」。ライダーの第一人者。どれだけ世界を走りまわるのか、そのパワフルさに世界は小さく感じられる。走り過ぎ。 |
ノンフィクション | ||
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サハラに死す 上温湯隆の一生 | 長尾三郎 講談社文庫 | 若年でサハラに潰えた上温湯氏の伝記「サハラに死す」は、何かもの足りなさを感じる。彼のサハラへの思いをもっと掘り下げて欲しい。 |
コリアン世界の旅 | 野村進 講談社+α文庫 | 「コリアン世界の旅」を読むと、コリアが考えている以上に日本と深い関わりを持っていることが分かる。それを気付かせてくれる野村氏の作品が二つのノンフィクション賞を受賞したのも納得。 |
たった一人の生還 『たか号』漂流二十七日間の闘い |
佐野三治 新潮文庫 | 「たった一人の生還」はグアムまでのヨットレース中に遭難し、全ての仲間を失いながらひとり生還した本人の手記。生還ものとして山岳の「ミニヤコンカ奇跡の生還」(松田宏也著)と並んで名作だと思う。文は簡単に描かれているが、その現実が非常に重く感じられ、これこそフィクションには決して成し得ない迫力を出している。 |
西南シルクロードは密林に消える | 高野秀行 講談社 | 中国〜ビルマ〜インドに通じていたと言われる、もうひとつのシルクロードをたどろうとした記録だが、幾重にも積み重なる偶然でインドへ導かれていくさまが面白い。複雑な現地事情は著者自身も把握し切れないようで、流されるように進んでゆくなかで、それは徐々に知れてくる。 |
☆深夜特急 | 沢木耕太郎 新潮文庫 | アジア横断記の名著。ノンフィクションでありながら、まるで小説のような旅行記。多くの作家が旅行記を書いているが、おもしろさという点で、沢木氏を凌ぐものには出会ったことがない。というか、そんなに読んでないけど。これを読んでしまうと、他の旅行記を読む気が起きなくなる、というのか・・・。 |
一号線を北上せよ ヴェトナム街道編 | 沢木耕太郎 講談社文庫 | ヴェトナムをバスで北上する旅ものノンフィクションだが、そこで出会う場面の描写が細かく、一人旅をする誰もが持つであろう感情を沢木氏も感じていることがわかり、共感できる。旅への姿勢は「深夜特急」の頃と同じだが、年齢的なものか、経済的に余裕が出ている。 |
冒険者 忘れえぬ一言 | 黒田麻由子 NHK生活人新書 | 近年冒険を行っている者のインタビューを中心に、著者が心に残ったらしい言葉をピックアップしているが、その言葉の重みは感じられない。しかし登場する人物が注目で、興味をそそられた。戸高雅史、ジャーニーランの中山嘉太郎、田中幹也、北極犬橇の山崎哲秀、徒歩旅行の小宮雄一郎など。欧州アルプスで墜死したアルパインクライマー鈴木謙造などは書かれている内容もおもしろい。 |
☆脱出記 シベリアからインドまで歩いた男たち |
スラヴォミール・ラウイッツ 海津正彦訳 ソニーマガジンズ |
第二次大戦前、シベリアに抑留されたポーランド人が収容所を脱出してインドまで歩いた記録。訳書ながら秀逸の読み応え。なにもかもがドラマチックなエピソードの上、ラストは決して安易なハッピーエンドではない。体験者にしか語り得ない病院での行動のシーンに感涙。雪男の目撃談は今も唯一のしっかりした証言になっている。 |
旅の記録 | ||
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熱風大陸 ダーウィンの海をめざして | 椎名誠 講談社文庫 | 椎名氏の3作は、おなじみの独特のおかしさを醸し出し、旅はハードでも気軽に読める。男の憧れる冒険心を抱き続け、それを一部でも実現していく氏が羨ましい。 |
あやしい探検隊アフリカ乱入 | 椎名誠 角川文庫 | |
砂の海 楼蘭・タクラマカン砂漠探検記 | 椎名誠 新潮文庫 | |
ユーラシア彷徨 敦煌・チベット・タクラマカン | 前島幹雄 彩流社 | 前島幹雄氏は思索する旅人。ユーラシアの長期の旅でシーツにくるまり野宿をし、世界を考える紀行。でもその思索はやや難解。 |
風の足跡 | 謝孝浩 福音館日曜日文庫 | 辺境、山、チベットを旅の舞台に選んだ謝氏に興味を抱いたが、きれいな文体のなかに、なにかもっと心を描いて欲しい気がする。 |
スピティの谷へ | 謝孝浩 新潮社 | |
わが聖地放浪 カイラスに死なず | 色川大吉 小学館 | なんだかちっともおもしろくない。タイトル倒れ? |
☆A LINE 地平線の旅人 | 江本嘉伸、遠藤正雄、 戸高雅史 求龍堂 |
写真家遠藤氏、登山家戸高氏の章が大変刺激的。紛争地などの写真を撮る遠藤氏の文にはダークな世界が展開され、打つものがある。多くの登山家とは一風変わった視点を持つ戸高氏の考え方は、とても好きだ。著書はほとんど無いのが残念で、もっと本を書いて欲しいと思う。自分の活動に求めるのは登頂の名誉ではない。ひとりいて自らを見つめるその姿勢が深い。彼のような視点を持って旅ができればいい。 |
エッセイ | ||
