碁会所編・1
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電気屋さんへGO
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結婚して引っ越してきた時は、電気屋だった。 確かに、まぎれも無く、確実に電気屋だった。 結婚しても私達夫婦は、お互いの荷物を持って来たので家電はさすがに買わなかったが、電球くらいは買ったはずである。なにしろ玄関の電球は2つとも、替えても替えてもすぐ切れてしまっていたのだから。 確かに電気屋だった店が、 いつのまに どうして 碁会所になっているのだろう。 発見したのは、夫と2人で散歩をしていた途中だった。意外な展開に、通り過ぎてから立ち止まった。 「碁会所・・・?」 「電気屋だったよねえ。」 「たしかにちょっと前までは。」 「看板も電気屋だよねえ。」 私達はなにごともなかったようにその場を立ち去った。 それから1年とちょっと。 自分が囲碁を始めようとするなんて、その頃は思わなかったなあ。 霧のように、雨が降っていた。傘をさすほどではなかったので、午後になってテクテクと散歩にでかけた。今日こそは、あの店に行ってみようと思いつつ。 でもねえ、店の前に行くと、通り過ぎちゃうのですよ。 他に碁会所なるところに行ったことはないので、比較はしにくいのだけれど、雑居ビルの3階とかいうのよりは、断然入りやすいと思うのです。 でもでも、今日はあんまり人がいないでいて欲しい。人がたくさんいると、ビビるし。 本屋をのぞき、よく行くコーヒー屋さんで豆を買って、遠回りをしながら碁会所へ。 ラッキー!今日は人が少ない。中に入るのなら今日しかない!戸をあけ・・・うっ? 重い・・・。あ、力の加減を間違えた。軽く手をかけただけでした。 (おそるおそる) 「あのー、すみません」 (こ、声が小さすぎた!どうしよう、もう一度声をかけなきゃ。)「あ・・・」 「あ、いらっしゃい。」(よ、よかった〜) 「あの、ごっ、ごっ、ごをやってみたいんですけど。」 「初心者ですか?」(バレてる〜) 「はい、え・・・と、ゲーム機でちょこっとやったことがあるだけなんですけど。」 「じゃあ、まったく初めてってわけでもないんだ。ルールはわかる?」 「えーと、基本のとこだけなら。」 初心者教室は木曜日の夜と、日曜日の夕方だそうで、なんか、中途半端なときに来ちゃったかなあ? 「日曜日なら、同じ位の人もくるし。じゃあ今日は奥さんに教えてもらうといいよ。」 入り口で応対してくれた人は、そのまま退場。 あらら。この人がここの人じゃないのね。・・・じゃなくて、先生らしい。日曜日に教えにきてくれるひとらしい。お店の中には、席亭さん御夫婦とネコちゃんと私のみ。 奥さんに9路盤で4子置いて教えてもらうことになりました。 白に対していきなり内側から付けて石を置く私。 「いきなり攻めるよりも、自分の地を固めながらうつのがいいのよ。」 1手ずつ、説明してもらいながら打ちました。 相手が打った石に対して、そのまま反応してしまう。あ、そういえばGBAでもそうだなあ。説明してもらいながらだと、分かりやすくて、自分がいかに分かって無いかがよく分かる。 「ここかなあ?」とか言いながら、教えてもらいつつ1局終わりました。 「『ヒカルの碁』っていうマンガが面白くていいらしいわね。」 (奥さん、いきなり?ドキドキ) 「あーー、たまーに見ます。」 (ホームページまで作りはじめちゃったとはとても言えない・・・) 「本を見て勉強したりした?」 「なんか、子供用のとかで。」(あとGBAも、ですけど) 「それでいいのよ。分かりやすいところから始めるのが。」 ぽつぽつお話して、お茶をいただいて帰ってきました。 さあ、次は日曜日だ。もう1歩を踏み出したことだし、あとは進むのみ! 最後に奥さんの 「急に強くなろうと思わなくてもいいのよ。うちは家族みたいな雰囲気で来てもらえるようにと思っているから。今からプロになろうと思っているわけじゃないんでしょ?」 との言葉で暖かい気分になりました。 はい、思ってません。というか無理です。 |