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エベレストを滑った男―冒険に生きる | 三浦雄一郎 筑摩書房 | 最近エヴェレスト親子同時登頂を果たした三浦雄一郎氏は、冒険スキーヤーという過去がある。冒険の世界に入ってゆくまでの半生を綴ったのが「エベレストを滑った男」だが、冒険記ではなく教育的メッセージのような内容になっているのは残念。 |
チベットはお好き? | 後藤ふたば 山と溪谷社 | 後藤氏の2作はエッセイ風で気軽だが、チベットの旅自体は当時にしては濃い内容をともなっている。女性でありながら、旅は浮いた感じがない。 |
もうひとつのチベット行 | 後藤ふたば 山と溪谷社 | |
純情漂流 | 夢枕獏 集英社文庫 | チベットの紀行であるが、プロ作家の書いたものでさすがにうまい。ヒマラヤも得意分野として手がける夢枕氏が、実際現地で呼吸することで喚起されるイメージが溢れ、ヒマラヤ好きにはこたえられない。 |
アジアの友人 | 下川裕治 講談社文庫 | 旅行作家下川氏の本は、旅行記の王道といった感じがあるが、アウトドア派にとっては内容がもの足りない。 |
インドの樹、ベンガルの大地 | 西岡直樹 講談社文庫 | 旅人とは違う視点でベンガルを描く西岡氏の「インドの樹、ベンガルの大地」は、現地民との交流がおだやかで温かく、インド人のあまり触れられない一面を教えてくれる。彼の専門である植物の記述では、民の生活との関わりを含めた逸話が興味深い。 |
アジアの真心 | 游人舎編 小学館文庫 | 旅行記オムニバス「アジアの真心」は案外おもしろいエッセイが並び、それぞれアジア旅の楽しさ悲しさが魅力的。同シリーズの「アジアの地獄」は旅行体験記の王道的内容で気軽におもしろい。 |
アジアの地獄 | 游人舎編 小学館文庫 | |
シェルパ斉藤の 行きあたりばっ旅5 | 斉藤政喜 小学館文庫 | シェルパ斉藤氏は、一方でアウトドア記の王道。ここで描かれる旅の内容は一般的だが、文が平易でキャラクターに親近感を抱かせる。ただ、発想という点でもっと彼らしい色を出して欲しい。アウトドア派にはやっぱりややもの足りない。 |
シェルパ斉藤の 犬と旅に出よう | 斉藤政喜 新潮文庫 | 「犬と旅に出よう」は子犬が家にやって来て、また生まれたりして、シェルパ斉藤氏がバックパッカー犬として旅を共にして成長してゆくエッセイ。主人と犬の関係がほほ笑ましく、また、旅先で道連れとなる犬のエピソードもいい。最後は思わず泣かせる。あたたかいお話。 |
旅へ 新・放浪記1 | 野田知佑 文春文庫 | カヌーイスト野田氏の青春記。この頃から自由の風に吹かれて旅をしている姿が早くも彼らしい。川旅を描いた諸作品より引きこまれる魅力がある。 |
北極海へ | 野田知佑 文春文庫 | 「北極海へ」はカナダ極北の大河マッケンジーを3ヶ月旅した紀行。野田氏独特の感覚がいい味で、ネイティブや旅仲間との関わり方はなかなかニクい。 |
旅の理不尽 | 宮田珠己 小学館文庫 | くだらなさは傑出している。これでもし旅がもっとハードだったら、そのギャップでよりおかし味を増すかもしれない。そこがちょっと惜しい。 |
アジア辺境紀行 | 下川裕治・編 徳間文庫 | アジアを中心に旅するライターの文庫書き下ろしエッセイ集「アジア辺境紀行」は、8人の若手ライターがそれぞれの本当に描きたい旅を書いている。しかし西牟田氏の「アフガニスタンに消えた日本人」以外は、とりわけ印象に残るおもしろさはなかった。なかには「です」「ます」調のエッセイまであり、意図が全く不明。羨むほどの旅を魅力的に描いている紀行がなく、アジアの片隅で「そんなことしてる日本人もいるのか・・・」と思った程度。 |
風の道 雲の旅 | 椎名誠 集英社文庫 | 氏が方々を旅して撮った写真をもとにしたエッセイで、静かでしかし作家椎名の気持ちが現れていて味わい深い。 |
永遠の未踏峰 人はなぜ山に登るのか | 渡部由輝 山と溪谷社 | サブタイトルの「人はなぜ山に登るのか」を氏なりの視点で科学的に考察した書。「永遠のテーマ」を真っ向勝負で挑んだ冒険的内容で、エッセイという枠ではないだろう。納得させられる結論を導き出してはいるものの、「〜ではないのか。」というフレーズがやたら目に付き、難解な言葉を用いながらも言い回しが追いついていない。残念。 |
エッセイスト星野道夫 | ||
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「イニュニック〔生命〕」 | 星野道夫 新潮文庫 | 星野道夫氏の自然と人間への美しすぎるまなざしが、あの美しいことばをつむぎ出すのだろう。彼の書く文章どれもが、そうした透明感に溢れている。これらの本を手にすると、その本をも大切にしたくなってしまう不思議な力がある。アラスカを中心にエッセイスト&フォトグラファーとして活動してきたが、極北の主クマにも畏れと温かさを持って接してきながら、クマに襲われて世を去ってしまったのはなんとも皮肉だ。彼も野生となったのか。 |
「ノーザンライツ」 | 星野道夫 新潮文庫 | |
☆「旅をする木」 | 星野道夫 文春文庫 | |
「長い旅の途上」 | 星野道夫 文春文庫 |